リフレクティング・プロセスを用いたチームでの振り返りのやり方
チームの振り返り(リフレクション)で「いつも同じメンバーが発言して、他のメンバーは聞いているだけ」「議論が平行線で深まらない」といった悩みはありませんか?1on1やチームミーティングで振り返りを回しても、参加者全員が深く考える機会にならないことは多くあります。
本記事では、家族療法のカウンセリング技法から生まれたリフレクティング・プロセスを、4人1組の2on2形式でチームの振り返りに応用する方法を紹介します。参加者が「話す」と「観察する」を交互に担うことで、内省が深まり、異なる視点からの気づきが生まれる手法です。
リフレクティング・プロセスとは
リフレクティング・プロセスは、家族療法のカウンセリング手法で、ノルウェーの精神科医トム・アンデルセンによって提唱されました。
従来のカウンセリングでは「家族が話し、カウンセラーが観察する」という一方向の構図でしたが、リフレクティング・プロセスは観察される側と観察する側を交互に入れ替えるのが特徴です。

佐々原 正樹(2013) 広島大学大学院教育学研究科紀要 第一部, 学習開発関連領域
https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/ja/00035339
プロセスの流れ
2. それを他のカウンセラーが観察する
3. カウンセラー同士が会話するのを家族側が観察する
4. 1に戻る
特徴的なのはステップ3です。それまで「観察される」だけだった家族が、今度は「観察する」立場になります。自分たちを題材にした対話を外から眺めるという体験は、家族の内的対話(自己内対話)を深め、自ら変化を起こす契機になります。
チームの振り返りに応用する「2on2」
このリフレクティング・プロセスをチームでの振り返りに応用するには、4人1組の2on2形式が実施しやすい設計です。

1on1との違い
・1on1: 個人についての対話が中心
・2on2(リフレクティング・プロセス): チームの状況や仕組みについての対話が中心
個人の課題は1on1で扱い、チーム共通のテーマは2on2で扱うという使い分けがおすすめです(個人の問題を複数人に共有することで別の問題を生む可能性があるため)。
2on2の進め方
2. メンバーC・Dはそれを黙って観察する(発言・反応は控える)
3. A・Bの対話を受けて、C・Dが感じたこと・気づいたことを対話する(10分)
4. その間、A・Bは黙って観察する(発言・反応は控える)
5. 時間があれば役割を入れ替えて1に戻る
この手法の面白さ
最初はC・Dが発話できず、A・Bの話を聞きながら自分の考えをまとめることに集中します。その「黙って考える時間」が内省の質を大きく上げます。
次にC・Dが対話する番になった時、A・Bは観察に回るため、今度は自分たちの話がどう受け止められているかを外から眺められます。「自分たちの話をきっかけに、別の視点の対話が生まれる」という体験が、チームの思考の幅を広げます。
4人で一気に話すよりも、2人ずつの対話の方が深い会話になりやすいという副次的メリットもあります。
オンラインで実施するコツ
リモートワークが定着した現代では、2on2もオンラインで実施する機会が多くなります。オンライン実施のポイントは以下です。
・対話する人以外はビデオOFF・ミュートにする(反応が入ると対話者が影響を受けてしまう)
・ブレークアウトルームを使わない(同じ画面で全員が見える方が「観察される」緊張感が残る)
・チャット機能も使わない(発言の代替になってしまう)
・時間管理はファシリテーターが厳密に行う(話す側も聞く側も時間が過ぎると集中が切れる)
2on2が効果を発揮するシーン
・プロジェクト完了後の振り返り: チームの進め方の改善点を探る
・部門横断プロジェクトのキックオフ: 互いの視点の違いを可視化
・マネジメント層の課題共有: 1on1では扱いにくい組織テーマを議論
・チームビルディング研修: 相互理解を深める構造化対話として
・四半期ごとのチーム定期振り返り: 通常会議とは異なる深さの対話を生む
参考書籍
リフレクティング・プロセスの提唱者トム・アンデルセンによる書籍もあります。
まとめ
リフレクティング・プロセスは、家族療法から生まれた「観察」と「対話」を交互に担うカウンセリング技法です。これを4人1組の2on2形式にアレンジすると、チームの振り返りが格段に深くなります。
1on1では扱いにくいチーム共通のテーマ・組織の課題を議論する場として、定期的な振り返りに取り入れてみてください。沈黙して観察する時間があることで、普段発言が少ないメンバーも深く考える機会が得られる設計です。
