研修会社に委託することのメリットとデメリット
社内研修を実施する際、自社でコンテンツを作り講師を立てる研修内製化か、外部の研修会社に委託するか——研修担当者が避けて通れない判断です。本記事では両者のメリット・デメリットを整理し、どんな研修を内製化すべきか・外部委託すべきかの判断基準を示します。
結論から言えば、毎年実施する定番コンテンツは内製化、最新の知見を取り入れたい一発型コンテンツは外部委託が基本方針。さらに2020年代以降は、コンテンツ・ツール購入+社内講師運営という中間モデルも現実的な選択肢になっています。
研修内製化のメリット6つ
研修を自社でゼロから設計・実施することのメリットは以下の6点です。
2. 中長期研修でコンテンツの臨機応変な対応が可能
3. 受講者1人1人への配慮が細かく行える
4. 研修費用(現金支出)が抑えられる
5. 会社に研修のノウハウが残る
6. 普段の業務と関連性が高い研修を実施できる
①会社の文化・業界の特性を踏まえた研修が可能
企業の独自用語・業界動向・業界慣習を踏まえた研修は、内製化の強みです。外部研修会社に委託する場合、事前打ち合わせが多くなりがちで、情報共有のコストがかかります。ただし、業界特化型の研修(例: 製薬・金融)では、業界出身の講師を抱える研修会社もあるため、必ずしも内製有利とは限りません。
②中長期研修でコンテンツの臨機応変な対応
プロジェクト型研修・半年〜1年の中長期研修では、進捗・方針変更に応じたコンテンツ変更が発生します。外部委託だと資料作り直しの追加コストが発生しますが、内製なら柔軟に対応可能です。
③受講者1人1人への配慮
社内講師は、受講者の上司から事前に情報を得たり、関係性を活かした個別フォローができます。研修後の行動・成長度合いのフォローも、外部委託より社内で実施するほうが自然です。
④研修費用(現金支出)が抑えられる
研修会社への現金支払いが不要な分、直接的な費用は抑えられます。ただし準備工数は社内で負担する必要があるため、機会費用としては別途考慮が必要です。
⑤会社に研修のノウハウが残る
先輩が作った資料・ツールを改良しながら実施することで、組織内に研修ノウハウが蓄積します。これは内製化の最大の長期効果の一つです。
⑥業務と関連性が高い研修
研修会社のコンテンツは一般論になりがちですが、内製なら自社独自の技術・実務との接続を深く作り込めます。
外部の研修会社に委託するメリット5つ
2. 「教えることのプロ」に教えてもらえる
3. コンテンツの品質が保証される
4. 普段の仕事とは異なる視点・目線を得られる
5. 他社との比較の中で自社の特性が見える
①準備工数の削減
研修資料・ワークツール・タイムライン作成を研修会社が担ってくれるため、担当者の準備工数が大きく減ります。パワーポイントスライドをゼロから作成する場合、1スライドあたり約1時間の時間が必要とされます。
②「教えることのプロ」に教えてもらえる
研修会社の講師は「教えることのプロ」であることが多く、知識を教える型の研修では顕著な効果差が出ます。特に新しい分野の座学では、教え方の技術が学習成果を左右します。
③コンテンツの品質保証
コンテンツは複数回実施することで品質が高まります。外部委託なら、実績のある研修会社を選ぶことで品質保証されたコンテンツを即投入できます。内製の場合は対象者以外の方に模擬研修で品質を検証する必要があります。
④外部視点の獲得
内製研修は最適化されすぎて最新動向や外部ベンチマークが取り入れられないことがあります。外部講師は複数企業での実施経験から多様な視点を持ち込めるため、「視野を広げる」目的の研修では外部委託が有効です。
⑤他社との比較で自社特性が見える
ワークショップ型研修では、会社の文化や特性によって反応やプロセスに違いが出ます。他社と比較した自社の特性を外部講師が伝えられることは、自己理解・組織理解を深める効果があります。
判断基準:どんな研修を内製化・外部委託すべきか
判断の目安を整理します。
内製化すべき研修
・毎年必ず実施される定番研修(ビジネスマナー・コンプラ基礎 等)
・自社独自の内容(企業文化・固有技術・社内システム)の研修
・受講人数が多く、繰り返し実施する研修
外部委託したほうが良い研修
・最新の知識・手法を取り入れた研修(例: 生成AI活用・DX推進・最新のリーダーシップ理論)
・外部視点・他社比較を重視する研修
・社内に講師できる人材がいない
・社内に研修のノウハウがない
・準備期間が取れない
2020年代の新しい選択肢:「ハイブリッド型」
近年は、内製と外部委託の二択ではなく、中間モデルが広がっています。
①コンテンツ・ツール購入+社内講師運営
研修会社が提供するスライド・マニュアル・動画・カードゲームを購入し、社内講師が運営するモデル。外部の品質と内製のノウハウ蓄積の両立が可能。弊社もこの形式のビジネスゲーム教材を提供しています。
②eラーニング+対面ワークショップ
基礎知識はオンデマンド動画で事前学習、対面では実践ワークに集中する。全員一律ペースの座学を削減でき、講師の工数も大幅に削減できます。
③外部講師+社内メンター
メインセッションは外部講師、その後の個別フォローは社内メンターが担当する分担。研修後の定着が強化されます。
④生成AI活用の研修設計
ChatGPT・Claudeなどで研修資料のドラフト作成、シナリオ例の生成、練習問題生成を内製化。コンテンツ作成の工数が大幅に減り、内製化のハードルが下がっています。
費用対効果の考え方
費用対効果を判断する際の考え方を整理します。
①直接費用: 研修会社への支払い(外部) / 社内講師の人件費(内製)
②間接費用: 受講者の研修時間(どちらも同じ)
③準備工数: 社内担当者の資料作成・ロジ調整(内製は高・外部は低)
④品質リスク: 社内ノウハウの有無による品質ぶれ(内製リスク)
⑤ノウハウ蓄積: 長期的な組織資産化(内製有利)
単年の現金支出だけを見ると内製が有利に見えがちですが、担当者の工数+品質リスク+機会費用を合算すると、外部委託のほうがトータルコストが低いケースも多くあります。
研修委託に関するよくある質問
Q. 研修会社選びで失敗しないコツは?
A. ①同じ研修の過去実績を聞く ②模擬研修・デモを依頼する ③複数社相見積もり ④担当講師との事前面談 の4つが基本。価格だけで決めると質がばらつきます。
Q. 部分的に外部委託できますか?
A. 可能です。例えば「新入社員研修のうち、ビジネスマナーだけ外部委託、その他は内製」という分担は一般的な運用です。
Q. 内製化したいが教材ゼロからは大変です
A. 研修会社から教材を購入して社内で運営するハイブリッドモデルがおすすめです。初期のコンテンツ品質は外部の知見を借りつつ、運営は社内で行うことでノウハウも蓄積できます。
まとめ
研修の内製化と外部委託にはそれぞれメリット・デメリットがあり、研修目的・頻度・社内リソースに応じた使い分けが実務的です。2020年代は教材購入+社内運営・eラーニング+対面ワークショップ・生成AI活用といったハイブリッド型の選択肢も広がっており、「二者択一」から「最適な組み合わせ設計」への移行が進んでいます。
関連テーマとして研修企画時に知っておきたい「ガニエの9教授事象」、研修を設計する時に知っておきたいEATモデルもあわせてご覧ください。
