前回(新入社員研修で使える振り返りの方法〜前編〜)に引き続き、新入社員研修やプロジェクト型研修で使える振り返り手法を紹介します。今回は「一定期間後の振り返り」、つまり数日〜数週間のプロジェクト型研修や、1つの単元を終えたタイミングで役立つ振り返り手法を整理します。アジャイル開発の現場では定番化した手法でもあり、新入社員研修でも導入しやすい型です。

本記事では代表的な3つの振り返り手法を詳解し、2026年現在のリモート・ハイブリッド研修環境での活用ポイント、実践でつまずきやすい落とし穴、よくある質問までを整理します。

「一定期間後の振り返り」に使う3つの方法

研修現場で広く使われている振り返り手法は、大きく3つあります。KPT・More/Less・定量分析の3つです。目的と粒度が違うため、研修の内容に合わせて使い分けるのが基本です。

1. KPT(Keep / Problem / Try)— 最も汎用的。1人でもチームでも使える
2. More/Less — シンプルさ重視。意思決定を促しやすい
3. 定量分析 — 数値で振り返る。プロジェクト型研修に最適

1. KPT(Keep / Problem / Try)

「振り返り 方法」で検索したとき最も多くヒットする代表的な手法がKPT(Keep・Problem・Try、ケプト)です。アジャイル開発のレトロスペクティブ(ふりかえり)として広く普及し、近年は研修現場でも定番の型になっています。

KPTの3要素(Keep・Problem・Try)

プロジェクトの途中や終了時に、Keep・Problem・Tryの3つのフレームで振り返ります。1人でも使えますが、ここでは複数人でのチーム振り返りを想定して進め方を整理します。

Keep:継続したいこと(うまくいっていること)
Problem:問題だと思うこと(うまくいっていないこと)
Try:次に試したいこと(変えたい・新しく取り入れたい)

KPTで押さえたい2つのポイント

KPTを実施する際の実践ポイントは2つあります。

1つ目はKeep → Problem → Try の順で進めることです。ProblemやTryから入ると「うまくいかなかった話」ばかりに傾き、心理的安全性が損なわれます。先にKeepで成果を言語化し、場を前向きに温めてからProblemに移るとチーム全体が建設的なモードになります。

2つ目は紙(もしくはオンライン付箋)に書いてからディスカッションすることです。いきなり口頭で話し始めると、声の大きい人の意見に場が引っ張られます。まず3〜5分間、全員が黙って付箋に書き出してから共有する、というルールを最初に宣言しておきましょう。リモート研修ではMiroやFigJam、Notionの付箋機能で同じことを再現できます。

2. More/Less

もう1つのシンプルな振り返り手法がMore/Less(モア・レス)です。KPTの派生と捉えてよく、もっと増やしたい行動(More)と減らしたい行動(Less)の2軸だけで振り返ります。

More:もっと増やしたい行動・習慣
Less:もっと減らしたい行動・習慣

KPTよりさらに意思決定を促しやすいのが特長で、「Problem=問題があった」で終わらせず、「次の一歩を具体的な行動で決める」ところまで自然に誘導できます。新入社員が考え込みすぎるタイプのチームや、振り返り慣れしていない階層には More/Less の方が立ち上がりが早いです。

一方で、Moreに挙がる項目が抽象的になりがち(例:「もっと頑張る」「積極的に発言する」)という弱点もあります。ファシリテーターが「それを来週、具体的に誰と・いつ・何回やるか」まで一緒に詰めると、行動に落とせます。

3. 定量分析

3つ目は定量分析による振り返りです。プロジェクト型の研修や、営業ロールプレイ研修など数値で成果が測れる場面で有効です。

手順はシンプルで、まず振り返り対象期間の活動を数値で並べ、その数値が伸びた(下がった)要因をチームで因数分解します。新入社員研修であれば「訪問件数 / ロープレ回数 / 質問回数 / 提案書作成件数」など、行動指標を対象にすると答えが見えやすくなります。

定量分析の強みは、KPTやMore/Lessが「感覚」や「主観」に流れやすいのに対し、データを出発点にできるため認識のズレが起きにくいことです。弱みは、数値を取っていない活動には使えない点。研修設計段階で「どんな数値を何で取るか」を先に決めておくのが前提条件になります。

2026年の振り返り:アジャイル・レトロスペクティブとデジタルツール

2020年前後を境に、振り返りの現場はアナログの付箋+模造紙からデジタルホワイトボード(Miro、FigJam、Notion)中心へと大きく変化しました。2026年時点で、研修を設計する際に押さえておきたい文脈は3つあります。

