新卒採用・中途採用を問わず、現場社員を面接官として参加させる企業は増えています。一方で、面接官ごとに評価基準がバラつくと、Aさんは「とても良い応募者」と判断しても、次の面接官Bさんが「なぜ通したのか」となり、上位職の不要な工数を消費することになりかねません。

本記事では、面接官研修でよく使われるコンピテンシーモデル(5つのコンピテンシーレベル)を紹介し、統一された採用基準を作るための考え方と実務での活用ポイントを整理します。

コンピテンシーモデルとは

コンピテンシーモデルは、応募者の行動を5つのレベルに分類して採用基準の統一化を図る枠組みです。基本的な考え方は次の通りです。

再現性のある過去の成果を見ることで、その人が未来に成果を生み出すであろう可能性を評価する。

参考:コンピテンシー面接マニュアル

応募者の過去の成果の話に「再現性」があるかを分析することで、自社でも同じように「思考・行動」し、活躍できるかを判断します。過去の成功体験は偶然かもしれませんが、行動特性(コンピテンシー)は再現されやすいという前提に立った評価アプローチです。

5つのコンピテンシーレベル

コンピテンシーモデルはレベル1(最低)〜レベル5(最高)の5段階で整理されます。

コンピテンシーモデル 5レベル図

レベル 行動タイプ 定義
レベル5 パラダイム転換行動 まったく新たな、周囲にとっても意味のある状況を作り出す行動
レベル4 創造行動 独自の効果的工夫を加えた行動、独創的行動、状況を打破しようという行動
レベル3 能動行動 明確な意図や判断に基づく行動、明確な理由で選択した行動
レベル2 通常行動 やるべきことをやるべきときにやった行動
レベル1 受動行動 部分的・断片的な行動、行き当たりばったりの行動

レベル5: パラダイム転換行動

最もレベルの高いレベル5はパラダイム転換行動です。新卒採用に限ればほとんど現れないレベルと言えます。

例えば、某大型スーパーで3年間アルバイトをしていたAさん(大学3年生)がアルバイトの時給評価の不透明さに疑問を持ち、社員Dさんと話し合って評価基準がないことを把握。優秀なアルバイトが辞めていくのを危惧し、独自にアルバイト評価基準を作成、店舗マネージャーEさんに「評価基準作成のお願い」を直訴。店舗での試行で定着率向上と売上貢献を確認したのち、エリアMTGで他店舗マネージャーにプレゼンし、複数店舗で採用されたとします。

1アルバイトが大型スーパーのアルバイト評価基準を作成・浸透させるようなイノベーションを起こす行動がレベル5です。

レベル4: 創造行動

レベル5はほとんど現れないため、業界・業種・会社規模にもよりますが、レベル4の創造行動を取れる応募者を採用できれば十分に良い採用と言えます。

先の例で、Aさんが1店舗だけで評価基準を導入できた、または評価基準を紙にまとめて社員に提案したなどもレベル4に該当します。大学の勉学であれば「自分で勉強会を主催し、社会人を呼んで他大学の学生と研究し、発表を行った」といった行動が該当します。

レベル3: 能動行動

明確な目的意識・人に説明できる理由がある行動です。面接では「なぜそれをやったのですか?」「なぜその方法を選んだのですか?」という問いに明確に答えられれば、能動行動と判断できます。

重要なのは「誰かに言われたから」ではなく、自分の意思でその選択をしている点です。「研究したい内容のため、学科外の科目を取得したり独学した」といった行動が該当します。

レベル2: 通常行動

やるべきことを淡々とこなす行動です。能動性や工夫は見られず、現状の中で取れる当たり前の行動に留まります。

「進級のために単位を取るため勉強してきました」「言われた通りにやってきました」といった回答はレベル2に該当し、差別化要素を見いだしにくい行動です。

レベル1: 受動行動

部分的・断片的な行動、他責で場当たり的な行動です。「アルバイト評価が理不尽なので文句を言って辞めた」「留年しないよう単位の取りやすい科目だけを選んだ」など、目的意識が低く、その場しのぎ的な行動が該当します。

多くの企業では、レベル3以上の応募者を採用基準の目安にしています。

自社で求めるコンピテンシーレベルを決める

コンピテンシーレベルが低い人を採用したくないのは当然ですが、自社はどこまでのレベルを求めているかも重要な戦略判断です。

レベル5のみ狙う戦略:組織に強いイノベーションが必要なフェーズで有効。ただし文化になじまず離職するリスクもある
レベル4以上を狙う戦略:新規事業立ち上げや変革を期待するポジションで設定
レベル3以上を狙う戦略:多くの現場職ではこのラインが現実的
レベル2以上を許容する戦略:大規模採用でオペレーションが主業務のケース

採用戦略の段階で、「どのレベルの応募者を何名ずつ入社させたいか」を決めておくと、面接官同士の意識もそろい、評価のブレが減ります。

面接で各レベルを見極める質問例

コンピテンシーレベルを判別するには、行動事例面接(STAR法)と組み合わせた質問が有効です。

Situation(状況):「その時、どんな状況でしたか?」
Task(課題):「何が解くべき課題でしたか?」
Action(行動):「あなたは具体的にどう行動しましたか?」
Result(結果):「結果としてどうなりましたか?」

特に「Action(行動)」と「なぜその行動を選んだのか」の答えから、受動/通常/能動/創造/パラダイム転換のどのレベルに該当するかを判断します。

採用・面接の設計に役立つ書籍

コンピテンシー面接の背景にある採用設計思想を学ぶには、下記書籍が参考になります。

まとめ

面接官研修で統一された採用基準を整備するには、コンピテンシーモデル(5レベル)が有力なフレームワークです。レベル5のパラダイム転換行動から、レベル1の受動行動まで、行動の特徴を明文化し、自社がどのレベルを目指すかを決めておくことで、面接官同士の評価のばらつきを抑え、採用品質を向上できます。


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