ワークショップは3つの種類に分類できる
ワークショップという言葉は、企業研修・地域コミュニティ・教育現場と広く使われており、同じ呼び方をしていても中身のデザインは大きく異なります。そのため「研修でワークショップを取り入れたいが、何から設計すればよいかわからない」という相談を人事ご担当者からよくいただきます。
本記事では、ワークショップを省察型・高次学習型・創発型の3つに分類する枠組みを整理し、それぞれの目的・代表的な手法・企業研修での使いどころを比較できる形でまとめます。
ワークショップは3つの種類に分類できる
ワークショップは、目指す学びの性質に応じて大きく次の3つに分類できます。
2. 高次学習型:知識を「活用」するなかで、知恵に昇華させる
3. 創発型:新しい「アイデア」を生み出す
それぞれの特徴を比較表で整理したうえで、各分類を詳しく見ていきます。
| 分類 | 目的 | 代表的な手法 |
|---|---|---|
| 1. 省察型 | 暗黙の前提の可視化と価値観の見直し | アプリシエイティブ・インクワイアリー、フューチャーサーチ、ストーリーテリング |
| 2. 高次学習型 | 既存知識の活用と行動変容 | ビジネスゲーム、シミュレーション、レゴシリアスプレイ、演劇ワーク |
| 3. 創発型 | 新しいアイデア・選択肢の創造 | ワールド・カフェ、ブレインライティング、オープンスペーステクノロジー |
1. 省察型ワークショップ
省察(せいさつ)の「省」は「かえりみる」という意味で、コトバンクでは「自分自身をかえりみて、そのよしあしを考えること」と解説されています。
省察型ワークショップは、過去の経験や自分・組織の価値観を省みて、そこにある「暗黙の前提」をあぶり出すタイプのワークショップです。ビジョン策定や組織開発、理念浸透、世代間ギャップ解消などで活用されます。
代表的な手法として、アプリシエイティブ・インクワイアリー(AI)を使ったワークショップが挙げられます。
はじめてのアプリシエイティブ・インクワイアリー
たとえば「あなたが最も成果を出したと思う仕事は?」というテーマでペアワークのインタビューを受けながらストーリーテリングしてもらうと、過去の経験と「その人にとっての成果という価値観」の両方を聞き出すことができます。複数人で行うことで、それぞれの「暗黙の前提」にズレがあることが明らかになり、自分の前提を見直し、新しい価値観を取り入れるきっかけが生まれます。
2. 高次学習型ワークショップ
2番目は高次学習型です。ここでは、知識提供型の「座学」ではなく「知識の利用・活用」を高次学習と呼びます。
組織学習の分野では、Fiol & Lyles(1985)が「低次学習」と「高次学習」という概念を提示しています。
(Off-JTと有機的に連環させたOJT学習モデルの提案 ―学習理論に基づいたOJT学習モデルの3類型― より)
もう少し平易に言うと、行動とその結果を通して自分の価値観が変わっていく学習です。アージリスのダブルループ学習と近い考え方で、新入社員研修・管理職研修で体験学習を取り入れる際の理論的背景として使えます。
ダブルループ学習を組織で活用する3つの方法
具体的な手法としては、ビジネスゲーム・シミュレーション・レゴシリアスプレイ・演劇ワークなど、既存の知識を「活用」して制作やプレイを行うワークショップが該当します。
3. 創発型ワークショップ
最後は創発型です。一言で言えば、参加者同士の対話を通じて「新しいアイデア・選択肢」を生み出すタイプのワークショップで、いわゆるブレストの延長線上にあります。
創発の定義は次の通りです。
現代の企業研修の文脈では、多様な人が集まり、話し合うことで、1人では思いつかなかったアイデアが生まれることと捉えるのが実用的です。
代表的な手法として、ワールド・カフェやブレインライティングなどがあります。
社内でのワールドカフェのやり方(実施編その1)
企業研修での使い分けガイド
3分類は互いに排他的ではなく、1つの研修の中で組み合わせて使うこともできます。目的別に推奨タイプをまとめます。
・新入社員研修:高次学習型を中心に設計。ビジネスゲームで知識を実際に使う体験を積む
・管理職研修・リーダー研修:高次学習型+省察型。ゲームでリーダー行動を体験→振り返りで自分のマネジメントスタイルを省察
・経営層のビジョン策定:省察型+創発型。アプリシエイティブ・インクワイアリーで組織の強みを可視化し、フューチャーサーチで未来を共創
・新規事業ワークショップ:創発型を中心に、ブレインライティングやワールド・カフェで多様なアイデアを出す
・組織開発・理念浸透:省察型+創発型。既存価値観の見直しと、新しい行動指針の共創を両輪で進める
ワークショップデザインを学ぶ書籍
ワークショップ設計の基礎を体系的に学ぶには、以下の書籍が参考になります。
まとめ
ワークショップは省察型・高次学習型・創発型の3つに大別され、目的に応じて手法を使い分けることで学習効果が大きく変わります。研修を設計する際は「このワークショップでは何を参加者に起こしたいか」を明確にし、目的に合う分類を軸に手法を選ぶとよいでしょう。
