仕事にモチベーションが高いほうが生産性が高い、と考えるのはなんとなく普通です。しかし、実際に従業員の仕事への関わり方を定量的に測るには、どのような指標を使えばよいのでしょうか。

本記事では、仕事への没頭度合いを測定するジョブインボルブメント(Job Involvement)という心理尺度を取り上げ、定義・測定方法・職場成果への影響、そしてワーク・エンゲイジメントなど関連概念との違いまでを整理してご紹介します。

ジョブインボルブメントとは?

ジョブインボルブメントは、職務への没頭の度合いを示す心理尺度で、1960〜70年代から組織行動論・産業心理学の分野で研究されてきました。

会社側から見ると組織の活力や生産性に関係するものとして関心が高く、個人の側からは、仕事生活を意義深く、実り多いもの(≒仕事満足)にするものとして重要であるとされています。

これまでの研究では、従業員のパフォーマンスや職務姿勢と正の相関、離転職や欠勤率と負の相関にあることが報告されています (Brown, 1996のメタ分析)。

参考:病院における看護職人材の確保
-リテンションとワークシチュエーション・ワークコミットメントとの関係-
坂戸 渉
http://www.u-hyogo.ac.jp/mba/pdf/SBR/7-2/037.pdf

ジョブインボルブメントの測定(7項目尺度)

ジョブインボルブメントの測定方法として、労働政策研究・研修機構(JILPT)発行の「高業績で魅力ある会社とチームのためのデータサイエンス」には、以下の7つの質問が掲載されています。回答者に各項目を5〜7段階のリッカート尺度で自己評価してもらい、合計スコアで仕事への没頭度合いを把握します。

1. 現在の仕事で時間がたつのも忘れてしまうほど熱中することがある
2. 今の仕事が生きがいである
3. 今の私にとって仕事が生活のすべてである
4. 私にとって最も重要なことが、今の仕事に密接に関連している
5. 今は仕事から得られる満足感が一番大きい
6. 今の仕事にのめり込んでいる
7. 最も充実していると感じられるのは仕事をしているときである
参考:高業績で魅力ある会社とチームのためのデータサイエンス
─職場と仕事を数値化する測定尺度、チェックリスト集─

https://www.jil.go.jp/publication/ippan/hrm-book.html

一見するとワーカホリック(仕事中毒)の尺度にも見えますが、ジョブインボルブメントは「仕事を自分の生活の中心的な関心事として位置付けているか」を測る指標であり、強迫的に働き続ける状態とは区別されています。

ジョブインボルブメントの要因と結果

ジョブインボルブメント 要因と結果モデル図

画像参考:https://www.jil.go.jp/publication/ippan/images/hrm-book-sample3.pdf

これまでの研究では、ジョブインボルブメントは「完璧への強い思い(プロテスタント的労働倫理)」と「欲求が満たされる可能性の知覚」の2つを先行要因とし、職務態度や組織コミットメントに影響を与えるとされています。

一方、実際のパフォーマンスや欠勤への直接効果については、メタ分析の結果でも仮説段階にとどまるという点には注意が必要です。「仕事に没頭している=業績が上がる」と短絡的に結論づけることはできません。

ワーク・エンゲイジメントなど関連概念との違い

ジョブインボルブメントは単独で使われることもありますが、近年はワーク・エンゲイジメントジョブ・クラフティングなどの関連概念と対比されることが増えています。

概念 測定するもの 特徴
ジョブインボルブメント 仕事を生活の中心と捉える度合い 認知的な「関心の中心」を測定
ワーク・エンゲイジメント 活力・熱意・没頭のポジティブな心理状態 健康的な没頭(ワーカホリックと区別)
ジョブ・クラフティング 従業員自身の仕事のつくり替え行動 業務・関係・認知の3次元で行動を把握
組織コミットメント 組織への愛着・存続意思・規範意識 対象は「仕事」ではなく「組織」

ジョブインボルブメントが「仕事に対する関心の中心性」に焦点を当てているのに対し、ワーク・エンゲイジメントは「活力・熱意・没頭」の情動的側面、ジョブ・クラフティングは「従業員の主体的な仕事の組み替え行動」に焦点があります。

組織サーベイでジョブインボルブメントを測る場合は、関連尺度と組み合わせて多面的に把握することが推奨されます。

ジョブインボルブメントを高める組織の施策

ジョブインボルブメントを高めるためには、以下のような施策が有効とされています。

仕事の裁量権・自律性の付与:業務の進め方や判断を現場に委ねることで、仕事を「自分ごと」として捉えやすくする
職務の有意義性の可視化:仕事が顧客・社会にもたらす成果を可視化し、自分の業務の意義を実感できるようにする
スキル活用機会の拡大:個人の強みや専門性が発揮できる業務アサインを増やす
適切なフィードバックの仕組み:1on1や360度フィードバックで、仕事の成果と成長を定期的に言語化する
心理的安全性の確保:発言・提案しても不利益を受けない職場環境を整える

仕事への関わり方を深掘りして学ぶには、関連するワーク・エンゲイジメントの書籍が参考になります。

まとめ

ジョブインボルブメントは、仕事への没頭度合いを測る心理尺度で、職務態度や組織コミットメントと正の関係があることが確認されている指標です。一方、業績や欠勤への直接効果は仮説段階にあり、単独で使うよりはワーク・エンゲイジメントや組織コミットメントなど他尺度と組み合わせて運用するのが現実的です。

組織サーベイで従業員の「仕事との向き合い方」を多面的に把握したい企業様や、エンゲイジメントを高める施策設計の根拠をお探しの人事担当者様にとって、本記事がご参考になれば幸いです。


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