学習する組織を読んで、これを自社に取り入れたい!と感じた方は多いのではないでしょうか。人的資本の情報開示が進み、リスキリングが経営テーマとなった2026年、自社を学び続ける組織に変えていく必要性は、ますます高まっています。

学習する組織は、ピーター・センゲによって書かれたこれからの組織のあり方を示した名著です。

自社に学習する組織という文化を取り入れるために、具体的に何をすれば良いのか? 今回は、この疑問を持つ方に向けて、企業研修という形式で実践できる取り組み(アイデア)を5つのディシプリン別に紹介します。

なお、学習する組織そのものの解説は以下の記事をご覧ください。

ピーターセンゲ著 学習する組織とは

5つのディシプリンと企業研修の対応早見表

学習する組織で押さえておきたいのが5つのディシプリンです。これらを自社に根付かせることが、学習する組織を取り入れることとほぼ同義だと考えられます。

ディシプリン 何をするか おすすめ研修アイデア
①システム思考 事象を構造で捉える ビールゲーム
②自己マスタリー 個人の成長・学習 ハイポイントインタビュー
③メンタル・モデル 思い込みに気づく ハイポイントインタビュー/ダイアログ
④共有ビジョン 未来像を共につくる ワールドカフェ/OST
⑤チーム学習 チームで学び続ける アクティブ・ブック・ダイアログ

以下、それぞれのディシプリンを研修に落とし込む際のポイントを順に説明します。

1. システム思考|ビールゲームで体感する

ビールゲーム

システム思考は、複雑に絡み合う事象を構造として捉え、本質的な問題に目を向けるための思考法です。企業研修で扱うなら、学習する組織でも紹介されているビールゲームを実践するのが最も効果的です。

ビールゲームでは、表面化している問題(在庫の山/欠品)だけでなく、それを生み出している構造(情報伝達の遅れ・意思決定の独立性)に目を向ける体験ができ、全体をシステムとして捉える視点が育ちます。

ビールゲーム実施の流れ|システム思考研修

補足: システム思考を研修で扱う際は、事前にロジカルシンキング研修を入れておくと理解が速くなります。システム思考はロジカルシンキングの上位概念として捉えられるため、「原因と結果」の土台が揃っている方が、因果ループ図の読み書きに入りやすいです。

2&3. 自己マスタリー&メンタル・モデル|ハイポイントインタビュー

自己マスタリーとメンタル・モデルは、いずれも自分を知るプロセスが軸にあります。

自己マスタリー:個人の成長と学習のディシプリンを指す(P.194)
メンタル・モデル:世の中とはこういうものだという心に染み付いたイメージ(P.240)

ここでおすすめしたいのがハイポイントインタビューです。これまでで最もイキイキと仕事ができた経験をインタビュー形式で振り返ることで、ポジティブ・コア(強み・価値観)を発見する対話手法です。

ハイポイントインタビューのやり方

役割 得られるもの
発表者 自分の価値観・思考プロセスの内省(自己マスタリー)
聞き手 相手の強み・バイアスへの気づき(メンタル・モデル)

過去の経験と感情を丁寧に語ってもらうことで、自分の中にある前提(メンタル・モデル)を浮かび上がらせることができます。

4. 共有ビジョン|ホールシステムアプローチ

共有ビジョンは、多くの企業がすでにビジョン・ミッション・バリューを定めているため、イメージしやすいディシプリンです。書籍では「自分たちは何を創造したいのか?」という問いへの答え、と定義されています(P.281)。

共有ビジョンを描く研修として効果が高いのが、ホールシステムアプローチを用いたワークショップ形式です。

はじめてのホールシステムアプローチ

手法 特徴 向いている場面
ワールドカフェ 発散と収束をバランス良く 全社・部門単位でビジョンの素案を作る
OST(オープンスペーステクノロジー) 参加者の興味で議題が決まる 熱量の高い対話で具体案を磨く
AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー) 強みベースで未来を描く 停滞感を打ち破りたい時

はじめてのオープンスペーステクノロジー(OST)

はじめてのアプリシエイティブ・インクワイアリー

OSTでは、たとえば「Aチームはどんな製品を創りたいか? Bチームはどんな組織を創りたいか? Cチームはどんな社会を創りたいか?」というように自分の興味で参加チームを選んで話し合うため、熱量の高い対話が生まれます。

5. チーム学習|アクティブ・ブック・ダイアログ

チーム学習は、書籍の中で次のように説明されています。

メンバーが心から望む結果を出せるようにチームの能力をそろえ、伸ばしていくプロセスである。

研修という具体的な形に落とすなら、アクティブ・ブック・ダイアログ(ABD)をおすすめします。1冊の本をバラバラに分け、各自が担当ページを読み、要約・プレゼンする新しい読書法です。

アクティブ・ブック・ダイアログ 実施風景

アクティブ・ブック・ダイアログ(ABD)という新しい本の読み方

ABDで得られるもの 学習する組織との接続
1冊の本を短時間で全員が共有 共通言語・共通認識がコミュニケーションコストを下げる
要約のアウトプットで理解が深まる 自己マスタリー(学ぶ力)を個人単位で鍛える
読書後のダイアログで違和感を共有 チーム学習のディシプリンそのもの

弊社でも『学習する組織』『ティール組織』などをABD形式で扱う研修を設計しており、チームで本を「読むだけ」から「使えるようにする」ための起点として活用できます。

導入ステップの提案

いきなり5つのディシプリンを全て研修化する必要はありません。現場では、以下の順序で導入すると定着しやすい傾向があります。

ステップ 内容
①共通言語づくり ABDで『学習する組織』の共通理解を作る
②システム思考の体感 ビールゲームで全体を俯瞰する視点を獲得
③自己理解 ハイポイントインタビューで個人の価値観を言語化
④共有ビジョン ワールドカフェ/OST/AIで未来像を共有
⑤定着 1on1・チームダイアログで日常運用に接続

まとめ

学習する組織を自社に取り入れるためには、5つのディシプリン(システム思考・自己マスタリー・メンタルモデル・共有ビジョン・チーム学習)を研修の形で段階的に組み込むことが有効です。ビールゲーム・ハイポイントインタビュー・ワールドカフェ/OST・ABDといった具体的な手法を組み合わせ、共通言語づくり → 体感 → 自己理解 → 共有ビジョン → 日常運用の順で進めると、一過性の研修で終わらず組織文化として根付きます。

ビールゲーム・学習する組織研修のご相談

弊社ではビールゲームの講師派遣・運営キットのレンタルを実施しています。「学習する組織という概念自体を自社に取り入れたい」というご相談も増えていますので、そのような想いを持つご担当者様のお役に立てれば幸いです。

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