クネビンフレームワーク - 問題の種類(Simple/Complicated/Complex/Chaotic/Disorder)で対応を変える

今回はクネビンフレームワーク(Cynefin Framework)を紹介します。2025年現在、VUCAやBANIといった”不確実性の時代”の経営キーワードとセットで語られることの多い概念で、「目の前の問題がどのタイプか」を見極めて、それに合った意思決定のやり方を選ぶためのシンプルな道具です。

アジャイル開発・スクラム・新規事業・組織変革など、正解が事前に決められない仕事に携わる方に特に役立ちます。記事後半では、クネビンフレームワークを疑似体験できる「クネビンゲーム」にも触れます。

クネビンフレームワークとは|問題を4タイプに仕分ける枠組み

クネビンフレームワーク カネヴィンフレームワーク

クネビン(Cynefin)はウェールズ語で「生息地」を意味する言葉です。日本語では「カネヴィン」と表記されることもあります。

クネビンフレームワークは1999年にIBM Global Servicesのデイブ・スノーデン(Dave Snowden)氏らが提唱したもので、直面する状況・問題を大きく4つのドメインに分類し、それぞれに合った対処行動を選ぶためのフレームワークです。

さらに、4つのドメインを「予測可能/予測不可能」で大きく2分類して考えることもできます。

大分類 ドメイン 日本語 特徴
予測可能 Simple(Clear) 単純 因果関係が明確、誰が見ても同じ答え
Complicated 煩雑 専門家が分析すれば因果関係が見える
予測不可能 Complex 複雑 因果関係が事前には見えず、探索が必要
Chaotic 混乱 因果関係が不明、まず事態を落ち着かせる
Disorder 無秩序 どのドメインかも特定できない状態

ここで重要なのは、ドメインが違えば取るべきアクションも違うということです。たとえばComplicatedの問題にChaoticのアプローチ(即断即決)で突っ込むと、分析すれば解けたはずの問題を取り逃します。逆に、Chaoticな事態にComplicatedのアプローチ(じっくり分析)で臨むと、手を打たない間に被害が広がります。

4つのドメインそれぞれの対処行動

クネビンフレームワークでは、4つのドメインごとに取るべき行動の順序が示されています。

ドメイン 対処行動の順序
Simple Sense→Categorize→Respond
(気づく→分類する→対応する)
スマホが動かない→充電切れ→充電する
Complicated Sense→Analyze→Respond
(気づく→分析する→対応する)
業務プロセスのボトルネックを特定して改善
Complex Probe→Sense→Respond
(試行→観察→対応する)
新規事業立ち上げ、組織文化の変革
Chaotic Act→Sense→Respond
(即行動→観察→対応する)
災害対応、重大障害、不祥事の初動

Simple|誰でも気づいて対処できる問題

Simple(最近はClearと呼ばれることも)は、問題の因果関係が明確で、誰もが対応できる解決策が存在する領域です。

例えば「スマホが動かなくなった。原因はバッテリー切れ」のように誰でも気づく問題で、対応もマニュアル化・定型化できます。

対応の順序はSense(気づく) → Categorize(分類する) → Respond(対応する)。FAQを整備したり、業務マニュアルを用意したりするのが有効なドメインです。

Complicated|専門家による分析が必要な問題

Complicatedは、因果関係は存在するものの、専門家が分析しないと見えない領域です。車の故障診断、税務処理、システム設計など、知識と経験のある人に任せれば解けるタイプの問題が該当します。

対応の順序はSense(気づく) → Analyze(分析する) → Respond(対応する)“正しい答え”が存在するので、調査・分析に時間をかける価値がある領域です。

Complex|正解が事前に見えない問題

Complexは、因果関係が事前には見えず、やってみないとわからない領域です。新規事業、新商品開発、組織変革、人材育成など、“正解”を誰も知らないタイプの問題が該当します。

対応の順序はProbe(試しに動く) → Sense(観察する) → Respond(対応する)小さく試して、結果を観察してから次の手を決めるというアジャイル的な進め方が効きます。

エリック・リースの「リーン・スタートアップ」で示されるBuild→Measure→Learnのループは、まさにこのComplex領域を進むための対処行動です。

Chaotic|まず動かないと悪化する問題

Chaoticは、因果関係が不明で、状況を理解することすら難しい混乱状態です。自然災害、重大なシステム障害、不祥事の初動対応などが該当します。

対応の順序はAct(即行動) → Sense(観察) → Respond(対応)“正しさ”を考える前に、まず事態を落ち着かせる行動を取ります。安全確保、情報統制、第一報の発信など、完璧でなくても早く手を打つことが求められます。

Disorder|どのドメインかわからない状態

Disorderは、そもそも問題がどのドメインにあるかを特定できていない状態です。このとき危険なのは、自分が得意なドメインのやり方で無意識に対応しようとしてしまうことです。

対策は、“この問題はどのドメインか?”をチーム全員で立ち止まって言語化すること。クネビンフレームワークの最大の効能は、この問いを組織に持ち込めることにあります。

クネビンフレームワークが役に立つシーン

活用シーン よくある失敗 クネビンで気づけること
新規事業の立ち上げ 既存事業の計画手法(Complicated向け)で詳細計画を作り込む Complexなのでまず小さく試す
アジャイル開発導入 ウォーターフォールの要件定義を最後まで詰めてから着手 Complexは試行錯誤前提のスクラムが合う
人材育成・組織変革 マニュアル配布と研修1回で変わると期待 Complexなので小さな実験を回し続ける
重大インシデントの初動 原因究明を優先して対応が遅れる Chaoticはまず止血、原因は後回し

VUCAやBANIといった時代認識を語る記事が増えていますが、「その問題をどの温度で扱うか」を揃える道具としては、クネビンフレームワークが最も実用的です。

VUCA、TUNA、BANI、RUPTの共通点と比較(違い)

VUCA時代に求められる企業研修とは?

その意思決定が失敗する4つの理由

クネビンフレームワークを疑似体験する「クネビンゲーム」

座学だけでは、4つのドメインの違いを実感するのが意外と難しいのが正直なところです。そのため、クネビンフレームワークを疑似体験できる「クネビンゲーム」が海外では知られています。

クネビンゲームでは、プレイヤーはチームでカードを配られ、どのドメインに属する問題かを議論しながら仕分けていきます。議論の過程で「自分たちは無意識にComplicated的アプローチに寄っている」といった認知の癖が浮き上がります。

クネビンゲームの詳しい内容は以下の記事でまとめています。

アジャイル開発を疑似体験するクネビンゲーム

まとめ

クネビンフレームワークは、「この問題のタイプを見誤ると、打ち手も間違える」という当たり前に見えて多くの現場で見逃されがちな事実を、シンプルな4象限で言語化してくれる道具です。

会議で意思決定が迷走したときには、「そもそもこれはどのドメインの問題?」と一度立ち止まってみてください。それだけで、打ち手の方向性が大きくぶれなくなります。

関連研修のご紹介|VUCA時代のチーム間交渉を体験する「トレード&グロース」

クネビンフレームワークの Complex(複雑)領域 では、正解が事前に見えない中でチーム同士の利害を調整しながら意思決定を進める力が求められます。そうしたVUCA環境での チーム間交渉 を疑似体験できるゲーム型研修が「トレード&グロース」です。

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