振り返りのモデル「リフレクティブサイクル」とは

「振り返りが大事」とよく聞くものの、どう振り返れば良いのか具体的なステップが分からないことはありませんか?チームミーティングで「良かった点・悪かった点」を並べるだけの振り返りは、なかなか次の行動に繋がりません。
本記事では、振り返りを体系化した代表的なフレームワークリフレクティブサイクルを紹介します。看護教育・教師教育で広く使われている実践的なモデルで、ビジネスでの振り返りにも応用できます。

リフレクティブサイクルの位置づけ
振り返りはPDCAサイクルのC(Check)に相当します。また、コルブの経験学習モデルでは省察という振り返りと同義の言葉が登場します。
どちらも「振り返りが重要である」ことは示していますが、具体的にどういうステップで振り返るかは示していません。このギャップを埋めるのがリフレクティブサイクルです。
リフレクティブサイクルとは
リフレクティブサイクルはGibbs(ギブス)によって1998年に提唱された振り返りのモデルです。コルブの経験学習モデルの省察部分をさらに深掘りしたフレームワークといえます。

Gibbsは振り返りの流れを6つのステップに分けています。
1. 記述(Description)
2. 感覚(Feelings)
3. 推論(Evaluation)
4. 分析(Analysis)
5. 評価(Conclusion)
6. 行動計画(Action Plan)
それぞれのステップを具体的に見ていきます。
1. 記述・描写(Description)
最初のステップで最も重要な問いは以下です。
具体的にビジネスの世界で考えると、誰が・何を・どこで・いつ・どのくらい、といった4W1H(Whyを除き、HはHow muchを想定)をベースに事実を書き出します。
感情や評価を混ぜず、起きた事実だけを記述するのがポイントです。
2. 感覚(Feelings)
記述・描写が事実ベースのステップだとすると、感覚は意見・感情ベースのステップです。
ビジネスの世界では感覚や意見といったものは敬遠されがちですが、個人的な感覚や意見を出してみることで、振り返りに納得感が生まれます。
「なぜモヤモヤしたのか」「何に腹が立ったのか」「どこが嬉しかったのか」など、感情の動きを言語化すると、次の分析に繋がる手がかりになります。
3. 推論(Evaluation)
ここで面白いのは経験にフォーカスを当てている点です。
結果ではなく、経験そのものに焦点を当てることで、良かった点と悪かった点の両面を公平に見られます。結果だけに着目すると悪い点ばかりに目が行きがちですが、プロセスの経験として見ると、小さな成功も掬い上げられるようになります。
4. 分析(Analysis)
ここで面白いのは状況にフォーカスを当てている点です。
通常は誰かの行動にフォーカスを当てがちですが、リフレクティブサイクルでは状況に焦点を当てます。これは「問題の背景には、その問題を生み出してしまう状況が存在する」という考え方を前提としており、仕組みを変える示唆を得るための問いになっています。
これはシステム思考的なアプローチです。
システム思考における因果ループ図の読み書き入門
5. 評価(Conclusion)
ここで面白いのは学びにフォーカスを当てている点です。
成功でも失敗でも学ぶことが重要というスタンスです。1つの経験からできるだけ多くの学びを引き出し、次に繋げることが振り返りの目的になります。
これは学習する組織(ピーター・センゲ)の発想と一致しています。
ピーター・センゲ著「学習する組織」とは
6. 行動計画(Action Plan)
ここで面白いのは「同じ状況」を想定している点です。
普通は「この状況が起こらないようにするには何が必要か?」と恒久策を考えたくなりますが、Gibbsは敢えて「同じ状況でどうするか」を問います。
恒久策は本質的な問題を解決しますが、実際にスタートさせるには様々な改革・調整が必要で、抵抗勢力の反発も受けがちで、なかなか進みません。それよりもすぐに使える具体的な対策を考える方が現実的で、実行可能性が高いのです。
恒久策と実行可能策の両方を意識することが、実効性のある振り返りに繋がります。
リフレクティブサイクルを研修に活用する
リフレクティブサイクルは看護教育・教師教育で広く使われていますが、ビジネスの振り返り研修でも有効です。
・プロジェクト終了後の振り返り: 6ステップに沿って個人で書き出す → チーム共有
・管理職研修: 部下とのコミュニケーションの振り返りに適用
・新入社員研修: 配属後3ヶ月・半年・1年のタイミングで実施
・OJT担当者研修: 指導経験の振り返りに使う
・組織変革プロジェクト: 節目ごとにチームで実施
まとめ
Gibbsのリフレクティブサイクルは記述・感覚・推論・分析・評価・行動計画の6ステップで振り返りを構造化するフレームワークです。結果ではなく経験に焦点を当て、行動ではなく状況に焦点を当て、恒久策ではなく実行可能策を考えるという工夫が詰まった、実務的に使えるモデルです。
「振り返りが大事」で終わらせず、具体的なステップで振り返ることで、実際に次の行動が変わる振り返りになります。個人・チーム・組織の各レベルで取り入れてみてください。
