プロジェクトマネジメント研修で新国立問題を取り上げる
2020年オリンピック・パラリンピックのメインスタジアムである新国立競技場の問題がマスコミで多く取り上げられています。
この問題はまさにプロジェクトマネジメントの失敗であると思われます。
2015/7/24現在、テレビでは責任者は誰かということを探しています。
いわゆるプロジェクトマネージャーは誰か、ということになります。
ここでは、プロジェクトマネジメント研修の中の事例として新国立競技場問題をPMBOKを用いて考えてみたいと思います。
PMBOKとは
簡単に書けばPMBOKでは以下の様な項目をマネジメントすることが重要とされています。
PMBOKにみる新国立競技場問題
上図の各項目ごとに新国立競技場問題を考えてみたいと思います。
スコープマネジメント
一言で書けば何を、どこまでやるか?ということですが、現時点では屋根が必要なのか、8万人収容が必須なのか、など基本的なスコープさえ曖昧になっています。
開発技術マネジメント
簡単に書けば成果物(新国立競技場)を開発するための技術について決めていくマネジメントと言えます。
新国立競技場の開発(建築)ではキールアーチ構造という巨大なアーチがコストと工期の長さの要員となっていると言われています。
デザインを重視し、開発の視点からのマネジメントが弱かったといえるでしょう。
タイムマネジメント
これはこれからどうなるか?ということになりますが、オリンピックの1年前にはプレオリンピックと呼ばれるオリンピックと同じ状況下で競技を行わなければならないというものがあるようです。
オリンピックはもちろん、プレオリンピックを実施するためのタイムラインを引く必要があります。
コストマネジメント
言うまでもありませんが、1300億円という予算に対して、2520億円までコストが膨らみました。コストマネジメントの失敗です。
そもそも、多くのオリンピックのメインスタジアムが650億円程度で開発されていましたが、1300億円という予算も(今となっては)おかしいのです。
品質マネジメント
ITの世界ではシステムの不具合の発見と修正のコストが以下の図で表されます。
もう少し早い段階でこのプロジェクトの失敗が判明していたら、旧国立競技場の解体などを遅らせることができたかもしれません。
組織マネジメント
一般的なプロジェクトでは体制図を描くと思うのですが、今回は責任者が不明確ということなので、体制図が描かれていなかったということなのでしょうか。
(もちろんそんなことは無いと思いますのでいづれ世の中に出てくるのでしょう。)
調達マネジメント
新国立競技場の開発にあたって資材の調達が必要ですが、資材の値上がり、円安の影響で総合コストが上ブレしたと報道されています。
この辺りの読み、バッファの取り方にも問題があったように感じます。
コミュニケーションマネジメント
今回のプロジェクトでは関係者間のコミュニケーションがうまくとれていたとは思えません。
このような大きなプロジェクトではステークホルダーが多く登場するため関係者間の合意形成、オールジャパンと呼ばれる全体としての関係性の構築が必須ですが、個人的な意見としてはオールジャパン感をあまり感じません。
リスクマネジメント
リスクへの対応法としてPMBOKでは以下の4つを挙げています。
リスク事象の原因を取り除く
・転嫁
リスクそのものを第三者に移す
・軽減
発生確率とその影響の大きさを低下させる
・受容
リスクを受容する
今回はザハ氏への違約金などリスクを受容することになりましたが、今後は回避、軽減してほしいものです。
まとめ
今まさにプロジェクトマネジメント研修を実施するのであれば新国立競技場の問題をPMBOKベースで考えてみるのは受講者にリアリティを感じてもらうためにとてもよい事例だと思います。
なお、弊社ではプロジェクトマネジメントを疑似体験から学べるゲーム研修を提供しております。詳しくはこちらを御覧ください。