ファシリテーターの6つの役割と難しさ
今回はファシリテーターの役割というテーマで書いてみたいと思います。
弊社のビジネスゲームへお問い合わせいただくお客様の中でも「ファシリテーションは誰でもできますか?」というご質問をいただくことがあります。
もちろん弊社ではゲームキットと合わせてパワーポイント形式の運営スライド・マニュアルや、動画形式のファシリテーター向けマニュアルをご用意しておりますので、事前準備は必要ですが、基本的にはどなたでもファシリテーションを行うことは可能です。(下図参照)
しかし、このような質問をいただくことがあるということは、やはりファシリテーターを行うことへの困難さを感じている方が多いということでしょう。そこで今回は、下記の論文を紹介しながらファシリテーターの役割と困難さについてまとめてみたいと思います。
安斎勇樹 青木翔子 2018
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjet/advpub/0/advpub_42073/_pdf/-char/ja
論文では企業内人材育成を始めとして、学校教育やまちづくりなど様々なシーンでファシリテーションを行っている初心者〜熟達者(これは経験年数で区切っている)ファシリテーターにアンケートとインタビューを実施し、ファシリテーションのどこに困難さを感じているかを調査し、その結果をまとめています。
ファシリテーターが困難さを感じる2つのフェーズ
画像参照:ワークショップ実践者のファシリテーションにおける困難さの認識 安斎、青木 図1より
まず、ワークショップ全体を開始前、イントロダクション、アイスブレイク、サブ活動、メイン活動、発表、振り返り、終了後の8つのフェーズに区切った場合、上図の通り、メイン活動と振り返りにより困難さを感じている方が多いことがわかります。
ちなみに、弊社のビジネスゲーム研修の場合は、ファシリテーターの方が難しさを感じるのは、ゲームのルールの説明にあたるサブ活動と、ゲームと現実社会をつなげる振り返り部分になると思います。
ゲームのルールは間違って伝えたり、伝え漏れたりすると場合によってはゲームとして成立しない場合がありますし、振り返りが弱いと「楽しかった」だけで終わってしまいます。
※ただし、楽しい研修は気づきが多いということがわかっています。詳しくは過去記事を御覧ください。
「楽しい研修」は学べるのか?データで見る「楽しさ」と「気づき」
ファシリテーターの難しさからみる6つの役割
論文ではさらに、ファシリテーターへのインタビューを通して、ファシリテーションの困難さを6つのグループにまとめています。
⇒雰囲気作りや、参加者との信頼関係づくりなど
2.適切な説明・教示
⇒参加者に合わせたイントロダクション、伝え方など
3.コミュニケーションの支援
⇒議論が意図した方向に進まない、参加者の意見を引き出せないなど
4.参加者の状態把握
⇒議論の様子を把握できないなど
5.不測の事態への対応
⇒参加者の質問に答えられない、発表に対するコメントが思い浮かばないなど
6.プログラムの調整
⇒時間調整を行うことが難しい、プログラムをリデザインすることが難しい
その他
⇒自分の心理的な課題を制御できないなど
引用:ワークショップ実践者のファシリテーションにおける困難さの認識 安斎、青木 表3より
個人的にはこの6つのグループが理想のファシリテーターに求められる役割なのではないか?と思いました。
具体的には、メイン活動に向けて場を暖め、わかりやすい説明で、適度な介入でコミュニケーションを活性化し、参加者の状態を把握し、その様子を発表時のコメントと絡めて話し納得感を醸成し、場の盛り上がりに合わせてプログラムや時間をリアルタイムで調整していく、という形でしょうか。
研修ファシリテーターに特徴的な困難さ
また、研修などの企業内人材育成のファシリテーターの特徴としては、他のシーンのファシリテーターに比べて動機付け・場の空気づくりに困難さを感じていること下図を見るとがわかります。
画像参照:ワークショップ実践者のファシリテーションにおける困難さの認識 安斎、青木 図2より
これは、
とされています。
つまり、研修ファシリテーターにはより一層、動機付け・場の空気づくりのスキルが求められるということでしょうか。
この点で言えば、弊社が提供しているビジネスゲームはゲームというコンテンツ自体が人をワクワクさせる力を持っていると思いますので、ファシリテーターが無理に盛り上げなくても、ゲームで使う備品を見せ、ルールを説明する中で、他のワークショップ型研修と比べると自然と場を温めることがやりやすいと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回はファシリテーターが感じている困難さから、ファシリテーターの役割について考えてみました。
⇒雰囲気作りや、参加者との信頼関係づくりなど
2.適切な説明・教示
⇒参加者に合わせたイントロダクション、伝え方など
3.コミュニケーションの支援
⇒議論が意図した方向に進まない、参加者の意見を引き出せないなど
4.参加者の状態把握
⇒議論の様子を把握できないなど
5.不測の事態への対応
⇒参加者の質問に答えられない、発表に対するコメントが思い浮かばないなど
6.プログラムの調整
⇒時間調整を行うことが難しい、プログラムをリデザインすることが難しい
その他
⇒自分の心理的な課題を制御できないなど
引用:ワークショップ実践者のファシリテーションにおける困難さの認識 安斎、青木 表3より
詳細についてはぜひ、論文も御覧いただけばと思います。
安斎勇樹 青木翔子 2018
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjet/advpub/0/advpub_42073/_pdf/-char/ja
また、ワークショップデザインについてはこちらの書籍もおすすめです。