労働安全衛生法の改正でストレスチェック制度が義務化されて10年が経過し、2025年現在、多くの企業がメンタルヘルス対策の”形”は整えてきました。一方で、「制度は回しているのに、実感として効いている気がしない」という声も増えています。

その原因を考えるうえで改めて見直したいのが、メンタルヘルスマネジメントの世界で最も有名な職業性ストレスモデルのひとつ、米国国立職業安全保健研究所(NIOSH)のNIOSHの職業性ストレスモデルです。

NIOSH 職業性ストレスモデル

NIOSHの職業性ストレスモデルとは

NIOSHの職業性ストレスモデルは、職場のストレッサーがどのような経路でストレス反応・疾病に結びつくかを整理した枠組みです。上の図が示すように、ストレス反応までの経路には次の3タイプの要因が絡みます。

要因のタイプ 内容
職場のストレッサー 仕事そのものから生じる負荷 過重業務、裁量の低さ、役割葛藤、人間関係
個人的要因 個人が元々持っている属性 年齢、性別、パーソナリティ、価値観
仕事以外の要因 プライベート由来のストレス 家族、健康、ライフイベント

ストレッサーそのものについては、以下の記事で詳しくまとめていますので、セットでご覧ください。

知っておきたいストレス反応とストレッサー

緩衝要因としての「上司・同僚・家族からの支援」

このモデルの本当のキモは、ストレッサー・個人要因・仕事以外の要因があっても、すぐにストレス反応につながるわけではないという点です。その間にある緩衝要因が、ストレス反応を抑える役割を果たします。

緩衝要因 期待される働き
上司からの支援 業務負荷・役割葛藤の軽減、話を聴く
同僚からの支援 協働での助け合い、承認、情報共有
家族からの支援 プライベートの回復、感情の受け止め

つまり、NIOSHの職業性ストレスモデルが教えてくれる本質は「ストレッサーをゼロにする」ではなく、「緩衝要因を企業として意図的に設計する」ということです。

ただし、家族からの支援までは企業が直接介入しにくいため、企業のアクションとしては上司・同僚からの支援をどう強めるか、つまりラインケアに集約されます。

メンタルヘルスの4つのケアを理解しよう!

ラインケアで求められる管理監督者(上司)の4つの役割

上司・同僚からの3つの支援|業務支援・精神支援・内省支援

では、上司や同僚からの支援には具体的にどんな種類があるのか。ここでは東京大学の中原淳氏が『職場学習論』で整理している、職場における3つの支援を紹介します。

職場における3つの支援

支援の種類 内容 具体行動の例
業務支援 仕事の進め方・知識・スキルの支援 業務のコツを教える、仕事の配分を調整する
精神支援 感情面での支援、受容・承認 話を聴く、労いの言葉をかける、認める
内省支援 振り返りを促し、学びと成長を支援 質問で気づきを促す、フィードバックする

NIOSHの「緩衝要因としての支援」は、抽象的にひとくくりにすると現場で何をすればよいかわかりません。業務支援・精神支援・内省支援の3つに分解することで、管理職の行動として落とし込めるようになります。

部下との関わりを振り返るチェックリストとしても、「最近、この3つの支援を部下ごとにどれだけできていたか?」と自問するとギャップが見えてきます。

メンタルヘルス対策の”形”を超えるために

NIOSHモデルと3つの支援を重ねると、職場のメンタルヘルス対策に必要な打ち手が見えてきます。

よくある”形だけ”対策 NIOSH視点で強化できること
ストレスチェックを年1回実施して終わり 結果を部署単位で読み解き、ストレッサー側を減らす
産業医面談を案内するだけ 上司の精神支援・内省支援を日常の1on1に組み込む
「メンタル不調者がいたら連絡して」と言うだけ 管理職にラインケアの具体行動を研修で練習してもらう

ストレス対策の周辺トピックについても整理していますので、関心のある部分からご覧ください。

メンタルヘルス対策で行うべき3つの予防

バーンアウトを防ぐ問題焦点型コーピングとポジティブ感情

上司との関係性が残業時間やストレスと与える影響

まとめ

NIOSHの職業性ストレスモデルが教えてくれるのは、「ストレッサーをゼロにする」より「緩衝要因を設計する」ほうが、企業にできることが多いという視点です。

NIOSH 職業性ストレスモデル

具体的には、上司・同僚からの3つの支援(業務支援/精神支援/内省支援)を管理職の日常行動として強化することが、現場で効くメンタルヘルス対策になります。

関連研修のご紹介|ラインケアを体験で学ぶゲーム型研修「ストマネ」

ラインケア(上司・同僚からの支援)を体験型で学べるメンタルヘルス対策研修として、弊社ではゲーム型研修「ストマネ」をご用意しています。NIOSHモデルの「緩衝要因」に相当する”支援する側のふるまい”を、チームで疑似体験しながら学べる研修です。

「ストマネ」実施の流れ|メンタルヘルス研修

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