今回はインターンシップについての面白い論文を見つけましたのでその内容をご紹介したいと思います。

それがこちらの論文です。

インターンシップから感じる学生の職務満足分析

児子 正治 岡山大学大学院社会文化科学研究科
岡山大学大学院社会文化科学研究科紀要(2021)

https://ousar.lib.okayama-u.ac.jp/ja/list/nii_types/Departmental%20Bulletin%20Paper/item/61341

インターンシップの満足度に最も影響するのは
「人としての成長」

この論文では国立大学の大学生でインターンシップに参加した97名のデータを分析した結果、インターンシップ満足度の1番の源泉は人としての成長だったということです。

論文では以下のよう記述されています。

大学生がインターンシップの経験から感じる職務満足の源泉は、
「人としての成長」「能力開発」「達成感」であることが明らかになった。

「人としての成長」は抽象的で分かりづらいですが、以下のように考察されています。

「人としての成長」は、仕事の経験を通じて、
関わる人や一緒に取り組む同僚からの刺激
を受け、
人としての成長を感じていくのであろう。

私個人は大学3年生の時(2004年)に19日間のインターンシップに参加しました。
その時の満足の源泉も上記の3項目と大きく違いは無いように感じます。
ただし、「人としての成長」というよりも、「ビジネスパーソンとしての成長」の方が私個人の感覚に近いかもしれません。
それまで普通の大学生だった私が、インターンシップ中の経営者、及び、営業、開発の部門長の話を聞いて、ビジネスというものがどのようなものかを知ったというのが大きかった気がします。
ただ、仕事の経験を通じて、関わる人や一緒に取り組む同僚からの刺激という点は同じです。

また、私が参加したインターンシップには同時期に100名近い大学生・大学院生が参加しており、同期のアウトプットに刺激を受けたというのも大きかった気がします。インターンシップ序盤、うまく成果が出せなかった中、他の参加者のアウトプットを見ることで、「そういうことか!」と気づき、後半は成果を出せたので、一種の「能力開発」と言えるかと思います。

さらに、「達成感」ということで言えば、このインターンシップは内定直結型のインターンシップでしたので、19日間のインターンシップを終えて、内定をもらえたことも達成感を高めてくれました。

インターンシップの要改善項目は「フィードバック」

一方、要改善項目としても最も重要なのは「フィードバック」とされています。

論文では以下のよう記述されています。

職務満足の総合評価の影響は高いが、現状の労働価値観が低く満足度を感じていない
重要改善項目は、「フィードバック」「注目」「タスクの完結」・・・(一部省略)
などであり、特に最優先の改善項目となる「フィードバック」を見直すことが、
今後、インターンシップの経験から大学生が感じる職務満足の向上につながる
ことが明らかになった

こちらもフィードバックについて記載内容をもう少し詳しくご紹介したいと思います。

フィードバックは経験中に自分のやっていることの進捗状況や成果が見え
社員や同僚から進捗や成果を教えてもらいながら、自分が努力していることが
好ましい結果に向かっている
ことを系統立って理解していく中で、
自己努力が成果につながっていると感じる経験

これも個人的な経験ですが、私の参加していたインターンシップではアウトプットについて「A・B・C」の3段階の評価(A,Bが合格でAは100名中2〜3名)の書かれた紙が壁に張り出されるだけというフィードバック方法でした。

そして、その評価への説明は1行だけ。社員からの説明は無し。これについてはかなり不満がありました。
今から考えると100名もの学生に1人1人丁寧なフィードバックをすることが難しかったのだと思いますが、内定直結型ということもあり、フィードバックについてクレームを言う学生もいました。
この点はまさに要改善項目だと思います。

要改善項目の2つ目に「注目」が入っているのは個人的には「今っぽい」なと感じます。
SNSなどの普及で「いいね」を求める行動に重きが置かれる現代では「注目」や他の改善項目にあった「ほめられる」というのは大事なのかもしれません。

ただし、これについては賛否両論あるはずで、インターンシップ生はお客様ではないのだから、丁寧に扱いすぎる必要はないのでは?という声もあると思います。

図で見るインターンシップの満足度と改善項目

さて、ここまでの話を1つの図でまとめたのが下図です。

インターンシップ 改善ん
画像引用:Fig.1 インターンシップの質問紙調査における CS グラフ

右上の象限が重点維持項目ということで、満足度に強く影響しており、維持すべき項目で、「人としての成長」などが含まれます。

一方、右下の象限が重点改善項目で、「フィードバック」などが含まれます。

ざっくりとまとめると、維持したい項目は能力開発などを含む、「成長」で、改善すべき項目は注目、ほめられるなどを含む「フィードバック」と言えると思います。

まとめ

いかがでしょうか。冬休み、夏休みのインターンシップを設計するにあたり、参考になれば幸いです。

インターンシップの設計についてはこちらの書籍もオススメです。

また、論文では質問項目なども記載されていますのでぜひ読んでみてください。

インターンシップから感じる学生の職務満足分析

児子 正治 岡山大学大学院社会文化科学研究科
岡山大学大学院社会文化科学研究科紀要(2021)

https://ousar.lib.okayama-u.ac.jp/ja/list/nii_types/Departmental%20Bulletin%20Paper/item/61341


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