AIの急速な進化と労働市場の構造変化を受けて、「これから必要な能力は何か」を国として示したレポートが未来人材ビジョンです。経済産業省が令和4年(2022年)5月に発表したもので、2050年を見据えた人材育成の方向性が整理されています。

本記事では、未来人材ビジョンが示す2050年に必要とされる能力TOP3と、2015年ごろまで重視されてきた能力との違い、そしてこれらの能力を個人・組織として伸ばすアプローチを整理します。

未来人材ビジョン 表紙

未来人材ビジョンのレポートは経済産業省のウェブサイトで公開されており、全文を閲覧できます。

未来人材ビジョンにみる仕事に必要な56の能力

未来人材ビジョンでは、意識・行動面を含めた仕事に必要な能力を56項目に整理しています。これは独立行政法人労働政策研究・研修機構「職務構造に関する研究II」を参考にしたリストです。

未来人材ビジョン 56項目のスキルリスト

これは現時点で仕事に必要な能力の一覧であり、56項目すべてが今後も同じ重要度で求められるわけではありません。2050年に向けて必要とされる能力は、下記のように大きく変化していきます。

参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構「職務構造に関する研究II」 (全345ページ/約760MB)

2050年に必要な能力TOP3は「問題発見力・予測・革新性」

未来人材ビジョンでは、56項目の中から2015年に必要とされた能力TOP102050年に必要とされる能力TOP10を比較し、求められる能力が大きくシフトしていることを示しています。

順位 2015年(事務系スキル中心) 2050年(創造系スキル中心)
1位 注意深さ・ミスがないこと 問題発見能力
2位 責任感・まじめさ 的確な予測
3位 信頼感・誠実さ 革新性 (新しいモノ・サービス・方法を生み出す力)

2015年ごろは注意深さ・責任感・信頼感といった「事務的な基礎」が上位だったのに対し、2050年は問題発見能力・的確な予測・革新性といった「創造的な高次スキル」が上位にくると示されています。

2050年に必要な能力TOP10 未来人材ビジョン

近い将来や現在の問題を見つけ、それを解決できるモノ・サービスを開発できる人が強く求められるという内容です。AIが事務的な作業や基礎的な判断を代替していく中で、人間側には「そもそもどんな問題を解くべきか」を設定する能力「まだないものを生み出す能力」が求められるようになります。

なぜ求められる能力が変わるのか

能力シフトの背景には、以下のような構造変化があります。

AI・自動化の進展:定型的な事務作業や判断業務はAI/RPAで代替される方向
人口減少と労働生産性:少ない人員で付加価値を生む必要があり、1人あたりの創出価値の引き上げが必須
社会課題の複雑化:気候変動・超高齢化・地政学的リスクなど、前例のない課題に対して「そもそも何が問題か」を定義する力が必要
イノベーション競争:既存プレイヤーと同じことをしていては勝てず、新しい価値創出が競争力の源泉

これらは個別企業でも同様で、既存業務を効率化するだけでなく、「新しい事業・サービスを作れる人材」を社内で育成する必要性が高まっています。

問題発見力・革新性を高めるアプローチ

創造的なスキルは座学だけで伸ばすことが難しく、課題設定と試行錯誤を繰り返す体験を組み込むことが有効とされています。具体的には以下のような育成アプローチがあります。

リベラルアーツ教育:専門外の領域に触れることで問題発見の視野を広げる
デザイン思考・アート思考:顧客起点・ビジョン起点で課題を発見する手法を学ぶ
ビジネスゲーム/シミュレーション:疑似的なビジネス環境で意思決定を繰り返し、試行錯誤の中から予測と判断の感覚を身につける
新規事業提案制度:実業務の中で自ら課題を見つけ、解決策を提案する経験を積む
リスキリング支援:データサイエンス・AI・DXなど時代に合ったスキル習得を継続的にサポートする

まとめ

未来人材ビジョン(経済産業省, 2022年)が示した2050年に必要な能力は、問題発見能力・的確な予測・革新性という創造的なスキルに大きくシフトしています。2015年ごろまで重視されてきた「注意深さ・責任感・信頼感」といった事務的な基礎は引き続き重要ですが、それだけでは将来の労働市場で競争力を持ちにくくなります。

個人・組織ともに、体験学習型のトレーニングや新規事業の機会創出を組み合わせて、創造的な能力の育成を計画的に進めていくことが重要です。

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