クリティカルシンキングの5つの要素
今回はクリティカルシンキングの5つの要素というテーマで書いていきたいと思います。
クリティカルシンキングは日本語では批判的思考と訳される思考法です。
クリティカルシンキングはATC21s(Assessment and Teaching in 21st Century Skills)という国際団体(アメリカなどの政府、大学、インテル、マイクロソフトなどの企業が協力)が提唱している21世紀に求められるスキルの1つにも挙げられています。(上画像左上)
21世紀に求められるスキルについては過去記事で説明していますので興味のある方はそちらをご覧ください。
ATC21sによる21世紀型スキルとは
弊社代表の千葉は、大学生のときにグロービスさんの「MBA クリティカル・シンキング」を読んで感銘を受けたと言っていました。
では、クリティカルシンキングとはどのような能力・スキルなのでしょうか?
ここでは下記の論文を引用しながらクリティカルシンキングを5つの要素に分解して紹介したいと思います。
廣岡秀一、元吉忠寛、小川一美、斎藤和志
三重大学教育実践総合センター紀要,2001,第 20 号,93-102
こちらの論文ではクリティカルシンキングに対する志向性を測定する尺度の作成(構成)を試みています。
2種類のクリティカルシンキング
個人的に面白いなと思ったのが、クリティカルシンキングをさらに2つに分けて考えているところです。
それが、他者の存在を想定した場面におけるクリティカルシンキング志向性と、他者の存在を想定しなくてもよいクリティカルシンキング志向性という2つです。
つまり、自分ひとりで考える時のクリティカルシンキングというスキルと、他者とコミュニケーションを取りながら考える時のクリティカルシンキングというスキルを分けて考えているということになります。
そういえば、グロービスさんのMBAシリーズにも、MBAクリティカル・シンキング コミュニケーション編 というのが存在しています。
これはまさに他者の存在を想定した場面におけるクリティカルシンキング志向性と、他者の存在を想定しなくてもよいクリティカルシンキング志向性という2つを書籍としても分けているということになるのかもしれません。
クリティカルシンキングの5つの要素
論文では、704名の大学生に対して質問紙調査を行った結果として、それぞれのクリティカルシンキングの尺度となる要素が記載されています。
まずは自分ひとりで考える時のクリティカルシンキング(=他者の存在を想定しなくてもよいクリティカルシンキング指向性)において重要な要素ですが、以下の5つの要素が抽出されました。
⇒他の人があきらめても、なお答えを探し求め続ける など
2.証拠の重視
⇒確たる証拠の有無にこだわる など
3.不偏性
⇒物事を決めるときには、客観的な態度を心がける など
4.決断力
⇒ここぞというところで決断できる など
5.脱軽信
⇒情報を、少しも疑わずに信じ込んだりしない など
クリティカルシンキングというと確かに、証拠の重視や脱軽信といったイメージがありましたが、こうやって要素分解して考えたことがなかったので面白いなと思っています。
また、他者の存在を想定した場面におけるクリティカルシンキング志向性の方は6つの要素が抽出されました。
⇒自分とは違う考え方の人に興味を持つ など
2.他者に対する真正性
⇒友だちに対してでも、悪いことは悪いと指摘できる など
3.論理的な理解
⇒人の話のポイントをつかむことができる など
4.柔軟性
⇒必要に応じて妥協する など
5.脱直感
⇒理由もなく人を嫌わない など
6.脱軽信
⇒うわさをむやみに信じない など
こちらはコミュニケーションが前提ということで、人間多様性理解や柔軟性という要素が入ってきています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回はクリティカルシンキングの5つの要素ということで、クリティカルシンキングの尺度についての研究論文をご紹介し、クリティカルシンキングを自分ひとりで考える時と、他者と一緒に考える時の2つに分けて、それぞれにおける要素をご紹介しました。
ぜひ論文の方もご覧頂ければと思います。
廣岡秀一、元吉忠寛、小川一美、斎藤和志
三重大学教育実践総合センター紀要,2001,第 20 号,93-102
書籍も参考になれば幸いです。