2018年9月号のハーバード・ビジネス・レビューの特集「発想するチーム」に興味深い記事が掲載されていました。タイトルは、ブレインストーミングではあえて「問い」を追求せよというもので、MITのハル・グレガーセン氏による論文です。生成AIが当たり前のツールとなった2026年以降、「よい答えを出せる力」よりも「よい問いを立てられる力」が重要だと言われる機会が増えました。クエスチョン・バーストは、そのスキルをチーム単位で鍛えるのに向いたシンプルな手法です。

ハル・グレガーセン氏は、ロングセラーの『イノベーションのDNA』の著者でもあります。

この記事では、論文の中で紹介されているクエスチョン・バーストという問いのブレスト手法について、やり方と実施のコツをまとめます。

クエスチョン・バースト誕生の経緯

ハル・グレガーセン氏はMBAのクラスで学生にブレインストーミングを行わせていましたが、ありきたりなアイデアばかりが出て盛り上がりに欠けていました。そこで氏はとっさに「このブレストではアイデアを出すのではなく、この問題についての新たな問いを考えてみましょう」と指示を切り替えました。

その結果、問いを考えるブレストの方が、解決策ブレストより有意義だったことから、クエスチョン・バーストという手法が誕生しました。背景には、「問題設定の質が解決策の質を規定する」というアインシュタイン以来の古典的な示唆があり、生成AIで解決策が瞬時に出る時代だからこそ、問題をどう設定するかにチームの価値が集中するという構造があります。

クエスチョン・バーストで得られる4つの効果

例えば、「新入社員の成長速度を高めるためにはどうすればよいか?」というテーマを考えてみましょう。通常のブレインストーミングは解決策を出し合いますが、クエスチョン・バーストではこの問いについての問いのみを積み上げます。

・何ができるようになったら成長したと呼べるのか?
・新入社員の成長を阻害している要因はなんだろうか?
・上司はどこまで手を差し伸べるべきだろうか?
・成長速度を高めることは本当に良いことなのだろうか?

このように問題についての問いを多数リストアップすることで、チームは次の4つの効果を得られます。

効果 解決策ブレストだけでは得にくい理由
思い込みに気づける 答えを急ぐと「前提」が可視化されないまま流れる
問題への理解度が増す 表面的な「いいアイデア探し」で止まりがち
本当に解決すべき問題が見えてくる 本来の課題(上位命題)が曖昧なまま解決策が並ぶ
メンバー間の前提条件が揃う 暗黙の前提が個人差のまま議論が進む

クエスチョン・バーストのやり方(3ステップ)

クエスチョン・バーストは大きく3つのパートから構成されます。全体で10〜15分ほどの短いワークなので、会議の一部や研修のウォームアップとしても使いやすい設計になっています。

ステップ 英語 ねらい 目安時間
①舞台を準備する Set the Stage 課題と協力者の場を整える 2分
②問いのブレスト Brainstorm the questions 問いだけを大量に出す 4分
③問いを見極め取り組む Identify a quest 核心的な問いを選び行動する 残り時間

①Set the Stage(舞台を準備する)

・自分たちが深く気にかけている課題を1つ選ぶ
・その課題について新鮮な視点を持って協力してくれる数名の協力者を招く
・理想は問題への直接経験がない人/考え方が違う人
2分以内で招待者に問題を共有する

ポイントは「多様な協力者」と「2分共有」です。短い時間で問題を伝えようとすると、肝となる部分だけを抽出することになり、大局的な視点で問題を眺めやすくなります。

②Brainstorm the questions(問いのブレスト)

・ブレストは4分間で行う
・課題についての問いをできるだけ多く出す
・問いの答えや、その問いを出した理由を話してはいけない
4分で15〜20個の問いを目標にする
・出てきた問いは話したまま・聞いたままに記録する

ポイントは「4分で15〜20個」という量へのプレッシャーです。量を追うことで、途中で解決策を考える脳に切り替わる隙をなくし、問いにフォーカスしたまま加速できます。

③Identify a quest and commit to it(問いを見極め取り組む)

・出てきた問いを見返す
2〜3個の「現状をぶち壊す核心的な問い」を選ぶ
・選んだ核心的な問いに対して解決策を考える

グレガーセン氏は、このプロセスを通じて「問題解決への新たな小道が見えてくる」と表現しています。核心的な問いは、誰もが首を縦に振る問いではなく、少し居心地が悪いが否定しきれない問いになる傾向があります。

オンライン/ハイブリッドでのコツ

オンライン会議・研修で実施する場合は、以下のポイントを押さえると盛り上がりやすくなります。

場面 コツ
問い出し ホワイトボード(Miro/FigJam/Jamboard)に全員同時ポスト
時間管理 画面共有のタイマーで4分を可視化
沈黙への対処 ファシリテーターが「逆にうまくいきすぎている部分は?」などの視点を1つ投下
生成AI活用 終了後、出た問いをAIに入力し類似の問いを追加生成させる

特に最後の生成AIによる問いの横展開は、クエスチョン・バーストの後工程として相性が良く、人間の問いを起点にしたまま、AIに視点を補完してもらう使い方ができます。

クエスチョン・バーストとプロアクションカフェ

クエスチョン・バーストを知ると、プロアクションカフェという対話手法との近さに気づきます。プロアクションカフェは、問題を持っている人(提案者)に対してサポーターが協力して問題解決を進める3ラウンド構成の対話手法で、各ラウンドで話し合う「問い」が決められている点が特徴です。

1ラウンド目:提案者から問題の説明と、前提条件についての質問
2ラウンド目:その問題を解決するために不足していることへの質問
3ラウンド目:エレガントでミニマムな最初の1歩についてのブレスト

クエスチョン・バーストが「とにかく問いを量産して核心を炙り出す」のに対し、プロアクションカフェは「問いをあらかじめ設計してラウンドごとに深める」アプローチです。場の時間・目的・参加者の関係性に応じて使い分けると、対話の質が上がります。

プロアクションカフェについて(外部サイト)

まとめ

クエスチョン・バーストは、ハル・グレガーセン氏が提唱した問いのブレスト手法で、①舞台を準備する、②4分で15〜20個の問いを出す、③核心的な問いを選び取り組む、という3ステップで進めます。生成AIが解決策を瞬時に出せる時代こそ、チームで「何を解くべきか」を問い直す時間の価値が上がっています。会議や研修の冒頭10分で試せる軽量ワークとして、ぜひ取り入れてみてください。


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