セクシャルハラスメント研修で伝えたいSOGIとは?

2020年6月施行の厚生労働省パワハラ防止指針でSOGIハラスメントが明記されたように、「ホモ」などの蔑称やアウティングは許されません。
セクシャルハラスメント研修でSOGIを学ぶことで、多様な性のあり方を理解し、職場でのハラスメントを効果的に予防できます。
目次
1. SOGI(ソジ)とは
2. SOGIとLGBTQ+の違い
3. SOGIハラスメント(SOGIハラ)とは
4. なぜセクシャルハラスメント研修でSOGIを伝えるのか
5. 研修で SOGI をどう伝えるか — 4つのポイント
6. セクハラ・パワハラ研修で併用できる体験型ツール「ハラスメントフラグ」
ハラスメント研修で SOGI(ソジ) という言葉を取り上げる企業が増えています。2023年の LGBT理解増進法の施行、2020年のパワハラ防止指針で SOGIに関するハラスメント が明記されたこと、そしてダイバーシティ&インクルージョンを経営の柱に据える企業が広がってきたことが背景です。
今回はセクシャルハラスメント研修で伝えたい SOGIというテーマで、SOGIとは何か、LGBTQ+との関係、SOGIハラスメントの具体例、そして研修でSOGIをどう伝えればよいかまでを整理していきます。
SOGI(ソジ)とは
SOGI(ソジ)はSexual Orientation and Gender Identityの頭文字で、「性的指向と性自認」を意味します。これは特定の人だけではなく全員が持つ属性であり、LGBTQ+(性的マイノリティの総称)とは別の概念です。性的指向は「どの性を好きになるか」、性自認は「自分をどの性と認識しているか」を指し、両者は独立した軸として組み合わさります。

SOGI は Sexual Orientation and Gender Identity の頭文字を取った用語で、日本語では「性的指向と性自認」と訳されます。
SO=Sexual Orientation(性的指向)
SO は Sexual Orientation、日本語で性的指向です。どのような性の相手を好きになるか、恋愛や性愛の感情がどの性に向くかを指す概念です。
・異性愛(ヘテロセクシュアル)
・同性愛(ゲイ/レズビアン)
・両性愛(バイセクシュアル)
・無性愛(アセクシュアル)
などの方向性を示すのが Sexual Orientation にあたります。
GI=Gender Identity(性自認)
GI は Gender Identity、日本語で性自認です。自分自身の性別をどのように認識しているか、を指します。
・出生時に割り当てられた性別と性自認が一致している(シスジェンダー)
・出生時に割り当てられた性別と性自認が一致していない(トランスジェンダー)
・男女いずれかに限定されない(Xジェンダー/ノンバイナリー)
などが Gender Identity にあたります。
SOとGIは独立した概念
重要なのは、SO(性的指向)とGI(性自認)は別の軸であるということです。性自認が男性で性的指向が女性に向く人もいれば、性自認が女性で性的指向も女性に向く人もいます。SOとGIの組み合わせで多様なあり方が存在します。
ハラスメント研修では、この2つを明確に分けて伝えることで、「性的指向と性自認を混同した差別的な言動」を予防しやすくなります。
SOGIとLGBTQ+の違い
SOGIとあわせて語られる概念に LGBTQ+ があります。この2つの関係を整理しておきましょう。
LGBTQ+ は性的マイノリティを表す総称で、Lesbian(レズビアン)、Gay(ゲイ)、Bisexual(バイセクシュアル)、Transgender(トランスジェンダー)、Queer/Questioning(クィア/クエスチョニング)、そしてその他の多様なあり方を「+」で含意する表現です。
一方で SOGI は、マイノリティかマジョリティかに関係なく、すべての人が持つ属性を指す中立的な概念です。「異性愛の男性」も「両性愛の女性」も、同じように SOGI を持っています。
| 項目 | SOGI | LGBTQ+ |
|---|---|---|
| 対象範囲 | すべての人(全員が持つ属性) | 性的マイノリティ |
| 意味 | 性的指向(SO)と性自認(GI)の組み合わせ | L/G/B/T/Q+ の性的マイノリティ総称 |
| 研修での効果 | 参加者全員の自分ごと化 | 多様性・少数者理解 |
| 主な法的位置づけ | パワハラ防止指針 (2020年)でSOGIハラ明記 | LGBT理解増進法 (2023年) |
「誰にとっても自分ごと」になるのがSOGI