1つ目はアジャイル開発文化の浸透です。KPTはもともとソフトウェア開発のレトロスペクティブとして広がった手法ですが、現在はエンジニア以外の部門(営業・マーケ・バックオフィス)でも当たり前に使われています。新入社員が配属後に経験する可能性が高いので、研修段階で型を体得しておくと現場適応がスムーズです。

2つ目はデジタルツールとの相性です。MiroやFigJamの「付箋テンプレート」にはKPTやMore/Lessのひな形があり、ゼロから枠を作らずに始められます。リモート・ハイブリッド研修ではブレイクアウトルームでの付箋作業→全体共有という流れが定着しつつあります。

3つ目は非同期振り返りの浸透です。リアルタイムの1on1やチーム集合だけでなく、Slackの専用チャンネルやNotionのページに各自が書き込み、翌営業日に集まって共有する、という非同期型も増えました。Z世代の新入社員は対面より非同期の方が率直に書ける傾向があるため、研修でも併用すると多角的なフィードバックが集まります。

振り返り研修でよくある失敗と対策

振り返り研修を何度もご支援する中で、現場でよく見かける典型的な失敗パターンは3つあります。

1つ目は「反省会」になってしまうケースです。Problemの洗い出しに時間をかけすぎると、誰かを責める場に変質しやすくなります。必ずKeepから始め、Problemは「仕組みや環境」に焦点を合わせて個人名を出さないよう促しましょう。

2つ目はTryが抽象的で終わるケースです。「コミュニケーションを増やす」「主体的に動く」といった抽象Tryは次週には忘れられます。Tryは「いつ・誰と・何回・どこで」までファシリテーターが追い込み、SMART原則(具体的・測定可能・達成可能・関連性・期限)で書き直してから終えるのがコツです。

3つ目は振り返りがその場で終わるケースです。次回集まる頃には前回のTryが忘れられていることが大半。次回の冒頭10分を「前回のTryはできたか/できなかったか」のチェックに使うルールを決めておくと、振り返りが「回り続ける仕組み」になります。

振り返り手法に関するよくある質問

新入社員研修にはKPTとMore/Less、どちらが適していますか?

配属後1〜3ヶ月の新入社員には、項目数が少なくシンプルに決めやすいMore/Lessが向いています。振り返りに慣れてきた配属後半年以降、あるいはプロジェクト型研修ではKPTを導入すると、より多角的に整理できます。

振り返りは何分くらい確保すべきですか?

チーム5〜8名で45〜60分が標準です。内訳は「個人記入10〜15分 / 共有20〜30分 / Try絞り込み10〜15分」。時間を切らずに進めると「共有」が長引き、Tryの具体化が雑になります。

オンライン研修での振り返りにおすすめのツールは?

Miro(テンプレートが豊富)、FigJam(動作が軽く初心者でも扱いやすい)、Notion(議事録とセットで残したい場合)が代表的です。Zoomのホワイトボード機能は手軽ですが保存・再利用に弱いため、繰り返し使うならMiro/FigJamが推奨です。

振り返りを続けても効果が感じられないときはどうすればよいですか?

たいていの原因は「Tryが実行されていない」です。前回のTryのチェック時間を次回冒頭に設け、実行率を数値で可視化する(例:5件中3件実行=60%)と改善サイクルが動き出します。改善が動かないまま回し続けるより、まず実行率に焦点を当て直してください。

振り返り・リフレクションを体系的に学ぶには

研修ファシリテーターや人材育成担当者として振り返りを専門的に扱うなら、前提となるリフレクション(内省)の理論を押さえておくと、設計の質が大きく変わります。熊平美香氏の『リフレクション(REFLECTION) 自分とチームの成長を加速させる内省の技術』は、個人の振り返りをチーム・組織の成長にどう接続するかまで踏み込んだ実務書で、研修現場ですぐ使える枠組みが整理されています。

まとめ

新入社員研修で使える一定期間後の振り返り手法として、KPT・More/Less・定量分析の3つを紹介しました。どれか1つが正解ではなく、研修の目的・期間・対象者の習熟度に応じて使い分けるのが実務的な判断です。

2026年現在はアジャイル開発のレトロスペクティブ文化とデジタルホワイトボードの普及で、振り返りのハードルは大きく下がりました。研修で型を体得し、配属後も非同期ツール併用で継続的に回せるようにしておくと、個人とチーム両方の成長サイクルが動き続けます。


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