組織力を高めるための「Know who」(ノウフー)
2025年現在、リモートワーク・ジョブ型雇用・副業解禁といった働き方の多様化が進み、チームメンバー同士が”顔を合わせる機会”そのものが減っています。
その結果、多くの企業で聞かれるようになったのが「誰が何を得意としているかわからない」という問題です。組織力を高めるために改めて注目されているのが、今回紹介するKnow Who(ノウフー)という概念です。
組織としての”記憶力”という考え方
早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授の著書『世界の経営学者はいま何を考えているのか』に「組織としての記憶力」という考え方が登場します。
(『世界の経営学者はいま何を考えているのか』より)
たとえばある部門が新規事業の立ち上げに成功したとき、そのノウハウが部門内で閉じずに組織全体に浸透すれば、それは組織の学習効果が高い状態です。逆に、うまくいった理由も失敗した理由も誰にも共有されなければ、次に似た挑戦をする人がまた同じ遠回りをします。
| 記憶力の高い組織 | 記憶力の低い組織 |
|---|---|
| 成功・失敗事例が共有されている | 過去の教訓が属人化して再現されない |
| トップ営業のノウハウが後輩に伝わる | エースが異動した瞬間に成果が落ちる |
| プロジェクト間でナレッジが循環する | 各PJが毎回ゼロから情報収集する |
組織の記憶力の鍵|Know What ではなく Know Who
入山教授は同書で、組織の記憶力の決定的な違いをこう指摘しています。
(中略)
組織にとって重要な事はWhat(何を知っているか)ではなく、Who knows what(誰が何を知っているか)である。
この“Who knows what”を、ノウハウ(Know How)になぞらえてノウフー(Know Who)と呼びます。言い換えれば「誰が何をできるかを知っている状態」です。
| 対比 | 定義 | 重要度の変化 |
|---|---|---|
| Know What | 何を知っているか(知識そのもの) | ネット検索で代替可能に |
| Know How | どうやればいいか(手順・技術) | マニュアル・動画で共有可能 |
| Know Who | 誰が何をできるか(人の配置情報) | 組織内だからこそ蓄積できる |
技術や情報の変化スピードが上がった2025年現在、1人の人間があらゆる情報や経験を保持することは現実的ではありません。だからこそ、”自分が知っていればよい”から”組織内で誰が知っているかを知っていればよい”へとゲームの盤面が変わっています。
Know Whoが効く場面
| 場面 | Know Whoがあると起きること |
|---|---|
| 新規プロジェクト立ち上げ | 「この分野ならあの人だ」とすぐに専門家を巻き込める |
| 顧客からの難しい依頼 | 他部署のエキスパートに相談できる |
| エース離脱時の引き継ぎ | 補えるスキルの持ち主を素早く特定できる |
| リモート中心のチーム編成 | 対面の接点が少なくても強みで人を選べる |
強豪サッカーチームで考えるKnow Who
Know Whoの力をイメージしやすい例として、強豪サッカーチームを考えてみます。
名門クラブには世界トップクラスのドリブラーやヘディングの得意なストライカー、パス精度の高いボランチなど、それぞれ強みの異なる選手が揃っています。
| 選手の強み | チームの活かし方 |
|---|---|
| 左サイドの1対1が強いドリブラー | 左サイドで1対1の状況を意図的に作ってボールを渡す |
| 空中戦が強いストライカー | サイドからのクロスで得点機会を作る |
| 正確なキックができるプレースキッカー | FKやCKのチャンスで必ず任せる |
仲間がお互いの強みを知っているからこそ、パスの出しどころも戦術も組み立てられます。これはまさにWho knows whatの実践です。ビジネスでも全く同じで、メンバーの強みを知っている組織は、強みを”掛け合わせて”成果を出せます。
Know Whoを組織で高める4つの施策
| 施策 | 内容 |
|---|---|
| ①スキルマップ/タレントDB | 各メンバーの経験・資格・得意領域を一覧化 |
| ②ワークスタイルトランプ等の相互理解ワーク | 価値観・働き方の違いを言語化する機会を作る |
| ③社内勉強会・LT(ライトニングトーク) | 各自の専門を短時間でシェアする場を定例化 |
| ④Slack/Teamsの”専門チャンネル”運用 | 誰がどの話題に詳しいかを可視化する |
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まとめ
組織力を高めるために必要なのは、組織としての学習効果であり、その鍵は組織の記憶力です。
そして組織の記憶力の中核は、What(何を知っているか)ではなく、Who knows what(誰が何を知っているか)、つまりKnow Who(ノウフー)にあります。
リモート時代ほど”誰が何をできるか”を言語化し、共有する仕組みを回しましょう。
関連書籍
本テーマをさらに深掘りしたい方におすすめの1冊です。
ピーター・M・センゲ/英治出版/2011年
組織の記憶力・学習効果を考えるうえでの古典。Know Whoの土台となる「組織学習」の全体像を押さえられます。
