OJTトレーナーや1on1実施者に必須のコーチングスキルとして、GROWモデルというフレームワークをご紹介します。GROW(Goal-Reality-Options-Will)の4ステップの問いかけで、相手に考えさせながら自発的な行動を促すコーチング技法です。

本記事では、GROWモデルの各ステップ、新入社員のテレアポ相談という具体例、GROW以外のコーチングモデル、コーチングとティーチングの使い分けまでを解説します。

コーチングとは

コーチングは以下のように定義されます。

対話によって相手の自己実現や目標達成を図る技術。相手の話をよく聴き(傾聴)、感じたことを伝えて承認し、質問することで、自発的な行動を促すコミュニケーション技法。

OJTの文脈では「新入社員のサポートをすること」と整理できます。ティーチング(教える)とは異なり、コーチングは答えを与えず、相手から引き出す関わり方が特徴です。

2020年代では、リモートワーク下での1on1ミーティング・若手のキャリア自律支援・マネジャー層のリスキリング支援など、コーチングスキルの適用領域は拡大しています。

GROWモデルとは:4ステップの対話フレームワーク

コーチング理論の代表的なフレームワークがGROWモデルです。以下4つの頭文字を取っています。

Goal → 目標の明確化
Reality → 現状の把握
Options → 選択肢の創造
Will → 目標達成の意思

※RにはResource(資源の発見)が追加されることもあります。また、GROWの前にT(Topic: テーマ設定)を置いたT-GROWモデルも広く使われています。

GROWモデルの具体例:新入社員のテレアポ相談

新入社員Aさんが「テレアポが取れない」と悩み、OJTトレーナーのあなたに相談に来たケースを例にとります。

Aさん: 「先輩、テレアポが全く取れずに悩んでます。相談に乗ってくれませんか。」
あなた: 「もちろん、ちょっと話そうか。」

G: Goal → 目標の明確化

あなた: 「今の目標ってなんだっけ?」
Aさん: 「今週中にテレアポを5件取ることです。」
あなた: 「そうだよね、今週中だから残り2日で5件ってことだよね。」
Aさん: 「そうです。」

ポイント: 相手に自分の口から目標を語らせる。期限や数値を具体化することで、後のステップで比較の基準になります。

R: Reality → 現状の把握

あなた: 「今は何件取れてるんだっけ?
Aさん: 「今は1件だけです。」
あなた: 「お、1件は取れてるだね。いいじゃん。」
Aさん: 「はい、ただ5件には遠くて。それで悩んでます。」
あなた: 「なるほど、つまり、あと2日で4件のアポを取る必要があるんだね。」
Aさん: 「そうです。」

ポイント: 事実を淡々と把握し、できていることも認める。目標と現状のギャップが可視化されると、次の選択肢探しが具体化しやすくなります。

O: Options → 選択肢の創造

あなた: 「1件取れた時はどういう感じだったの?」
Aさん: 「いつも通りの話をしたところ、お客さんに他の会社で例えばどこが使ってるのか聞かれて、○×さんが使ってますと答えたらアポが取れました。」
あなた: 「なるほどね、大手企業への導入実績を聞いて安心したのかもね。」
Aさん: 「そうかもしれないですね、そういうのって伝えても大丈夫なんですか?」
あなた: 「会社として公表しているものに関しては大丈夫だよ。」
Aさん: 「そうなんですね、よくわかっていなくて。」
あなた: 「そうだよね、例えば、○×社で導入しているというのを先に伝えてみるのはどうかな?うまく行ったやり方を試してみるってのは。」
Aさん: 「そうですね、いいかもしれません。」

ポイント: 相手の成功体験から仮説を引き出す。トレーナーが一方的にアドバイスするのではなく、「うまくいったパターン」を言語化させ、応用を促します。

W: Will → 目標達成の意思

あなた: 「OK、一回これでやってみよう。」
Aさん: 「はい」
あなた: 「途中で進捗を確認するなら、いつがいいかな?
Aさん: 「トークスクリプトを直してみて実施するので1時間半後でいいでしょうか。」
あなた: 「OK、じゃあ1時間半後に進捗確認しよう」
Aさん: 「はい、ありがとうございました。」

