ストーリーテリング研修で使える感動を生むSTARの法則
ここ数年、研修業界?ではナラティブというワードが注目されています。
ナラティブとは『語り・物語』という意味で、自分の中にある物語を他の人に語りながらお互いの経験や価値観、人となりを共有していくというのもです。
このように、論理だけでなく、物語というものの力が見直されてきています。企業によっては物語によるプレゼンテーション力の向上を狙ったストーリーテリング研修を実施している企業もあるほどです。
そこで今回はストーリーテリング研修で使える感動を生むSTARの法則ということで、感動を生む話の作り方についてのフレームワークを紹介したいと思います。
なお、ここからの内容は幸福学で知られる慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の前野 隆司教授らの研究をもとにご紹介したいと思います。
前野先生といえば幸福学で有名で、こちらの書籍もとてもおもしろかったです。
ストーリーテリング研修で使える感動を生むSTARの法則
今回は下記の論文を参考に感動を生むSTARの法則をご紹介したいと思います。
石田 泰博, 前野 隆司, 井原 くみ子, 北村 勇気
日本創造学会論文誌
2021 年 24 巻 p. 15-38
https://www.jstage.jst.go.jp/article/japancreativity/24/0/24_15/_article/-char/ja/
論文の中で感動の構成要素は下記のSTARのフレームワークで表されるとされています。
⇒五感で感じて感動
関連ワード:美、味、匂、触、心地よさ、その他の感覚
Think
⇒頭で考えて「知覚の拡大」に感動
関連ワード:理解、納得、発見、圧倒、その他の知覚の拡大
Act
⇒動きや変化による「体験の拡大」への感動
関連ワード:努力、上達、成長、進歩、達成、特別感、稀有、
遭遇、幸運、その他の体験の拡大
Relate
⇒人やものへのつながりに基づく「関係性の拡大」への感動
関連ワード:愛、つながり、優しさ、親近感、愛着、調和、一体感、感謝、
承認、尊敬、その他の関係性の拡大
引用:P5.図1:「感動のSTAR分析のための感動分類表」
いかがでしょうか。最近感動した話を思い出してみると、上記の4つの要素やその関連ワードが多く含まれているのではないでしょうか。
そこで、この要素や関連ワードを意識していくと自分の物語や製品・サービスの魅力を一層高めることができるということになります。
具体的なやり方として論文中では「感動ストーリー発掘のための質問表」(下画像)を用意されており、自分の物語やプレゼンテーションに対して下記に記載されているような質問を行うことで物語に厚みをもたせていきます。
画像引用:P6. 図2:「感動ストーリー発掘のための質問表」
他にも、自分の物語に対して先程紹介した関連ワードのどれが不足しているのかを分析するのも効果的とされています。
また、論文では物語の構成を状況設定、葛藤、解決の3つ(三幕)に分解して、それぞれの幕で行う質問を指定する形で物語に感動要素を追加していく方法も紹介しています。これはとてもわかりやすくて便利ですね。
画像引用:P6. 図3:「感動ストーリー共有のための三幕構成表に基づく質問表」
論文によればこのSTARの法則を意識して(他にも細かい工夫をたくさんやられていますが、詳細は論文を御覧ください)物語をブラッシュアップしたところ、以下のような効果があったとされています。
画像引用:P14. 表1:有効性における主観評価の比較
表の意味合いとしては、物語をブラッシュアップした結果、物語が発想しやすく(流暢性)、多視点で物語が発想され(柔軟性)、他に類似していない物語となり(独自性)、新しい物語(新規性)となったことが明らかになっています。
また、さらに面白いのがこのような感動的なストーリーを作り、共有するワークショップを実施したところ、下の表にあるように帰属意識が高まり、相互での協業意向が高まり、仕事へのモチベーションも高まったことがわかっています。
画像引用:P19. 表4:有効性における主観評価の比較
組織開発にストーリーテリング研修を取り入れている企業があることもこれで納得できる気がします。
まとめ
今回は紹介しきれなかったですが、論文中にはまだまだ面白い工夫が沢山紹介されています。
ぜひ論文も読んでみてください。
石田 泰博, 前野 隆司, 井原 くみ子, 北村 勇気
日本創造学会論文誌
2021 年 24 巻 p. 15-38
https://www.jstage.jst.go.jp/article/japancreativity/24/0/24_15/_article/-char/ja/
ちなみに、私もまだ読んでいないですが、前野先生による感動のメカニズム 心を動かすWork&Lifeのつくり方 (講談社現代新書) という書籍も出ているそうです。