LGBTQ+ という言葉を使うと、「自分はマイノリティではないから関係ない」と受け止めてしまう人が出てきます。対して SOGI は、参加者全員が「自分の SOGI は何か」と考えられるため、ハラスメント研修の中で自分ごと化を促しやすい概念です。
SOGI と LGBTQ+ は対立する考え方ではなく、前者は「全員に通用する軸」、後者は「多様なあり方の総称」として補完的に使うのが適切です。
SOGIハラスメント(SOGIハラ)とは
職場における SOGI に関する嫌がらせを SOGIハラスメント(SOGIハラ) と呼びます。2020年6月に施行された厚生労働省のパワーハラスメント防止指針において、SOGIハラスメントやアウティングがパワーハラスメントに該当しうるものとして明記されました。
SOGIハラの具体例
代表的な SOGIハラには、以下のようなものがあります。
・性的指向や性自認を揶揄したり、侮蔑的な呼び方をする(「ホモ」「オカマ」などの蔑称を含む発言)
・「男らしくない」「女らしくない」などと押しつける発言
・本人の同意なく性的指向や性自認を第三者に暴露する(アウティング)
・カミングアウトを強要する、あるいは拒否する
・結婚や恋愛に関する詮索(「彼女いないの?」「結婚しないの?」等の繰り返し)
・SOGIを理由とした配属・昇進・業務配分の不利益取り扱い
・SOGIを理由とした無視や仲間外し
特にアウティングは、本人の生命や健康、キャリアに重大な影響を及ぼすことがあり、過去には裁判にまで発展した事例もあります。2015年の一橋大学アウティング事件は、SOGIハラの深刻さを社会に知らしめた事案として知られています。
セクハラ指針との関係
SOGIに関するハラスメントは、パワーハラスメント防止指針のほか、男女雇用機会均等法に基づくセクシュアルハラスメント指針の中でも、被害者の性的指向や性自認にかかわらずセクハラの対象となり得ることが明記されています。
つまり、セクシャルハラスメント研修で SOGI を扱うのは 法令上の要請に沿った取り組みでもあるということです。
なぜセクシャルハラスメント研修でSOGIを伝えるのか
従来のセクハラ研修では、「異性に対する不適切な言動を避ける」という前提で講義が組み立てられがちでした。しかし SOGI の視点を入れることで、研修の射程は大きく広がります。
1. 受講者全員が当事者になる
SOGI は全員が持っている属性です。「自分の SOGI は何か」と問いかけることで、受講者は自分ごととしてハラスメント防止を考えられるようになります。「関係ない話」として聞き流されてしまう状態を防げるのが、SOGIを取り上げる最大の意義です。
2. 無自覚な差別言動が予防できる
「男のくせに」「女なんだから」といったジェンダー規範に基づく発言は、受け手の SOGI によっては深刻な苦痛になります。SOGIの知識があれば、自分の価値観を他者に押し付けることのリスクを想像しやすくなります。
3. セクハラとSOGIハラを分断しない
セクハラ、パワハラ、SOGIハラは法律上の枠組みこそ異なりますが、現場では重なり合って発生することが多いものです。セクハラ研修のなかで SOGI を扱うことで、根底にある「性に関する人権意識」を一体で伝えることができます。
4. 心理的安全性の基盤になる
SOGI を尊重する職場は、カミングアウトするかどうかを本人が自由に選べる職場でもあります。余計なストレスを抱えずに働けることが、結果としてエンゲージメントや生産性の向上につながります。
研修で SOGI をどう伝えるか — 4つのポイント

SOGI は言葉だけを紹介しても腹落ちしません。研修の場で扱う際のコツを整理します。
用語の正確な定義から入る
SO と GI は別軸であること、それぞれの定義を正しく伝えることがスタート地点です。本記事冒頭の図のように、2軸で整理して見せると直感的に理解してもらえます。
「当事者 vs 非当事者」の二分法で語らない
「LGBTの方がもし社内にいたら」という語り口は、参加者を「自分たち vs あの人たち」に分断してしまいます。「全員に SOGI がある」という前提で、誰もがマジョリティ側にもマイノリティ側にもなり得ると伝えるのが望ましいアプローチです。
アウティング厳禁のルール化
研修中の事例ワークやグループディスカッションでは、アウティングは起きてはならない行為であることを最初に明確に宣言しましょう。参加者が身近な人を想起しても、その人の SOGI を共有してはならないことを徹底します。
グレーゾーン事例で議論する
SOGIハラは明らかな侮蔑だけでなく、悪気のない発言や慣習が加害になるケースも多くあります。グレーゾーン事例を題材にして、「これはアウトかセーフか」「なぜそう感じるか」を参加者同士で議論する形式が効果的です。
