今回は職場でのチームワークを高めるにあたって、医療現場で伝えられている多職種連携コンピテンシーを紹介したいと思います。

そもそも、なぜ職場でのチームワークを高めるために、医療現場のノウハウを知る必要があるのか?と言えば、チームワークが最も必要とされるのが医療現場だと思うから、です。

医療現場ではチームワークが乱れると、最悪の場合、患者さんが死に至るという可能性があり、チームワークの重要性がとても高い分野です。

過去にも医療現場で使われている報連相のフレームワークとして、SBAR(エスバー)もご紹介しました。

看護の現場で使われている「報告」のやり方〜SBAR法〜

さて、医療現場というと医師と看護師という職種が思いつきますが、医師と言ってもテレビドラマで見られるように外科医もいれば、麻酔の専門家もいて、さらに言えば、介護関連の人との連携が求められる等、多職種が連携する必要があります。

多職種連携能力のコア・コンピテンシー

まず紹介したいのが、多職種連携能力のコア・コンピテンシーと呼ばれる下の図です。
多職種連携能力のコア・コンピテンシー

この図は、英国の連携教育推進センターのHugh Barr教授が提唱された多職種連携のためのコア・コンピタンスです。

Complementaryは補完的という意味で、ここでは、他の専門職を補完できる専門職能力という意味になります。

Commonは共通の能力という意味で、例えば、コミュニケーション能力が該当します。

Collaborativeは他の専門職と協働するために必要な協働的能力という意味になります。

特に3つ目のCollaborativeに焦点を当てて作成されたのが下図の多職種連携コンピテンシーです。


画像参照:https://pro.kao.com/jp/medical-kaigo/topics/professional-care/20201124/

この図には2つのコアドメインコアドメインを支える4つの(サブ)ドメインから成り立っています。

2つのコアドメインとは「患者・利用者・家族・コミュニティ中心」と「職種間コミュニケーション」です。

患者・利用者・家族・コミュニティ中心
⇒患者・サービス利⽤者・家族・コミュニティのために、協働する職種で患者や
利⽤者、家族、地域にとっての重要な関⼼事/課題に焦点を当て、
共通の⽬標を設定することができる。

職種間コミュニケーション
⇒患者・サービス利⽤者・家族・コミュニティのために、職種背景が異なることに
配慮し、互いに、互いについて、互いから職種としての役割、知識、意⾒、価値観を
伝え合うことができる。

引用:医療保健福祉分野の多職種連携コンピテンシー
Interprofessional Competency in Japan
http://www.hosp.tsukuba.ac.jp/mirai_iryo/pdf/Interprofessional_Competency_in_Japan_ver15.pdf

前者の「患者・利用者・家族・コミュニティ中心」は一般的な職場で言えば、顧客志向、チーム志向、ビジョン志向と言えるでしょうか。そもそも顧客志向であるか、また、個人主義ではなく、チーム志向があるか、さらに、チームとして理想的なビジョンを目指して活動しているか、ということになります。

後者の「職種間コミュニケーション」は一般的な職場で言えば、心理的安全性と言えるでしょうか。異なる立場の人が互いを尊重しながら、意見や価値観を伝えることができることが求められます。

続いて、コアドメインを支える4つの(サブ)ドメインについて簡単に紹介します。2つのコアドメインを実現するには4つの(サブ)ドメインが必要とされています。

職種としての役割を全うする
⇒互いの役割を理解し、互いの知識・技術を活かし合い、職種としての役割を全うする。

関係性に働きかける
⇒複数の職種との関係性の構築・維持・成⻑を⽀援・調整することができる。
また、時に⽣じる職種間の葛藤に、適切に対応することができる。

自職種を省みる
⇒⾃職種の思考、⾏為、感情、価値観を振り返り、複数の職種との連携協働の経験をより深く理解し、連携協働に活かすことができる。

他職種を理解する
⇒他の職種の思考、⾏為、感情、価値観を理解し、連携協働に活かすことができる。

引用:医療保健福祉分野の多職種連携コンピテンシー
Interprofessional Competency in Japan
http://www.hosp.tsukuba.ac.jp/mirai_iryo/pdf/Interprofessional_Competency_in_Japan_ver15.pdf

4つの(サブ)ドメインを見るとこれができれば苦労しないとなーと思うわけですが、理想はまさにこの通りなのかなと思います。

ではどうやってこの4つが実現できるようにするかと言えば、現実的には「他職種を理解する」のために社内勉強会を実施するなどが考えられますし、「関係性に働きかける」ためには職場における3つの支援を周知し、実践する(下図)などが考えられるでしょうか。

まとめ

いかがでしょうか。今回は医療現場のチームワークについて学ぶ「多職種連携コンピテンシー」をご紹介しました。なかなか実践するのは難しいですが、理想に向けて1つずつできることから実践していくことが重要だと思います。


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