従業員満足度調査を検討している人事・経営企画の方向けに、学術研究で確立された「全般的職務満足感」の基本を整理します。1991年に日本労働研究機構が作成した6項目尺度、職位・職種との関係、そして満足度を高める3つの要因(達成/意義/教育・研修)までを解説します。

従業員満足度(ES)調査を独自設計する前に、既に確立された尺度と知見を踏まえることで、調査設計の質と解釈の妥当性を高められます。

「従業員満足度」と「全般的職務満足感」の違い

一般に「従業員満足度」「ES(Employee Satisfaction)」として使われる概念は、研究分野では「全般的職務満足感」または「全体的職務満足感」と呼ばれます。

Loche(1969)の古典的な定義は以下の通りです。

自分の職務が自分の価値観と完全に満たしているとの知覚に基づく、
良い感情的な状態
Loche (1969)

やや堅い表現ですが、要するに「自分の価値観に合っていると感じ、前向きな気分でいられる状態」を指します。最近よく聞く「従業員エンゲージメント(EES)」とは概念が少し異なり、エンゲージメントが「没入・熱意・活力を伴う仕事への関与」を指すのに対し、職務満足感は認知的・感情的な満足の総合評価に近いと整理できます。

全般的職務満足感を測る6項目の尺度

日本労働研究機構が1991年に作成した6項目の尺度は、今でも広く用いられています。

1. 今の仕事が好きである
2. 現在の仕事に満足している
3. 今の仕事に喜びを感じる
4. 今の仕事に誇りを感じる
5. 朝、仕事に行くのが楽しい
6. 今の仕事にやりがいを感じる

参考: 『好業績で魅力ある会社とチームのためのデータサイエンス』
https://books.rakuten.co.jp/rb/14910975/

各項目を5〜7段階のリッカート尺度で回答してもらい、平均値で「全般的職務満足感」を算出するのが一般的です。独自に質問を作るより、この6項目をそのまま使うほうが、既存の研究・他社事例との比較が可能になり解釈が容易になります。

職位が上がると全般的職務満足感も上がる(役職との関係)

これまでの研究で、職位が上がると全般的職務満足感も上がることが確認されています。

職位と全般的職務満足感の関係
画像参照先: 労働政策研究・研修機構(JILPT)報告書0147_02-2.pdf

上図を見ると、左側の役職が上がるにつれて、右側の全般的職務満足感のMEAN(平均値)が上昇しているのがわかります。

この傾向の解釈には注意が必要です。「昇進すれば満足度が上がる」という単純な因果ではなく、以下の要因が絡み合っていると考えられます。

裁量・権限の増加による自己決定感の向上
報酬・処遇の相対的改善
生存者バイアス:満足度が低い人は先に離職しやすく、上位職には満足度が高い人が残りやすい

職種別の傾向:事務職の満足度はやや低い

職種別に見ると、事務職の全般的職務満足感は他の職種に比べるとやや低いことが示されています。

職種別の全般的職務満足感
画像参照先: 労働政策研究・研修機構(JILPT)報告書0147_02-2.pdf

事務職は成果の可視化が難しく、業務の定型度が高い傾向があります。「達成感を得にくい」「仕事の意義を感じづらい」「成長機会が限定的」といった構造的要因が影響している可能性があります。

全般的職務満足感を高める3つの要因:達成・意義・教育/研修

職場と仕事の現状を多面的に測るワークシチュエーションというテストと、全般的職務満足感との関係を分析した結果、以下の傾向が確認されています。

全般的職務満足感とワークシチュエーションの相関
画像参照先: 労働政策研究・研修機構(JILPT)報告書0147_02-2.pdf

全般的職務満足感と最も相関が高いのは、「達成」「意義」「教育・研修」の3要素でした。それぞれの定義は以下の通りです。

達成: 仕事で自分の力を発揮し、達成感を得ることができる
意義: 仕事は組織、自分の人生、社会に関係する有意義なものである
教育・研修: 必要な研修や個人のキャリアに役立つ教育が受けられる

参考: 『好業績で魅力ある会社とチームのためのデータサイエンス』

つまり、報酬・福利厚生よりも「自分が成長し、意味のある仕事をし、力を発揮している感覚」が満足度を規定するということです。これはハーズバーグの動機づけ-衛生理論とも整合する結果で、満足を生むのは動機づけ要因(達成・成長・仕事そのもの)であることが改めて示唆されています。

人事施策への応用:3つの要因をどう現場に実装するか

「達成・意義・教育/研修」の3要因を人事施策に落とし込むポイントを整理します。

①達成感を生む仕事設計
小さくても成果が可視化される目標・マイルストーンを設定し、達成時のフィードバックを意図的に行う。OKR・KPIツリー・週次振り返りなどの仕組みが有効です。

②仕事の意義の明確化
経営理念・パーパスと個人業務の接続を見える化する。1on1で「この仕事が組織の目標/社会とどうつながるか」を対話する場を設ける。

③教育・研修機会の充実
キャリアパスに紐づいた段階的な研修設計を用意する。個人の成長実感が満足度を押し上げる強い要因となります。特に事務職・若手・中堅の満足度対策として研修投資の優先度は高いです。

強みを活かす仕事設計:クリフトンストレングス

職務満足度は自分の強みが活かせる業務との整合によって大きく左右されます。弊社では、個々の資質を可視化する「クリフトンストレングス」を活用した研修を提供しています。

クリフトンストレングスは、34の資質から自分のトップ5を把握し、チーム内で強みを共有することで、役割分担・仕事の裁量設計を強み起点で再構築する研修です。役職別の職務満足度を改善する打ち手としても活用いただけます。

詳細はクリフトンストレングス研修紹介記事もご覧ください。

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従業員満足度に関するよくある質問

Q. 従業員満足度調査は何名規模から意味がありますか?
A. 統計的な有意性を確保するには1部署あたり30名前後が目安。小規模組織では定量と定性(1on1や面談)を組み合わせるのが現実的です。

Q. 満足度とエンゲージメントはどちらを測るべきですか?
A. 満足度は「現状認識」、エンゲージメントは「仕事への熱意・没入」を測る異なる指標です。目的に応じて使い分けるか、両方をセットで測るのが理想です。

Q. 6項目尺度の結果はどう解釈すればよいですか?
A. 平均値を他社ベンチマーク(業界調査・上場企業平均)と比較。加えて個別項目の差(例: 「やりがいは高いが満足は低い」)に注目すると施策の方向性が見えます。

まとめ

全般的職務満足感は、6項目の確立された尺度で測定可能であり、職位との正の相関職種別の傾向達成・意義・教育/研修の3要因との強い相関が研究で明らかになっています。独自設計の前に既存の研究知見を踏まえることで、調査設計の質と施策のターゲティング精度が大きく上がります。

関連テーマとしてキャリア安全性とは?ワーク・エンゲージメントを高める新視点心理的安全性を知り、高めるゲーム型研修「ベストチーム」もあわせてご覧ください。

参考: 『好業績で魅力ある会社とチームのためのデータサイエンス』
https://books.rakuten.co.jp/rb/14910975/

画像参照先: 労働政策研究・研修機構(JILPT)報告書0147_02-2.pdf


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