ホールシステムアプローチとは|全員で対話する4つの手法(ワールドカフェ・AI・OST・フューチャーサーチ)

「ホールシステムアプローチ」という言葉を耳にする機会が増えました。ワールドカフェやアプリシエイティブ・インクワイアリー(AI)、オープンスペーステクノロジー(OST)など、対話型のワークショップ手法の総称として使われる概念です。本記事では、ホールシステムアプローチの全体像と代表的な手法、そして企業の研修や組織開発で注目される理由を整理します。

【結論】ホールシステムアプローチとは、利害関係者を一堂に集めて大規模な対話を通じて課題解決や合意形成をはかる手法の総称です。ワールドカフェやAI、OSTなど複数の具体的手法を上位概念としてまとめたもので、多様で複雑な現代社会の問題解決に欠かせないアプローチとされています。

目次

1. ホールシステムアプローチとは何か
2. 代表的なホールシステムアプローチの手法
3. なぜホールシステムアプローチが注目されるのか
4. 企業研修・組織開発に取り入れる際のポイント
5. まとめ

ホールシステムアプローチとは何か

ホールシステムアプローチは、ワールドカフェのような具体的な対話手法そのものではなく、それらを総称した上位概念です。

香取一昭氏・大川恒氏の著書『ホールシステム・アプローチ』(日経BPM)では、次のように説明されています。

ホールシステム・アプローチは、利害関係者全員(ホールシステム)が一堂に会して話し合うことを通じて、相互理解を深め、共通の目的や課題を明らかにし、解決策を生み出す、組織変革のためのワークショップの総称である。

つまり、これまでのように一部の代表者やリーダーだけで決める方法ではなく、多様な立場の人を巻き込んで対話することで、より納得感のある合意形成や行動変容を生み出すのがホールシステムアプローチの核心です。

代表的なホールシステムアプローチの手法

ホールシステムアプローチには複数の具体的な手法があります。代表的なものを4つ紹介します。

ワールドカフェ

カフェのようなリラックスした雰囲気で、4〜5人の小グループでテーマについて対話し、メンバーを入れ替えながら議論を発展させていく手法です。アネット・ブラウン氏とデイビッド・アイザックス氏が1995年に開発しました。

社内で実施する具体的な手順は、社内ワールドカフェのやり方|告知・準備物・会場設営【準備編・完全ガイド】でステップごとに解説しています。

アプリシエイティブ・インクワイアリー(AI)

組織の強みや成功体験を肯定的に問いかけながら、未来のありたい姿を描き出していく対話手法です。「課題解決型」ではなく「価値発見型」のアプローチで、組織のポジティブな力を引き出します。

詳細ははじめてのアプリシエイティブ・インクワイアリーで解説しています。

オープンスペーステクノロジー(OST)

参加者自身がテーマを提案し、興味のあるテーマに自由に参加して話し合う手法です。「議論への参加は自分の意思で決める」「移動の自由(法則)」を原則とし、自発性の高い対話を生み出します。

詳細ははじめてのオープンスペーステクノロジー(OST)を参照してください。

フューチャーサーチ

過去〜現在〜未来の3つの時間軸で組織や社会のあり方を共有し、ありたい未来像と具体的なアクションを描く手法です。利害関係者全員(ホールシステム)を集めて長時間(2〜3日)かけて行うのが特徴で、地域コミュニティや社会変革の場面で活用されます。

なぜホールシステムアプローチが注目されるのか

VUCAの時代と大規模対話の必要性

ホールシステムアプローチがビジネスや教育の現場で広がっている背景には、大きく3つの社会変化があります。

ワールドカフェの普及

きっかけのひとつは、2000年代後半から2010年代にかけてワールドカフェが書籍や研修の現場で広く紹介されるようになったことです。ワールドカフェ単体としての認知が広がるなかで、その上位概念である「ホールシステムアプローチ」というキーワードも徐々に浸透しました。

多様な社会への対応

社会が成熟したことで、欲しいものや働き方、生き方が一人ひとり異なる時代になりました。1人で考えるよりも多様なメンバーで対話することで、より幅広いニーズや視点を取り込めるため、組織の意思決定や商品開発に対話型のアプローチが必要とされています。

複雑性の高まり(VUCA)

技術の進歩や社会の相互依存の高まりにより、ひとつの問題を解くのに必要な知識や視点が爆発的に増えました。いわゆるVUCA(変動・不確実・複雑・曖昧)の時代です。

たとえば自動運転車を開発するには、車両工学だけでなくAI・通信・倫理・法制度など複数領域の知見が欠かせません。1人や1部署では解けない問題が増えたからこそ、ホールシステムアプローチのような関係者全員を巻き込む対話が求められています。

企業研修・組織開発に取り入れる際のポイント

ホールシステムアプローチを企業の研修や組織開発に持ち込むときは、次の3点を意識すると効果が出やすくなります。

第一に、目的に合わせて手法を選ぶこと。組織の強みを見つけて未来像を描きたいならAI、創発的に新しいテーマを生み出したいならOST、合意形成を進めたいならワールドカフェ、というように、目的別に手法は異なります。

第二に、利害関係者をできる限り幅広く集めること。ホールシステムアプローチの強みは「全員参加」にあります。意思決定権者だけでなく、現場・若手・関連部署など多様な立場を集めることで、納得感のある結論や行動につながります。詳しい組織開発の実践は、組織力の向上につながる5つの組織開発行動もあわせてご覧ください。

第三に、対話を「単発」で終わらせないこと。ワークショップ自体は数時間〜数日のイベントですが、出た言葉やアクションを職場や日常業務で実行に移す仕組み(振り返り会議、フォローアップ研修など)を用意することで、研修効果が持続します。対話による組織変革のフレームワークは、対話によって組織変革を進める方法〜ペイン・プレジャー・マトリックス〜で詳しく解説しています。

イノベーションや新規アイデアを生み出すための対話設計については、イノベーションを生む対話の4つの要素も参考になります。

まとめ

ホールシステムアプローチは、利害関係者全員を巻き込んで大規模な対話を行うワークショップ手法の総称です。ワールドカフェ、AI、OST、フューチャーサーチなど複数の具体的手法を含みます。

多様で複雑な現代社会では、一部の人だけで決めた答えが現場で機能しないケースが増えています。だからこそ「みんなで考え、みんなで決める」アプローチが組織開発・研修の現場で広がっています。

まずは小さな単位で社内ワールドカフェのやり方(実施編その1)から試してみるのがおすすめです。


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