職場でのパワハラ・セクハラ・マタハラ・ケアハラといったハラスメント対策は、主に3つの法律によって事業主に義務付けられています。労働施策総合推進法(通称パワハラ防止法)、男女雇用機会均等法、育児介護休業法の3つです。本記事では、それぞれの法律が対象とするハラスメントの種類と、企業が取るべき具体的な対応策を整理します。

ハラスメントに関連する3つの法律

ハラスメントに関連する3つの法律の比較

まずは3つの法律がどのハラスメントを対象にしているのか、施行時期と義務内容を一覧で整理します。

法律 対象となるハラスメント 中小企業への義務化時期
労働施策総合推進法
(パワハラ防止法)
パワーハラスメント 2022年4月1日
男女雇用機会均等法 セクシャルハラスメント
マタニティハラスメント
従来から義務化
(防止措置は2007年〜)
育児介護休業法 育児・介護に関するハラスメント
(ケアハラ・パタハラ等)
従来から義務化
(2017年〜防止措置強化)

どの法律も「中小企業だから免除」ということはなく、従業員が1人でもいれば事業主として防止措置義務を負います。

1. 労働施策総合推進法(パワハラ防止法)

一般にパワハラ防止法と呼ばれているのがこの労働施策総合推進法です。正式名称は「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」と長いため、通称の方が広く使われています。

職場におけるパワーハラスメント対策が、2020年6月1日から大企業で、2022年4月1日から中小企業でも義務化されました。事業主は、方針の明確化と周知・啓発、相談体制の整備、迅速かつ適切な対応、プライバシー保護などの措置を講じる必要があります。

厚生労働省告示第6号

パワハラの6類型

厚生労働省はパワハラを以下の6つの行為類型に整理しています。

① 身体的な攻撃(暴行・傷害)
② 精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)
③ 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
④ 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制)
⑤ 過小な要求(程度の低い仕事を命じる・仕事を与えない)
⑥ 個の侵害(私的なことに過度に立ち入る)

パワハラと認定されるには「優越的な関係を背景とした言動」「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動」「労働者の就業環境が害される」の3要素を満たす必要があります。詳しくはパワーハラスメントの3要素の解説記事をご覧ください。グレーゾーン事例の判断軸についてはパワハラのグレーゾーン事例3選で具体的に解説しています。

2. 男女雇用機会均等法

男女雇用機会均等法は、セクシュアルハラスメント(セクハラ)とマタニティハラスメント(マタハラ)の防止を事業主に義務付けている法律です。

セクハラについては「対価型」と「環境型」の2種類に大別されます。対価型は職務上の地位を利用して性的な関係を要求し、拒否されたら不利益を与えるタイプ、環境型は性的な言動により就業環境が悪化するタイプです。両者の具体的な違いは対価型セクハラと環境型セクハラの違いで整理しています。また、無自覚のうちに行ってしまいがちな事例についてはやってしまいがちな「無自覚セクハラ」の分類が参考になります。

マタハラについては、妊娠・出産・育児休業等を理由とした不利益な取り扱いや、嫌がらせの言動が対象になります。男性の育児休業取得時の嫌がらせ(パタハラ)も、改正を経て同様に防止措置の対象となっています。

3. 育児介護休業法

育児介護休業法は、育児や介護を行う労働者を支援するための法律で、いわゆるケアハラスメント(ケアハラ)の防止措置を事業主に義務付けています。

ケアハラの典型例は、介護休業・短時間勤務・深夜業の制限などの制度を利用しようとする労働者に対して、制度利用を妨害したり、利用を理由に不利益な取り扱いをしたり、嫌がらせの言動をしたりするケースです。2022年4月1日からは男性の育児休業取得促進のために制度が強化され、企業には個別の周知・意向確認が義務付けられています。

企業が取るべき4つの対応

3つの法律は個別に対象ハラスメントが違いますが、事業主に求められる措置義務の基本構造は共通しています。具体的には以下の4点です。

1. 方針の明確化と周知・啓発

ハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、就業規則などに規定するとともに、社内報やポスター・研修などで全従業員に周知します。トップメッセージとして社長からの宣言を出している企業も増えています。

