セルフケア研修で伝えたい嫌なことがあったときのコラム法
仕事で嫌なことがあった後、頭の中で「もう全部ダメだ」「自分はダメな人間だ」とネガティブな考えが渦巻き、なかなか切り替えられないことがあります。こうしたネガティブ思考のループから抜け出すために、認知行動療法で使われるコラム法は非常に有効なセルフケア手法です。
本記事ではセルフケア研修で伝えたい3つのコラム法と7つのコラム法を解説します。嫌なことがあったときに書き出して自分を客観視することで、ストレスからの回復力(レジリエンス)を高める実践的ツールです。
コラム法とは
コラム法は認知行動療法で使われる手法の1つです。代表的なバリエーションとして3つのコラム法と、より本格的な7つのコラム法があります。
ネガティブな出来事があったときに、その時の気分や思考を記録し、思考に含まれる思い込み(認知の歪み)に対して根拠や反証を挙げ、現実に目を向けて客観的に考え直すためのシンプルなツールです。
コラム法の前提:自動思考と認知の歪み
ネガティブな出来事が起きたとき、私たちは瞬時に何かを感じ、考えます。この即座に浮かぶ考えを自動思考と呼びます。自動思考には以下のような認知の歪みが含まれていることがあります。
・全か無か思考: 完璧でなければ意味がないと決めつける
・一般化のしすぎ: 一度の失敗で「いつもダメ」と結論づける
・心のフィルター: ネガティブな一面だけに注目する
・拡大解釈・過小評価: 悪い面を誇張し良い面を無視する
・べき思考: 「〜すべき」「〜してはいけない」で自分を縛る
これらの歪みに自分で気づき、本当にそうなんだっけ?と問い直すことが、コラム法の本質です。
3つのコラム法

3つのコラム法は、最もシンプルなバリエーションです。
1. 状況
ネガティブな出来事となっている状況を書き出します。ポイントは5W1Hの形で、できるだけ具体的に書くことです。
例: 「水曜日の午後3時、会議室で上司に報告書を提出したところ、『こんなものを持ってくるな』と言われた」
2. 気分
現在の気分を強さの度合いとなる数字を含めて書き出します。数字は主観的なもので構いません(0〜100で表記するのが一般的)。
例: 「落ち込み 80%、怒り 60%、不安 70%」
3. 自動思考
そのときに頭に浮かんだ考えやイメージを、その確信度とともに書き出します。
例: 「自分はダメな社員だ(確信度85%)」「上司は自分を嫌っている(確信度60%)」
3つのコラム法の効果
この3項目を書き出すだけで、頭の中を整理して自分自身を客観視する効果があります。気分や思考を言語化すると、頭の中で渦巻いていたものが整理され、気持ちが落ち着いてきます。
3つのコラム法は「気づき」のツールとして、職場でも簡単に実施できる点が魅力です。
7つのコラム法

参考: 厚生労働省ホームページ 自動思考修正表(厚労省リンク)
7つのコラム法は、3つのコラム法に解決志向の4項目を追加した、より本格的なフォーマットです。
1〜3. 状況・気分・自動思考
3つのコラム法と同じです。
4. 根拠
自動思考を裏づける根拠となる事実のみを書き出します。主観や解釈ではなく、客観的に確認できる事実だけを書くのがポイントです。
例: 「報告書の数字に誤りが2箇所あった」「上司は普段より強い口調で言った」
5. 反証
自動思考に書いたことに反する(矛盾する)事実を書き出します。「ダメな社員だ」に反する事実を思い出して書きます。
例: 「先月は上司から感謝された」「他のプロジェクトは予定通り進んでいる」「同僚から相談を受けた」
6. 適応的思考
根拠と反証を「しかし」や「だが」で繋いで、新しい考え方を記入します。
例: 「報告書に誤りがあって上司に叱られた。しかし、先月は感謝され、同僚からも頼られている。今回は誤りを修正すれば良いだけで、自分が全面的にダメな社員というわけではない」
7. 今の気分
適応的思考を経た後の気分の変化を記入します。
例: 「落ち込み 80% → 40%」「怒り 60% → 30%」「不安 70% → 35%」
気分の数値が下がっていれば、コラム法が機能した証拠です。
3つと7つの使い分け
・3つのコラム法: 現状分析に特化したフォーマット。手軽に書けるので、日常のセルフチェック・日記代わりに向く。
・7つのコラム法: 解決策に向けたフォーマット。じっくり取り組む時間がある時や、繰り返し同じネガティブ思考に陥る時に有効。
セルフケア研修では、まず3つのコラム法で自動思考を見える化する体験をしてもらい、希望者に7つのコラム法を紹介する流れが現実的です。
セルフケア研修での活用
コラム法をセルフケア研修に組み込む際のポイントを整理します。
・最近あった軽度のネガティブ出来事を題材にワークする(重度の出来事は避ける)
・書き出しはプライベートに保つ(他人に見せる必要はない)
・希望者のみ共有(シェアは強制しない)
・研修後の継続使用を促す(3つのコラムは職場手帳でも実施可)
・必要時は産業医・カウンセラーへの相談を案内する
他のセルフケア手法
コラム法と併せて、他のセルフケア手法も組み合わせると効果的です。
・セルフケアのための自律訓練法
・対人ストレスに対する3種類のコーピングと具体例
・本質的なストレス対処法 SOC
・セルフケア研修で使えるストレス点数表
・メンタルヘルス対策で行うべき3つの予防
・燃え尽き症候群の診断テスト
関連研修のご紹介|「攻略!きみのストレスを発見せよ!」
コラム法はセルフケアの具体的な技法ですが、その前段階である「自分のストレサーを言語化する」ステップが膳ると、コラムに書き起こせる出来事自体が見えなくなります。「攻略!きみのストレスを発見せよ!」は、参加者同士がカードを使って自分のストレサーを洗い出し、他者の視点を借りて気づいていなかったストレス要因を言語化するセルフケアゲームです。コラム法を研修で扱う前に、まず自分のストレサー自体を達し分けるウォーミングアップとして最適です。
セルフケアゲーム「攻略!きみのストレスを発見せよ!」

研修のセルフケアパートに体験型ワークを取り入れたい方は以下のフォームよりお気軽にお問い合わせください。
まとめ
コラム法は認知行動療法に基づく、ネガティブな思考から抜け出すためのシンプルなセルフケア手法です。3つのコラム法は現状整理に、7つのコラム法は解決志向に適しています。
セルフケア研修に取り入れることで、従業員が嫌なことに直面した時に自分で自分を支える力(レジリエンス)を高められます。制度としてのメンタルヘルス対策に加えて、個人が使える実践ツールとして、コラム法をぜひ伝えてみてください。
