ティール組織イベントで聞いたビュートゾルフの3つの特徴

さらに、自助や地域を重視する「玉ねぎモデル」の導入や、訪問時の滞在率60%以上という独自のKPIにより、高い生産性とケアの質を両立しています。
本書の事例は、自律分散型のティール組織を構築するための優れたビジネスモデルとして示唆に富んでいます。
2025年現在もなお、ティール組織は組織開発・経営論の文脈で頻繁に参照されるキーワードです。自律分散・自主経営型の組織モデルとして、スタートアップから大企業の変革プロジェクトまで、様々な場面で引用されています。
本記事では、ティール組織の代表事例としてフレデリック・ラルーの『ティール組織』で最も多くのページが割かれているオランダの在宅ケア組織”ビュートゾルフ(BUURTZORG)”の特徴を、筆者が参加した堀田聰子先生(慶應義塾大学)のイベントで聞いた内容を中心にまとめます。

画像参照:英治出版ブログ
ビュートゾルフ(BUURTZORG)とは
【要点】ビュートゾルフ(BUURTZORG)はオランダ最大の地域密着型 在宅ケアサービスで、従業員規模は約7万人(非営利型)。中間管理職を置かないフラット組織で、地域看護師チームが自律的にケアを提供します。F・ラルー著『ティール組織』で最も多くの頁を割いて紹介された代表事例です。

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 組織名 | ビュートゾルフ(BUURTZORG) |
| 事業 | オランダの地域密着型 在宅ケアサービス |
| 規模 | 従業員7万人規模/非営利型 |
| 位置づけ | オランダ最大の地域看護師組織 |
| 書籍内の位置 | 『ティール組織』で最も多くの頁を割いて紹介 |
ビュートゾルフの3つの特徴
【要点】ビュートゾルフのビジネスモデルとしての特徴は (1)フラット組織+ICT活用で間接費を抑える、(2)ヘルパー・ケアマネ・看護師を1チームに統合する分業制廃止、(3)自助と地域支援を重視する玉ねぎモデルで工数を抑えながら高品質ケアを実現する、の3点です。
イベントで堀田先生から紹介された、ビジネスモデルとしての3つの特徴を整理します。ティール組織の文脈だけでなく、「1つの組織のビジネスモデル」として見ても示唆的な事例です。
| No | 特徴 | 要旨 |
|---|---|---|
| ① | 間接費が低い | フラット組織+ICT活用 |
| ② | 分業制廃止 | 複数職種を1チームに統合 |
| ③ | 少ない工数で効果の高いケア | 玉ねぎモデルで自助・地域を重視 |
①間接費が低い|フラット組織+ICT
1つ目の特徴は、間接費の低さです。理由は2つ挙げられています。
| 要素 | 効果 |
|---|---|
| フラット組織(中間管理職なし) | 管理コストをそもそも発生させない |
| ICTによるオープンなコミュニケーション | 情報共有を媒介する中間層が不要 |

②分業制廃止|複数職種を1組織内に
日本では別々の事業者・資格として運用されることが多いヘルパー・ケアマネジャー・看護師などが、ビュートゾルフでは1つのチーム内に統合されています。
| 分業制のコスト | 分業制廃止での改善 |
|---|---|
| 職種間の情報連携コスト | 同一チーム内で即時共有 |
| 事業者を跨ぐ移動コスト | 訪問件数を集約して効率化 |
| 利用者の窓口の複雑化 | 担当チームが一貫サポート |

③少ない工数で効果の高いケア|玉ねぎモデル
3つ目の特徴は、より少ない工数でより効果の高いケアを実現している点です。その土台が玉ねぎモデルと呼ばれる支援設計の考え方です。

| 玉ねぎモデルの3要素 | 意味 |
|---|---|
| ①自助が第一 | 利用者自身の自立能力を最大化 |
| ②地域でのサポートを重視 | 家族・近所・ボランティアの力を先に使う |
| ③徐々に引いていくサポート | 専門職は最後に、かつ減らしていく設計 |
“提供するケアを減らす”のではなく、“自助と地域で賄える範囲を最大化した結果、専門職の工数が減る”という順序がポイントです。他の組織と比べて工数が少ないうえに効果も高いと報告されています。
番外編|ビュートゾルフ独自のKPI
【要点】ビュートゾルフ独自のKPIは「クライアント訪問中の滞在率60%以上」。移動や書類業務などの間接業務を最小化し、利用者と直接過ごす時間を生産性として定量化します。データドリブンに運営される姿はITベンチャー的で、ホワイトカラー職の生産性議論にも転用できる発想です。
ビュートゾルフはまるでITベンチャー企業のようにデータドリブンに運営されており、独自のKPIを設定・計測しています。
“移動・書類などの間接業務ではなく、利用者と過ごす時間”を直接的な生産性として捉える考え方は、ホワイトカラー職の生産性議論にも転用できる発想です。
ティール組織としてのビュートゾルフから学べること
【要点】ビュートゾルフから日本企業が学べる視点は (1)フラット組織でもICTがあれば回るのでリモートワーク時代の組織設計に応用可能、(2)分業を跨ぐチーム化で情報ロスを削減、(3)自助→地域→専門職の順の支援設計がカスタマーサクセス/コミュニティ運営に転用できる、(4)定性サービスにも明確なKPIを設けることで人的サービスの生産性を可視化できる、の4点です。
| 学び | 応用先 |
|---|---|
| フラット組織でもICTがあれば回る | リモートワーク時代の組織設計 |
| 分業を跨ぐチーム化で情報ロスを減らす | プロジェクト型組織/クロスファンクショナルチーム |
| 自助→地域→専門職の順の支援設計 | カスタマーサクセス/コミュニティ運営 |
| 定性サービスにも明確なKPI | 人的サービスの生産性可視化 |
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まとめ
【要点】ビュートゾルフは「ティール組織」の文化・哲学だけでなく、自律チーム制・独自KPI・分業制廃止というビジネスモデルとしても極めて洗練された事例です。フラット組織を志向する企業は、文化導入だけでなく仕組み・KPI設計まで踏み込むと組織変革が前に進みやすくなります。
ビュートゾルフの特徴を整理すると、“ティール組織”という文化・哲学だけでなく、ビジネスモデルとしても極めて洗練されていることがわかります。
| 観点 | ビュートゾルフの工夫 |
|---|---|
| 組織構造 | フラット+ICT |
| 役割分担 | 分業制廃止 |
| 支援設計 | 玉ねぎモデル(自助→地域→専門職) |
| 経営指標 | 滞在率60%以上の独自KPI |
ティール組織の実現には、価値観や哲学だけでなくビジネスモデルとしての優秀さ(利益率を支える設計)も不可欠——それがビュートゾルフが教えてくれる示唆です。自社で何を取り入れられるか、ぜひ考えてみてください。
