ハーバード・ビジネス・レビュー2021年8月号に掲載されている「テレワークを考えるフレームワーク」の元論文
今回は先日読んだハーバード・ビジネス・レビュー2021年8月号 Hybrid Workに掲載されていた記事について書いていきたいと思います。
今回ご紹介する記事は下記となります。
Hybrid Work
P.30-40
在宅かオフィスかをみずから選べることの効果
ハイブリッドな働き方で創造性をいかに高めるか
東京大学大学院 准教授
稲水伸行
こちらの記事では創造性を発揮する働き方と組織の条件について大きく以下の3つのテーマについて記載されています。
2.テレワークを考えるフレームワーク
3.コロナ禍におけるi-dealsの比較
今回ご紹介するのは2番目のテレワークを考えるフレームワークの部分になりますが、
それ以外についてはキーワードだけご紹介しておきます。
まず1つめのABWとは、アクティビティ・ベースド・ワーキングと呼ばれる、活動内容に合わせて最適な環境を自由に選択できるというオフィス形態です。集中したい時は個室にこもる、みたいなことが自由に選択できるイメージです。
3つめのi-dealsについては、idiosyncratic-dealsの省略で、idiosyncraticが特異な、独特な、変わったといった意味ですので、i-deals = 特別扱いということになります。
こちらの記事では下記のように記述されています。
参照:“I-Deals”で才能や潜在キャリアを柔軟に生かす
https://www.worksight.jp/issues/1139.html
「テレワークを考えるフレームワーク」の元論文
さて、今回は記事中で紹介されていた「テレワークを考えるフレームワーク」パートを少しだけ深堀りしてみたいと思います。
ちなみに、テレワークを考えるフレームワークとは下記の画像で、HBRの記事では日本語訳されていました。
Gajendran, Ravi S. Harrison, David A.(2007)
Journal of Applied Psychology
2007, Vol. 92, No. 6, 1524–1541
上画像ではテレワークにおいて重要なのは知覚された自律性(perceived autonomy)、ワーク・ファミリー・コンフリクト(work–family conflict)、そして、上司や同僚との関係の質(relationship quality with one’s supervisor and coworkers)の3つだと言っています。
知覚された自律性という言葉がやや難しいですが、シンプルに自律性と考えて良いと思いますし、仕事の裁量がコントロールできるという意味合いです。
ワーク・ファミリー・コンフリクトは仕事と家庭の葛藤、仕事と家庭のバランスということになります。
ワークファミリーコンフリクトについて過去記事でも記載しておりますので興味があればご覧ください。
共働き時代のワーク・ファミリー・コンフリクト
上司や同僚との関係の質とは、上司・同僚への満足度、上司・同僚への信頼、上司・同僚との交流やコミュニケーションの程度、職場メンバーとの一体感の認識、チームや職場への帰属意識やコミットメントのことを意味しています。
これらが個人のアウトカム(individual outcomes)に影響するということです。
なお、個人の成果とは以下に分類されています。
⇒仕事のやりがい、個人のモラル
・Performance:成果
⇒自己評価、及び、上司評価、または客観的な指標
・Turnover intent:離職意向、
⇒離職の認知、転職の可能性、留まる意向
・Role stress:役割のストレス
⇒緊張、役割の曖昧さ、役割間の葛藤
・Perceived career prospects:キャリアの見通し
⇒昇進の満足度、キャリアの可能性、昇進のチャンス
それぞれの相関関係も元論文には掲載されています。
ざっくりみると、仕事の満足度、離職意向、役割のストレスは同僚との関係の質が特に重要で、成果(特に上司に評価では)には3つすべての要素が重要ということになりますので、強いて1つ挙げるとしたら同僚との関係の質が最も重要ということになるでしょうか。
まとめ
いかがでしょうか。今回ハーバード・ビジネス・レビュー2021年8月号 Hybrid Workに掲載されていたハイブリッドな働き方で創造性をいかに高めるかという記事について元論文を少しだけ深堀りしてご紹介しました。
ぜひ、書籍、及び、元論文も読んでみてください。
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Journal of Applied Psychology
2007, Vol. 92, No. 6, 1524–1541