eラーニングの修了率を上げる3つの仕掛け|2015年実証データから修了率75.6%を達成

eラーニングは時間と場所を選ばず学べる便利な仕組みですが、「最後まで終わらない」「途中で離脱する」といった修了率の低さが長年の課題です。本記事では、弊社が2015年に運営したプログラミング研修の実証データから見えてきた、eラーニングの修了率を上げる3つの仕掛けを紹介します。

【結論】eラーニングの修了率を上げるには、①修了後のインセンティブ②ランキング機能(社会的比較心理)③質問機能(困りどころのサポート)の3つを組み込むのが有効です。学習者の「続けたくなる」気持ちと「つまずきを乗り越えられる」サポートを両立させることが鍵になります。

目次

1. eラーニングが続かない理由
2. eラーニングの修了率を上げる3つの仕掛け
3. 実例|2015年実施のプログラミング研修の実証データ
4. 企業のeラーニング設計に応用するポイント
5. まとめ

eラーニングが続かない理由

eラーニングは利便性が高い一方で、対面研修や集合研修と比べて修了率が低いことで知られています。MOOC(大規模公開オンライン講座)の修了率はわずか数%という調査結果もあり、「学び始めはしたが最後までやりきれない」のが標準的な状態です。

修了率が低くなる主な理由は次のとおりです。

第一に、進捗を共有する相手がいないこと。1人で動画を見て課題に取り組むスタイルでは、「自分だけ進んでいないのでは」という危機感も、「自分はこんなに進んでいる」という達成感も生まれにくくなります。

第二に、つまずいた時に質問できる相手がいないこと。動画を見ても理解できなかった、課題が解けない、という瞬間に止まってしまうとそのまま離脱しがちです。

第三に、修了することへの動機づけが弱いこと。「学ぶこと自体」だけでは続かず、「修了する意味」が必要です。

eラーニングの修了率を上げる3つの仕掛け

弊社が2015年に運営したプログラミング初心者向け研修(eラーニング+集合学習の2部構成、第1部:eラーニング/第2部:集合学習)の実データから、修了率を高める3つの仕掛けが見えてきました。

1. 修了後のインセンティブ

1つ目は、修了することで得られる明確なインセンティブを設計することです。

弊社が運営したプログラミング研修では「第1部のeラーニングを修了しなければ第2部の集合学習に進めない」という設計にしました。学習者にとっては「修了=次のステージ(対面で講師に直接学べる場)に進める」という、はっきりとしたメリットがあります。

通信制大学などでも、修了・卒業すれば「学位」が授与されるという形で同じ仕組みが使われています。「学習」だけを目的にすると続かないが、「修了」を目的にすると続くのは、人間の意思決定が「ゴールが見える」状態の方が動きやすいためです。

ナッジ理論で広く知られる「EAST」フレームワーク(Easy/Attractive/Social/Timely)でも、行動を起こさせるには「魅力的(Attractive)」な見返りが効くとされています。詳しくは部下の育成で活用したいナッジ理論「EAST」もあわせてご覧ください。

2. ランキング機能(社会的比較心理)

2つ目は、他の学習者との進捗を可視化するランキング機能です。

弊社のプログラミング研修では、参加者が「他の人が何問目まで進んでいるか」をランキング形式で確認できる機能を設けました。すると参加者からは「ついついランキングを見てしまう」という声が多く、データでも全参加者の平均で14.7回もランキングを閲覧していました(修了者は平均15.6回、未修了者は12.5回)。

これは行動経済学やゲーミフィケーションでよく使われる「社会的比較」の効果です。1人で勉強しているからこそ、他人の進捗が気になる心理が強く働きます。

「思わず気になって何度も見てしまう」体験を設計に組み込むと、学習継続率は明らかに変わります。こうした「ついやりたくなる」体験設計の考え方は、Wii元プランナー・玉樹真一郎氏の著書『「ついやってしまう」体験のつくりかた』で詳しく解説されています。

3. 質問機能(困りどころのサポート)

3つ目は、つまずいた時に講師や運営に質問できる窓口を用意することです。

プログラミング学習でよくあるのが、本や動画通りにやっているつもりでもうまく動かない場面。スペルミスや「)」が1つ足りないなど、本人だけでは気づきづらい問題でつまずくと、そこから先に進めず離脱につながります。

弊社のプログラミング研修では、講師に直接質問できる機能を用意しました。45名の受講者のうち31名が少なくとも1度は質問機能を利用し、全体平均で1人あたり2.58回の質問が発生しました(修了者平均3.47回/未修了者平均1.5回)。

進んでいる学習者ほど多くの問題に挑戦するため質問数が増えるのは当然ですが、質問機能があったからこそ離脱せずに最後まで進めたことは間違いありません。

実例|2015年実施のプログラミング研修の実証データ

3つの仕掛けの効果を裏付ける実データを再掲します。

項目 数値
参加者数(第1部eラーニング) 45名
修了者数 34名(修了率75.6%)
ランキング閲覧回数(平均) 14.7回(修了者15.6回/未修了者12.5回)
質問機能の利用人数 31/45名
質問回数(平均) 2.58回(修了者3.47回/未修了者1.5回)
学習時間(目安) 約20時間(動画25本+課題25問)

MOOC等の一般的なeラーニングの修了率(数%〜10%程度)と比較すると、3つの仕掛けを組み込んだ本研修は75.6%という高い修了率を達成しました。

企業のeラーニング設計に応用するポイント

3つの仕掛けは企業の社内eラーニング設計でも応用できます。導入時のポイントを整理します。

第一に、修了の見返りを業務やキャリアに紐づけること。資格取得・配置転換・昇格条件・対面研修参加権など、「修了したから次に進める」状態を作ることで、修了は学習者にとって意味あるゴールになります。

第二に、社内ランキングや進捗ダッシュボードを公開すること。LMS(学習管理システム)の機能で、部署別・チーム別の進捗ランキングや受講率を可視化すると、社会的比較心理が働き継続率が向上します。ただし「下位の個人を晒す」運用は逆効果になるため、チーム単位など心理的安全性を保った設計が望ましいです。

第三に、つまずきを聞ける窓口を必ず用意すること。Q&Aフォーム・Slackチャンネル・チューター制度など、形式は問いません。「困った時に聞ける」と分かっているだけで離脱率は大きく下がります。組織として学び続ける仕組みづくりについてはHuberによる組織学習の4つの要素と組織学習サブプロセス尺度もあわせてご覧ください。

eラーニング後の集合研修・体験型研修との組み合わせを検討している方は、eラーニングで参加者がコミュニケーションを取れる参加型の研修企業研修に反転学習を取り入れる簡単な方法も参考になります。

まとめ

eラーニングの修了率を上げるには、3つの仕掛けが有効です。

1. 修了後のインセンティブ
「学習」だけでなく「修了」したくなる動機を作る

2. ランキング機能(社会的比較心理)
1人で勉強しているからこそ他人の進捗が気になる心理を活用する

3. 質問機能(困りどころのサポート)
1人では解決できないつまずきをサポートする窓口を用意する

弊社の2015年プログラミング研修では75.6%の修了率を実現できました。MOOCの平均修了率と比較しても、3つの仕掛けを組み込むことの効果は明確です。eラーニング設計を見直す際の参考にしていただければ幸いです。


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