ポイント: 次のアクションと確認タイミングをAさん自身に決めさせる。これによって当事者意識が高まり、目標達成の意思が固まります。

GROW以外のコーチングモデル

GROWモデル以外にも、現場で使われているコーチングフレームワークがいくつかあります。

①T-GROWモデル
GROWの前にT(Topic: テーマ設定)を追加。最初に「今日は何について話す?」と問いかけ、相談のスコープを定めてから始める。

②CROSSモデル
C(Clarify: 明確化)・R(Recognize: 認識)・O(Options)・S(Strategy: 戦略)・S(Support: 支援)の5ステップ。GROWより支援面に重きを置いたモデル。

③GRIT モデル
Goal-Reality-Insight-Tactics の4ステップ。GROWにInsight(洞察)を明示的に入れたモデルで、自己理解の深掘りを重視。

④AWAREモデル
A(Aim)-W(Where-now)-A(Alternatives)-R(Route)-E(Execute)。GROWの拡張版で、特に具体的な実行計画を重視。

コーチングが効かないケース:ティーチングとの使い分け

コーチングは強力ですが、すべての場面で最適とは限りません。以下のような場合はティーチング(教える)を優先すべきです。

①業務に関する基礎知識がそもそもない場合
答えが本人の中にない状態で問いかけても、的外れな仮説しか出てきません。基礎知識の習得段階ではティーチングを優先。

②緊急度が高く時間がない場合
クレーム対応中・サーバーダウン対応中など、時間的制約が強い場面ではコーチングより直接的な指示が適切。

③安全性・コンプライアンスに関わる領域
判断ミスが大きな被害を生む領域では、明確なルール・マニュアルの提示が先。

④本人が「明確な答え」を求めている場合
明らかに知識不足を自覚し、答えを教えてほしがっている相手に対しては、コーチングは回り道にしかなりません。本人の状態を見極める力が重要です。

一般的な指針として、「できる→教える」「分からない→教える」「できているが伸ばしたい→問う」「迷っている→問う」という使い分けが実務的です。

1on1でGROWモデルを活用する

GROWモデルは、週次・隔週の1on1ミーティングでも有効に活用できます。

①キャリア対話セッション
G: キャリアゴール / R: 現在のスキルと経験 / O: 新しいプロジェクト・研修・社外活動の選択肢 / W: 次に取り組むこと

②業務課題解決セッション
G: 今週の目標 / R: 現状と課題 / O: 打ち手の選択肢 / W: 次の一歩

③業績評価面談
G: 達成すべき目標 / R: 現時点の達成状況 / O: 残期間での打ち手 / W: 次の行動

1on1については1on1は意味ない?効果的な頻度や内容・工夫についてもあわせてご覧ください。

傾聴スキルを体験で磨く研修:傾聴チャレンジ

GROWモデルを実践するうえで、ゴール設定・選択肢探索のいずれのステップでも共通して必要になるのが相手の話を正確に受け止める傾聴スキルです。弊社ではコーチング・1on1実施者向けに、傾聴を体験で学ぶ研修ゲーム「傾聴チャレンジ」を提供しています。

傾聴チャレンジ

傾聴チャレンジは、聞き手の質問と受け止め方によって、相手から引き出せる情報量が変わることを体感するゲーム型研修。GROWモデルのQuestion設計力の下地づくりとして有効です。

詳細は傾聴チャレンジ紹介記事もご覧ください。

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その他、実施時期や受講人数など(300文字以内)


GROWモデルに関するよくある質問

Q. GROWモデルは新人相手にしか使えませんか?
A. いいえ、中堅社員やマネジャーとの1on1、キャリア面談、部下のプロジェクト相談など、目標と現状のギャップを埋めたい場面ではどこでも使えます。

Q. 時間はどれくらい必要ですか?
A. 慣れれば15〜20分で一通り回せます。深い内省が必要なテーマでは30分〜1時間確保するとより効果的。

Q. コーチングを学ぶのにおすすめの書籍は?
A. 『新コーチングが人を活かす』(鈴木義幸)が古典的名著。加えて『現場でよくある1on1の質問に答えます』など実践書を併読すると理解が深まります。

まとめ

GROWモデル(Goal-Reality-Options-Will)は、OJTトレーナー・1on1実施者・マネジャーに必須のコーチングフレームワークです。相手に考えさせながらサポートする対話を構造化することで、自発的な行動を引き出せます。

ティーチングとの使い分け・1on1での活用・他モデルとの比較など、コーチング全体の中での位置づけを理解したうえで活用してください。

関連テーマとして1on1は意味ない?効果的な頻度や内容・工夫についてOJTトレーナーになったら知っておきたい教え方の理論(ADDIEモデル)もあわせてご覧ください。


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