【論文紹介】システム思考の認知度や取り組みについて
今回はシステム思考をテーマに論文の紹介と、システム思考はもっと多くの人に知ってもらう必要がある、ということについて書いていきたいと思います。
システム思考とは
すでにご存知の方も多いと思いますが、あらためて、システム思考とは、物事をシステム(≒仕組み)として捉え、その構造を把握、利用して問題解決を行う思考法です。
「木を見て森を見ず」、という諺(ことわざ)がありますが、システム思考は「木を見て森も見る」思考法と言われています。
システム思考を理解するのに良いツールとして因果ループ図がありますが、因果ループ図として最も有名な図はベゾスが書いたとされるAmazonの成長サイクルのループ図かもしれません。
因果ループ図についてはこちらで詳しく解説しています。
システム思考における因果ループ図の読み書き入門
システム思考についての論文紹介
今回はシステム思考について面白い調査を行った論文がありましたのでご紹介したいと思います。それがこちらです。
山本 高広
理科教育学研究/64 巻 (2023) 1 号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sjst/64/1/64_22043/_article/-char/ja/
この論文では静岡県の高校の教師の方を対象にして、システム思考についてのアンケートを行い、システム思考がどれぐらい認知されているのか、また、システム思考が体験できるような内容を授業の中で取り入れているか?ということについて調査されています。
調査の結果、システム思考という言葉から想起される単語は以下のようなネットワークで表すことができるということです。
また、システム思考は8つのカテゴリーで認識されていることが明らかになりました。
例:構成要素を論理的につなげ把握すること
2.「生物に関する学習内容」に言及する記述
例:生態系などについて考える際に、個々の生物のみに着目
するのではなく、俯瞰的な視点から総合的に捉える思考
3.「プロセス」に言及する記述
例:考えるためのプロセス
4.「部分や全体の視点」に言及する記述
例:全体の最適化を行う構造を持った思考
5.「相互作用・相互関係」に言及する記述
例:様々な事象現象が相互に関係しあっていることに関して
ロジカルに物事を考えること
6.「複数・複雑」に言及する記述
例:複数の事象を一体として捉え考えていく
7.「ツール」に言及する記述
例:ループ図を使いシステムとして現象を捉える
8.「その他」に言及する記述
例:現象の本質を理解する
※一部抜粋
個人的に面白いな、と感じたのはシステム思考という言葉から生物に関する学習内容というキーワードが出てくるのは理科の先生たちならではなのかな、と思いました。
食物連鎖や、環境破壊による生物への影響などがシステム思考として認識されているのかと思います。
また、この調査を通して、初めてシステム思考という単語を知ったという教師の方も居たようです。
なお、授業の中にシステム思考の要素を入れている教師の方はまだまだ少ないということでした。
システム思考をもっと多くの人に知ってもらいたい
先の論文の考察でも触れられていましたが、システム思考への認知度はまだまだ高くないというのが実体化と思います。
しかし、2017年にUNESCOによって提唱された持続可能な市民になるために必要な8つのコンピテンシーの中にも1番目にシステム思考が入っていたり、
Learning Objectives
名著、学習する組織の中でも1つの章を割いてシステム思考が取り扱われているなど、複雑な社会・事象を把握し、適切に対処するにはシステム思考が欠かせません。
弊社ではこれまでシステム思考についてのブログ記事の記述や、システム思考を体験できるビジネスゲームを取り扱って来ましたが、より多くの人にその重要性を知ってもらうために何ができるのか、考えていきたいと思います。
因果ループ図についてはこちらに詳しく記載されています。
簡単に解説!システム原型 シリーズ
ぜひ論文も読んでみてください。
山本 高広
理科教育学研究/64 巻 (2023) 1 号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sjst/64/1/64_22043/_article/-char/ja/