2. 相談窓口の設置

相談を受けた場合に対応するための窓口を設置します。社内窓口だけでなく、外部の専門機関に委託するケースもあります。相談者のプライバシー保護と、相談したことによる不利益取り扱いの禁止を明文化する必要があります。

3. 事案発生時の迅速・適切な対応

相談があった場合、事実関係の確認、被害者への配慮、行為者への措置、再発防止策の実施を迅速に行います。事実確認の段階では、被害者・行為者・第三者の証言を丁寧に集めることが大切です。

4. 従業員教育・研修の実施

方針の周知だけでなく、定期的な研修の実施が措置義務の重要な柱です。特に管理職向けの研修は、現場での判断力を養うために欠かせません。体験型のゲームやワークを取り入れると、ハラスメントの「グレーゾーン」についても参加者同士で議論しながら認識を揃えることができます。具体的な研修手法はハラスメント研修で使えるゲーム・ツール7選コンプライアンス研修で使えるゲーム5選で紹介しています。

法律違反時に企業が負うリスク

措置義務に違反した場合、まずは厚生労働大臣による助言・指導・勧告が行われます。勧告に従わない場合は企業名が公表される可能性があります。加えて、被害者から民事訴訟を起こされた場合、企業は使用者責任(民法715条)や職場環境配慮義務違反を問われ、損害賠償責任を負うリスクがあります。

レピュテーションリスクも無視できません。ハラスメント事案の報道や口コミがきっかけで、採用活動・取引関係・株主からの信頼に悪影響が及ぶケースも増えています。

法律対応だけでは足りない:調査データが示す現実

法律で措置義務を果たしていても、現場でハラスメントが減るとは限りません。5万人調査が示す「本当に効く」ハラスメント研修の条件によると、知識型の研修だけではむしろ逆効果になるケースがあることが報告されています。また1,500名のハラスメント調査では、同じ行為でも「セーフ」と「アウト」が半々に分かれるケースが多く、個人間の認識のズレが現場トラブルの温床になっていることが分かっています。

1,500名のハラスメント調査:同じ行為でもセーフとアウトが半々に分かれる認識のズレ

法律の条文を教えるだけでは、こうした認識のズレは埋まりません。従業員同士で「これはハラスメント?」と議論できる場を作ることが、実効性のあるハラスメント対策には不可欠です。

認識のズレを可視化する研修ツール:ハラスメントフラグ

弊社では、ハラスメントの「グレーゾーン」における認識のズレをカードゲーム形式で可視化する研修ツール「ハラスメントフラグ」を提供しています。参加者が具体的な場面を読んで「セーフ/アウト/グレー」を判断し、全員の回答を共有することで、自分の基準と他人の基準のズレを体感できる設計になっています。

ハラスメントフラグ

TRUSTDOCK様でも労働施策総合推進法への対応の一環として、社内研修に導入いただきました。

株式会社HEART QUAKE

弊社

「ハラスメントフラグ」を導入されたきっかけを教えてください

労働施策総合推進法が2022年4月1日より中小企業でも義務化されたことにより、弊社でも同法への法令遵守のため、関連する各種規程の制定や通報窓口等の設置を進めてまいりました。

ただ社内制度を作っただけでは、制度が形骸化し、同法で叶えたい働きやすい職場環境や従業員同士の相互理解を実現できないと課題に感じておりました。

内部通報窓口の運用開始、制度理解のための社内研修の実施に際し、ハラスメントフラグを導入することにより、弊社全体の価値観の傾向、自身の価値観とのズレを把握することができるので、従業員の相互理解促進やハラスメントについて向き合う良い契機となる思い導入いたしました。

他にも公益財団法人千葉県文化振興財団様東洋紡労働組合様にもご利用いただいています。

ハラスメント研修のお問い合わせ

ハラスメントに関する法律対応・研修実施の無料相談や、ハラスメントフラグの資料請求を承っております。下記よりお問い合わせください。

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