NIOSH職業性ストレスモデルの全体像|ストレッサー削減と緩衝要因(上司・同僚・家族の支援)設計の両輪が現場で効くメンタルヘルス対策

【結論】NIOSHの職業性ストレスモデルは、職場のストレッサーは完全にゼロにできない以上、ストレッサー側の削減(業務量調整・対人関係改善・役割明確化)と並行して、上司・同僚からの支援といった「緩衝要因」を企業が意図的に設計することの重要性を示します。
具体的には、東京大学の中原淳氏が提唱する「業務支援」「精神支援」「内省支援」の3種類の支援を、管理職の日常行動として強化することが有効です。
これらの支援を日常の1on1や研修に組み込むことで、形だけのストレスチェック制度を超え、現場で本当に機能するメンタルヘルス対策を実現できます。

目次

1. NIOSHの職業性ストレスモデルとは
2. 緩衝要因としての「上司・同僚・家族からの支援」
3. 上司・同僚からの3つの支援|業務支援・精神支援・内省支援
4. メンタルヘルス対策の"形"を超えるために
5. まとめ
6. ストレスマネジメント・メンタルヘルス研修|ストマネ導入をご検討の方へ

労働安全衛生法の改正でストレスチェック制度が義務化されて10年が経過し、2025年現在、多くの企業がメンタルヘルス対策の”形”は整えてきました。一方で、「制度は回しているのに、実感として効いている気がしない」という声も増えています。

その原因を考えるうえで改めて見直したいのが、メンタルヘルスマネジメントの世界で最も有名な職業性ストレスモデルのひとつ、米国国立職業安全保健研究所(NIOSH)のNIOSHの職業性ストレスモデルです。

NIOSH 職業性ストレスモデル

NIOSHの職業性ストレスモデルとは

NIOSHの職業性ストレスモデルは、職場のストレッサーがどのような経路でストレス反応・疾病に結びつくかを整理した枠組みです。上の図が示すように、ストレス反応までの経路には次の3タイプの要因が絡みます。

要因のタイプ 内容
職場のストレッサー 仕事そのものから生じる負荷 過重業務、裁量の低さ、役割葛藤、人間関係
個人的要因 個人が元々持っている属性 年齢、性別、パーソナリティ、価値観
仕事以外の要因 プライベート由来のストレス 家族、健康、ライフイベント

ストレッサーそのものについては、以下の記事で詳しくまとめていますので、セットでご覧ください。

知っておきたいストレス反応とストレッサー

緩衝要因としての「上司・同僚・家族からの支援」

このモデルの本当のキモは、ストレッサー・個人要因・仕事以外の要因があっても、すぐにストレス反応につながるわけではないという点です。その間にある緩衝要因が、ストレス反応を抑える役割を果たします。

緩衝要因 期待される働き
上司からの支援 業務負荷・役割葛藤の軽減、話を聴く
同僚からの支援 協働での助け合い、承認、情報共有
家族からの支援 プライベートの回復、感情の受け止め

つまり、NIOSHの職業性ストレスモデルが教えてくれる本質は、「ストレッサーをゼロにする」のは現実的ではないという前提に立ち、ストレッサー側の削減(業務量調整・対人関係改善・役割明確化)に加えて「緩衝要因を企業として意図的に設計する」という両輪の視点を持つことです。

ただし、家族からの支援までは企業が直接介入しにくいため、企業のアクションとしては上司・同僚からの支援をどう強めるか、つまりラインケアに集約されます。

メンタルヘルスの4つのケアを理解しよう!

ラインケアで求められる管理監督者(上司)の4つの役割

上司・同僚からの3つの支援|業務支援・精神支援・内省支援

【要点】職場における支援は「業務支援」「精神支援」「内省支援」の3種類に整理できます。業務支援は仕事の進め方への助言、精神支援は感情面の受容と共感、内省支援は本人の振り返りを促す関わりを指します。これら3つを管理職の日常行動として実装することが、NIOSHモデルの「緩衝要因」を現場で機能させる具体策です。

では、上司や同僚からの支援には具体的にどんな種類があるのか。ここでは東京大学の中原淳氏が『職場学習論』で整理している、職場における3つの支援を紹介します。

職場における3つの支援

支援の種類 内容 具体行動の例
業務支援 仕事の進め方・知識・スキルの支援 業務のコツを教える、仕事の配分を調整する
精神支援 感情面での支援、受容・承認 話を聴く、労いの言葉をかける、認める
内省支援 振り返りを促し、学びと成長を支援 質問で気づきを促す、フィードバックする

NIOSHの「緩衝要因としての支援」は、抽象的にひとくくりにすると現場で何をすればよいかわかりません。業務支援・精神支援・内省支援の3つに分解することで、管理職の行動として落とし込めるようになります。