セクハラ・パワハラ研修で併用できる体験型ツール「ハラスメントフラグ」
『ハラスメントフラグ』はカードゲーム型のハラスメント体験研修ツールです。50枚のシーンカードをホワイト/ライトグレー/ダークグレー/ブラックの4段階で評価しながら、参加者同士で「これはハラスメントか否か」を議論します。法律論だけでは伝わらない受け手の感じ方を体験として学べるため、座学型のハラスメント研修を補完する位置づけで活用できます。
「座学だけではなく、体験を通じてパワハラやセクハラを学んでほしい」という担当者の方に、ハートクエイクではカードゲーム型研修『ハラスメントフラグ』(正式名: ハラスメントフラグカード版)をご提供しています。

ハラスメントフラグは、職場で実際に起こり得るグレーゾーンの言動を題材にしたカードゲーム型研修です。参加者は場に示されたシーンカードを読み、「これはハラスメントか否か」を各自で判断し、周囲と議論していきます。
パワハラ・セクハラを中心に、マタハラも含む複数のハラスメント類型のシーンが収録されており、法律論だけでは伝わりにくい「受け手がどう感じるか」を体験として理解できるのが特徴です。
ハラスメントフラグの基本スペック
・カード構成: 50枚×4段階(ホワイト/ライトグレー/ダークグレー/ブラック)でハラスメント度を評価
・所要時間: 1〜2時間(振り返りを含めた目安)
・参加人数: 3名〜100名超(少人数から全社研修まで対応可能)
・実施形式: 対面(カード版) / 講師派遣も対応
・対象: 新入社員研修〜管理職研修まで幅広く活用可能
・想定テーマ: パワハラ・セクハラを中心にマタハラ等を含む複合シナリオ(SOGIハラは直接収録されていません)
よくあるご質問(FAQ)
Q1. SOGIとLGBTQ+はどう使い分ければよいですか?
SOGIは「全員が持っている性に関する属性の軸」を指す中立的な概念、LGBTQ+は「性的マイノリティの総称」を指す概念です。研修で自分ごと化を促したい場面では SOGI、多様性の広がりを伝えたい場面では LGBTQ+、と使い分けるのが実務的です。両者は排他ではなく補完関係にあります。
Q2. セクハラ研修でSOGIを扱うのは法律上の義務ですか?
SOGIハラ単独を直接義務づける法律はありませんが、2020年のパワハラ防止指針でSOGIに関するハラスメントが明記され、男女雇用機会均等法のセクハラ指針でも被害者の性的指向・性自認を問わずセクハラに該当し得ることが示されています。SOGIを扱わないセクハラ研修は、法令の射程から外れてしまう可能性があります。
Q3. アウティングとは何ですか?
アウティングとは、本人の同意なく性的指向や性自認を第三者に暴露する行為です。本人のキャリアや健康、命にかかわるほど深刻な影響を与えることがあり、パワハラ防止指針でも明確に禁じられる行為のひとつに位置づけられています。研修運営時は、グループワーク中に参加者同士でアウティングが起きないようルールを徹底する必要があります。
Q4. SOGIを扱う研修はどのくらいの規模で実施できますか?
SOGIに関する講義パートは数十名〜数百名規模でも実施可能ですが、グループワークや事例ディスカッションを組み込む場合は 10〜30名程度が対話のしやすい規模です。SOGIの用語解説は講義で行い、そのあとにパワハラ・セクハラを含むハラスメント全般の体験ワーク(カードゲームやロールプレイ等)を組み合わせる構成が、学習効果の面でも時間配分の面でも実務的なパターンです。
ハラスメント研修導入をご検討の方へ
研修でのご活用を検討されている方は、下記フォームよりお気軽にお問い合わせください。
詳細な資料、お見積りをご希望の方はまずは下記より資料請求をお願いします。
※同業他社様からのお問い合わせはご遠慮ください。
まとめ
SOGI は Sexual Orientation(性的指向) と Gender Identity(性自認) の頭文字を取った用語で、すべての人が持っている性に関する属性を示す中立的な概念です。LGBTQ+ が性的マイノリティの総称であるのに対して、SOGI は「自分の性をどう認識し、どの性に惹かれるか」を誰もが考えられる軸を提供します。
セクシャルハラスメント研修で SOGI を扱うことは、参加者全員を当事者にし、無自覚な差別言動を予防し、セクハラ・パワハラ・SOGIハラを根底から一体で捉えるための有効な切り口です。
SOGI を正しく理解するための講義だけでなく、ハラスメントフラグのような体験型の研修ツールも活用しながら、誰もが安心して働ける職場づくりを進めていただければと思います。ハラスメント研修の企画でお悩みの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
