イノベーションを生む対話の4つの要素
こんにちは、HEART QUAKE代表取締役の千葉です。今回はイノベーションを生む対話の要素について、宮本淳子・増田靖両氏の論文(2019)を参照しながら、自分自身の合宿体験と照らし合わせて解説します。
結論:イノベーションを生む対話の4つの要素
先に本論文が示した結論を提示します。イノベーション創出を促進する「対話」型コミュニケーションには以下4つの特徴があるとされます。
・意識と意味の変容連鎖
・共感を生む「語り」
・相互応答性
・「聞き手」の柔軟性
宮本 淳子、増田 靖(2019)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/comm/48/1/48_480101/_article/-char/ja/
論文の概要
本論文は新技術開発現場の事例研究を通じて、イノベーションにつながる対話の特徴を質的に抽出した研究です。単に「対話が大事」と述べるのではなく、どのような対話の性質がイノベーション創出と関連しているかを4要素に整理した点に価値があります。
要素1:意識と意味の変容連鎖
ポイントは変容が連鎖し続けるという動的なプロセス観です。発言の意図がやりとりの中で変化し、お互いの解釈が上書きされ、テーマ自体が組み替わっていく。この連鎖が止まらない場の中からイノベーションの芽が立ち上がります。
筆者自身の合宿でも、あるトピックで一段落した後に別の話題に移り、その先で「そういえば、さっきの話にこれ使えるのでは?」と前のトピックに戻ることで、1回目の対話では出なかったアイデアが生まれることがよくあります。
要素2:共感を生む「語り」
2つめは目的を一つにするための「語り」です。異分野協働はそのままでは「話が噛み合わない状態」が続きやすく、協働の初動で目的を共有できる語りが決定的に重要になります。
筆者の合宿では、参加者が「活動領域が近しいが完全には一致していない専門家」であることがこの要素を満たしています。前提の説明が不要でありながら専門性は異なるため、共感と新規性が両立する対話が可能になります。
要素3:相互応答性
3つめは「語り手」と「聞き手」が入れ替わり続ける性質です。一方的なプレゼンや、権威者の独り舞台ではイノベーション対話にはなりません。
筆者の合宿では、全員がファシリテーションできる状態であること、そして1泊2日という十分な時間が確保されていることで、自然に相互応答が回る設計になっています。このとき下地となっているのが、関係性を通じて積み上がった心理的安全性です。
要素4:「聞き手」の柔軟性
4つめは聞き手側の「開かれた受容」です。自分の専門領域の常識で相手の語りを切り捨てた瞬間、変容連鎖は止まります。
筆者の合宿ではメンバーが3人である点がこの要素を支えます。2人だと対立構造になりやすく、議論が硬直しますが、3人であれば多面的な応答になり、意見の幅が自然と広がります。なお、論文中の事例も3人による対話でした。
社内でイノベーション対話を起こす4条件
論文と筆者の実体験を統合すると、社内でイノベーション対話を起こすための実務的条件は次の4つに整理できます。研修担当者・経営企画・プロジェクトリーダーの方はチェックリストとしてご活用ください。
・活動領域が近しいが完全には一致していない専門家を集めること
・対話のための十分な時間(1日以上が望ましい)を確保すること
・メンバーは2人でなく3人以上にすること
・心理的安全性が構築されていること
特に心理的安全性は、他3条件を機能させるための土台として機能します。会議の場で「変な質問しても馬鹿にされない」「反論しても関係が壊れない」と感じられることがなければ、変容連鎖も相互応答性も立ち上がりません。
心理的安全性を体験で学ぶ研修
心理的安全性は概念として学ぶだけでなく、実際のチーム活動の中でその価値を体感するほうが行動につながります。弊社ではチームビルディングと心理的安全性を体験で学ぶビジネスゲーム「ベストチーム」を提供しています。
イノベーション対話を深めたい方への推薦書
イノベーション対話と組織学習をさらに深く理解したい方には、以下の書籍もおすすめです。
よくある質問
Q. 社内の会議で対話が広がらないのですが、まず何から始めるべきですか
会議の参加者数と時間設計を見直すことをおすすめします。大人数・短時間の場で変容連鎖を起こすのは困難です。3〜5人・1時間以上の対話枠を意識的に設けることが第一歩になります。
Q. 異分野の人を集める合宿は現実的でしょうか
社外合宿が難しい場合は、社内でも「部署をまたいだ3人対話会」を定例化する方法があります。共通の目的を持ちつつ専門が異なるメンバーを意図的に組み合わせることで、似た構造を社内で再現できます。
Q. 心理的安全性の高いチームを育てるにはどうすればよいですか
日常業務では時間がかかるため、短期間で関係性の土台を作るには体験型のチームビルディング研修が有効です。ゲーム形式で協働体験を積むことで、心理的安全性の基礎を短時間で構築できます。
まとめ
イノベーションを生む対話には、論文が示した4要素(変容連鎖/共感を生む語り/相互応答性/聞き手の柔軟性)と、それらを支える4条件(適切なメンバー構成/十分な時間/3人以上の構成/心理的安全性)が求められます。
日常の会議・合宿設計から少しずつ構造を変えていくことで、「アイデアが生まれる場」は計画的に作ることができます。本記事が対話の場づくりのヒントになれば幸いです。
宮本 淳子、増田 靖(2019)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/comm/48/1/48_480101/_article/-char/ja/