部下との関わりを振り返るチェックリストとしても、「最近、この3つの支援を部下ごとにどれだけできていたか?」と自問するとギャップが見えてきます。

メンタルヘルス対策の”形”を超えるために

【要点】”形だけ”のメンタルヘルス対策をNIOSH視点で強化する打ち手は3つあります。①ストレスチェック結果を部署単位で読み解きストレッサーを減らす、②上司の精神支援・内省支援を日常の1on1に組み込む、③管理職向けの体験型研修でラインケア行動を体得させる、です。制度の実施だけでは緩衝要因は機能せず、現場の支援行動が変わって初めてメンタルヘルス対策が”効く”状態になります。

NIOSHモデルと3つの支援を重ねると、職場のメンタルヘルス対策に必要な打ち手が見えてきます。

よくある”形だけ”対策 NIOSH視点で強化できること
ストレスチェックを年1回実施して終わり 結果を部署単位で読み解き、ストレッサー側を減らす
産業医面談を案内するだけ 上司の精神支援・内省支援を日常の1on1に組み込む
「メンタル不調者がいたら連絡して」と言うだけ 管理職にラインケアの具体行動を研修で練習してもらう

ストレス対策の周辺トピックについても整理していますので、関心のある部分からご覧ください。

メンタルヘルスの一次予防・二次予防・三次予防とは?企業の具体策を解説

バーンアウトを防ぐ問題焦点型コーピングとポジティブ感情

上司との関係性が残業時間やストレスと与える影響

まとめ

【要点】NIOSHの職業性ストレスモデルが示すのは、職場のストレッサーは完全にゼロにできない以上、ストレッサー側の削減と並行して、上司・同僚からの支援を「緩衝要因」として企業が意図的に設計することの重要性です。具体的には、業務支援・精神支援・内省支援の3つを管理職の日常行動として強化することが、現場で効くメンタルヘルス対策につながります。形だけのストレスチェック制度を超えて、”支援する側のふるまい”を組織的に設計する視点が必要です。

NIOSHの職業性ストレスモデルが教えてくれるのは、「ストレッサーをゼロにする」のは難しい以上、ストレッサー削減と「緩衝要因の設計」を両輪で進めることが、企業にできる打ち手の幅を広げるという視点です。

NIOSH 職業性ストレスモデル

具体的には、上司・同僚からの3つの支援(業務支援/精神支援/内省支援)を管理職の日常行動として強化することが、現場で効くメンタルヘルス対策になります。

NIOSH職業性ストレスモデル・ラインケアに関するよくある質問

Q. NIOSHの職業性ストレスモデルにおける「緩衝要因」とは何ですか?

A. NIOSHモデルでは、職場のストレッサー(仕事量・対人関係など)から急性ストレス反応を経て疾病へ進む過程を、上司・同僚・家族からの支援が緩和する「緩衝要因」として位置づけています。ストレッサーを完全にゼロにできない以上、企業が意図的に「緩衝要因」を強化する設計を行うことが、現場で効くメンタルヘルス対策の鍵となります。

Q. ラインケアで管理職が強化すべき3つの支援とは何ですか?

A. 東京大学・中原淳氏が提唱する「業務支援」「精神支援」「内省支援」の3つです。業務支援は仕事の進め方への助言、精神支援は感情面の受容と共感、内省支援は本人の振り返りを促す関わりを指します。これら3つを管理職の日常行動として実装することで、NIOSHモデルの「緩衝要因」が現場で機能するようになります。

Q. 形だけのストレスチェック制度を超えるためには何が必要ですか?

A. 制度の運用にとどまらず、緩衝要因である「支援する側のふるまい」を管理職スキルとして定着させることが必要です。1on1や研修を通じて業務・精神・内省の3支援を体感的に学べる場を設けることで、制度上の対応を超えて現場で実際に機能するメンタルヘルス対策が実現します。

ストレスマネジメント・メンタルヘルス研修|ストマネ導入をご検討の方へ

ゲーム型研修「ストマネ」

2026年2月現在、ストマネの導入社数は約60社、受講者満足度は4.92(5点満点)となっております。対象人数は4〜40名(1チーム4名推奨、100名以上での実施実績もあり)、実施時間は1時間半〜2時間程度です。

ストマネ 受講者満足度

ラインケア(上司・同僚からの支援)を体験型で学べるメンタルヘルス対策研修として、弊社ではゲーム型研修「ストマネ」をご用意しています。NIOSHモデルの「緩衝要因」に相当する”支援する側のふるまい”を、チームで疑似体験しながら学べる研修です。

「ストマネ」実施の流れ|メンタルヘルス研修

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この記事を書いた人

千葉 順
千葉 順
株式会社HEART QUAKE 代表取締役
元法政大学兼任講師(キャリアデザイン論)
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