新入社員研修で必ず教わる報告・連絡・相談(ホウレンソウ)。多くの企業で「報告は結論から」「分かりやすく」といった抽象的な指導は行われますが、具体的に何をどの順序で伝えるべきかというフォーマットが示されることは意外と少ないものです。

一方、人命に関わる医療現場では、報告のフォーマットが厳密に標準化されています。そこで使われているのがSBAR法です。本記事ではSBAR法の意味・使い方・ビジネスでの応用を、具体例とともにわかりやすく解説します。

SBAR法でビジネスの報告が変わる — 4ステップ(状況・背景・評価・提案)で報告品質を標準化

SBAR法とは

SBAR(エスバー)法は、もともとアメリカ海軍の潜水艦でのコミュニケーションを医療現場に応用して広まった報告のフレームワークです。現在は世界中の看護・医療現場で使われており、TeamSTEPPS®(医療安全のための包括的トレーニング)の中核ツールの1つとして位置付けられています。

SBARはそれぞれの単語の頭文字を繋げたものです。

SBAR 報告フレームワーク

S(Situation): 状況

今、何が起きているのかを最も重要な1文で伝えます。医療現場なら「患者Aさんの血圧が急に下がっています」、ビジネスなら「納期が3日遅延しそうです」といった、聞き手が最初に把握すべき事実です。

B(Background): 背景

その状況に至った経緯や関連情報を簡潔に伝えます。医療現場なら「手術後3時間経過、バイタル変動あり」、ビジネスなら「発注先の工場で機械トラブルが発生」といった文脈情報です。

A(Assessment): 評価・自分の考え

報告者として状況をどう見立てているかを伝えます。医療現場なら「出血の可能性があります」、ビジネスなら「このままだと顧客への影響が出ます」といった、報告者の解釈・判断です。

R(Recommendation): 提案・してほしいこと

聞き手に何をしてほしいかを明示します。医療現場なら「すぐに診察をお願いします」、ビジネスなら「客先への連絡のため至急ご判断ください」といった、具体的なアクション要請です。

SBAR法のビジネス応用例

SBAR法は医療現場発のフレームワークですが、緊急性と重要性のある報告全般にビジネスでも応用できます。

例1: システム障害の報告

S: 主要販売サイトが10分前からアクセス不能になっています
B: データベースサーバーのディスク容量が逼迫、過去にも同じ原因で停止した経緯あり
A: ディスクのクリーンアップと緊急増設が必要です
R: インフラチーム招集とお客様向けアナウンスの判断をお願いします

例2: 重要顧客からのクレーム

S: A社様より「納品物の品質問題」でクレームを受けました
B: 昨日納品したロットで不良品が3件発覚、契約上の重要顧客
A: 全ロット回収と代替品手配が必要です
R: 今日中の役員会判断と、明日朝のA社様訪問(同行者含む)決定をお願いします

例3: 納期遅延の報告

S: B案件の納期が予定より3日遅延する見込みです
B: 外注先の工場で機械トラブルが発生、復旧に72時間必要との連絡
A: 顧客への事前告知と、代替手段の検討が必要です
R: 顧客への連絡窓口の一本化と、内製切り替えの可否ご判断をお願いします

SBAR法のメリット

1. 聞き手の意思決定が速くなる

SBARは「聞き手が判断に必要な情報の順序」で構成されています。状況→背景→評価→提案という流れは、聞き手の思考プロセスに沿っているため、判断が速く、正確になります。

2. 報告者の思考整理になる

SBARの4要素に沿って情報を並べる過程で、報告者自身が状況を構造化して理解できます。慌てて事実だけを羅列する報告と、SBARに沿った報告では情報の伝わり方が大きく違います。

3. 誰が聞いても同じ構造で伝わる

報告者や場面によって伝え方がバラつくと、重要な情報が抜け落ちるリスクがあります。SBARという共通フォーマットを組織で使うことで、属人性を減らし、情報伝達の品質を担保できます。

SBAR法とPREP法の使い分け

ビジネスコミュニケーションの報告フレームワークにはPREP法もあります。両者の違いを整理しておきます。

・SBAR法: 緊急性・重要性のある報告向け。聞き手にアクションを求める場面に強い。
・PREP法: 一般的なプレゼン・説明向け。結論を先に、論理的に伝える場面に強い。

トラブル報告・クレーム対応・緊急の意思決定要請ではSBAR法、通常業務の進捗報告・提案プレゼン・議事録ではPREP法が適しています。

PREP法とは?結論から話すための型と具体例

研修でSBAR法を定着させるコツ

ロールプレイで反復する

SBARは「知っている」だけでは使えません。新入社員研修・マネジメント研修で緊急場面のロールプレイを取り入れ、実際にSBARで報告する練習を繰り返すことで定着します。

カード化・チェックリスト化する

病院によってはSBARカード(4要素がプリントされた小さなカード)を配布し、報告前に見返せるようにしています。ビジネスでもSBARチェックリストを報告フォーマットに組み込むと、実務での活用が進みます。

TeamSTEPPSを参考にする

SBARは単独でも有効ですが、TeamSTEPPS®というチームワーク訓練プログラムの一部として設計されています。体系的に学びたい場合は関連書籍を参考にしてください。


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