新入社員研修は数日〜数ヶ月と比較的長期間にわたり、受講者は大量の知識や経験情報を短期間で浴びることになります。

「知識の定着には反復や実践が、実践や疑似体験の後には振り返りが必要」と言われますが、具体的に「振り返り」として何を行うのかを整理できている研修担当者は多くありません。本記事では、新入社員研修で使える振り返り手法を、2種類のタイミング別に整理し、「日々の振り返り」で使える6つの具体手法を詳しく紹介します(「一定期間後の振り返り」は後編で解説)。

振り返りは「日々」と「一定期間後」の2種類に分ける

新入社員研修における振り返りは、大きく2種類に分けて設計するのが効果的です。

種類 実施タイミング 目的
日々の振り返り 朝・昼・夕・単元の変わり目 その日の気づきを言語化し、短期記憶の定着を図る
一定期間後の振り返り プロジェクト終了時・研修最終日・OJT中の節目 中長期の学びをまとめ、行動変容につなげる

KPTは「毎日の振り返り」には不向き

振り返り手法として有名なKPT(Keep・Problem・Try)は、どちらかというと一定期間後の振り返りに向いた手法です。日々の振り返りでKPTを使おうとすると、1日単位ではKeep(継続すること)に値する内容がまだ十分に蓄積されておらず、浅い回答しか出てこないことが多々あります。

振り返りを「日々」と「一定期間後」に分け、それぞれに合った手法を選ぶことが、研修効果を引き上げる第一歩です。

「日々の振り返り」で使える6つの方法

ここでは、新入社員研修の「日々の振り返り」として使える6つの方法を紹介します。

方法 主な実施タイミング 狙い
1. 一番印象に残っていること 午前再開時・昼食後 短期記憶の呼び起こし
2. わかったこと、わからなかったこと 昼食後・1日の終了時 理解度チェックと不明点解消
3. できること、できなそうなこと 1日の終了時・単元変わり目 行動レベルの自己評価
4. 初めて、改めて 1日の終了時・単元変わり目 既存の枠組みの見直し(ダブルループ学習)
5. ことわざ化 1日の終了時・単元変わり目 学習の準抽象化による想起支援
6. ミニテスト 翌日朝・単元変わり目 知識定着の確認とアウトプット練習

1. 一番印象に残っていること

午前の研修再開時や、昼食後の研修再開時に実施する短い振り返りです。「午前の研修で一番印象に残っていることは何ですか?」という問いを投げ、数人指名するA案、または4名程度のグループ共有にするB案のいずれかで進めます。

A案は講師側の全体管理が楽に済み、B案はやや管理は難しくなるものの「学びの共有」が促されるのが特徴です。

2. わかったこと、わからなかったこと

昼食後の研修再開時や、1日の研修終了時に実施します。名刺サイズの紙を渡して「わかったこと・わからなかったこと」を記入してもらうのがおすすめです。

研修当日内で不明点を解消しておくと、研修満足度・理解度が上がります。無記名で紙を回収し、多くの受講者が「わからなかった」と書いた内容を翌日に補足する運用が効果的です。

3. できること、できなそうなこと

1日の研修終了時や単元の変わり目に実施します。研修効果測定の古典であるカークパトリックの4段階評価では、「学習」が「行動」につながっているかを重視します。

カークパトリックによる研修効果の測定(4段階評価)

つまり、「わかった」の次は「できるか」(実際にやったか)が重要になります。「できるようになったこと」と「まだできそうにないこと」を問い、記入と発表を行います。「わかった」けれど「まだできそうにない」という回答は、練習不足や知識のあやふやさのシグナルとして講師が注意すべきポイントです。

4. 初めて、改めて

1日の研修終了時や単元の変わり目に実施する定番の振り返りです。「初めて学んだこと、改めて気づいたこと」という問いを投げ、記入と発表を行います。

特に「改めて」という問いは、これまでの知識や考え方の枠組みを見直す契機になり、ある種のダブルループ学習として機能します。普段何気なくやっていることが理論的に意味付けされたり、その重要性に気づくことは、行動変容の大きなきっかけになります。

5. ことわざ化

これまでとは少し違った視点での振り返りです。「これまでに学んだ○○を一言で表すと?」(○○はビジネスマナー、報連相など)という問いで、格言やことわざを自分で作ってもらう手法です。

東京大学の池尻さんのワークショップで伺ったお話では、学習内容を実務で活かすには想起(思い出す)を促す手段が重要で、以下の順で想起が促されるという実験結果があるとのことです。

「ことわざ」などの準抽象化 > 「事例」などの具体例 > 教科書などの説明

つまり、自分なりに学習内容をことわざや格言に準抽象化しておくと、実務での再活用が効きやすいということです。

6. ミニテスト

研修現場の定番「確認テスト」の応用形です。前日の内容の振り返りや単元の変わり目で実施します。

講師が問題を作る方式もよいですが、ここでは受講者がお互いに数問ずつ問題を作り合う方式をおすすめします。「問題を作る」には答えを知っている必要があり、自分も相手もあいまいな部分を問題に出しやすいため、定着の弱い箇所が自然に浮かび上がります。

あまりマニアックな問題を避けるため、相互採点後に相手が全問不正解だった場合は出題者が負けというルールで対戦型振り返りにすると盛り上がります。

振り返り設計の理論を学ぶ書籍

振り返りの設計や体系を学ぶには、下記の書籍が参考になります。

まとめ

新入社員研修での振り返りは、「日々の振り返り」と「一定期間後の振り返り」の2種類に分けて設計するのが基本です。「日々」の振り返りで使える6つの手法は、いずれも短時間で実施でき、目的によって使い分けることで研修全体の定着度を大きく高められます。

「日々の振り返り」の方法

1. 一番印象に残っていること
2. わかったこと、わからなかったこと
3. できること、できなそうなこと
4. 初めて、改めて
5. ことわざ化
6. ミニテスト

「一定期間後の振り返り」(KPT・YWT・リフレクティブサイクルなど)については後編で詳しく解説しています。


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