看護・医療やIT企業など不測の事態が生じたときに顧客に与える影響が大きいという企業は多々あります。

そこで、不測の事態を起こさない、また、不測の事態が起きたときに早急に対応するためにはどのような組織であるべきか?というのを研究したのが高信頼性組織という概念です。

高信頼性組織とは?

高信頼性組織(HRO:High Reliability Organization)という考え方はミシガン大学のカール・ワイクらによって2001年に提唱されました。

彼らの研究で、不測の事態をうまく管理できるかどうかは以下の5つの要件を日々のオペレーションから意識できているかによるとしています。

1.失敗から学ぶ
2.単純化への抵抗
3.オペレーションの重視
4.復旧能力を高める
5.専門知識の尊重

各項目を少し具体的に説明していきます。

失敗から学ぶは文字通り、失敗を振り返り、失敗しないシステムに変更すること、という意味ですが、「問題、ミス、過失、失敗などを発見した担当者は評価される」といったいわゆるヒヤリ・ハット対策も含まれます。

単純化への抵抗「業務において、何にでも疑問を抱くことが奨励されている」など単純化された業務の中でも健全な批判を持つことの重要性を表しています。

オペレーションの重視「問題が発生した場合、特に現場の人間が対応策の決定権者にいつでもコンタクトできる」といった現場主導で組織にアクションを起こせるかどうかを表しています。

復旧能力を高める「業務に必要な教育訓練に、資源が継続的に投入されている」など、日頃から担当者の知識・スキルを高めているかどうか、または、「担当者は非公式に良く集まり、問題の解決策を話し合う」といった問題解決のためのネットワークが存在しているかどうかを表しています。

最後に専門知識の尊重とは「不測の事態が起きたとき、地位に関係なくもっともふさわしい人間が意思決定を行う」といったトップのマインドを表しています。

平時と有事の高信頼性組織のプロセス

日本における高信頼性組織研究の第一人者である明治大学 中西 晶 教授によれば平時と有事の高信頼性組織プロセスは以下の図のように表すことができます。


画像出典元:https://www.jpcert.or.jp/present/2008/20080220MEIJI-Nakanishi_sama.pdf

上図でも分かる通り、重要なのは中央に書かれているマインドであり、平時から対話と確認を行っているマインドフルな組織であることの重要性が説かれています。

電気通信事業における実験結果

最後に、先程紹介した高信頼性組織の5つの要素と、実際の障害発生の関連、及び、障害回復時間との関連の調査を行った研究を紹介します。

研究では電気通信事業に関わる企業、団体、官公庁のメンバーに対して質問に回答してもらい、分析した結果、以下のような関連性が明らかとなっています。

上図の読み方としては、単純化への抵抗復旧能力が「カテゴリーの精緻化(せいちか)」に強い影響を与えていることがわかります。

なお、カテゴリーの精緻化(せいちか)とは、「問題が発生したとき、徹底的に分析し て本質の把握に努めようとする」や、「例外的に発生しうる事象があらかじめリストアップされ、対応方法とともに部門で共有されている」といった問題に対して、その本質、発生原因について詳細に分析することで問題を分類することを表しています。

また、新たな対処とは「障害発生防止のためにコストをかける必要がある」や、「自分の能力を超えた職務への挑戦が奨励される」などを表しています。

図を見る限り、カテゴリーの精緻化が障害発生頻度の少なさと、障害回復時間の短さに強い影響を与えていることがわかります。

したがって、「業務において、何にでも疑問を抱くことが奨励されている」といった単純化への抵抗や、「業務に必要な教育訓練に、資源が継続的に投入されている」といった復旧能力を高めることが不測の事態に対応するための特に重要な要素と言えるでしょう。

なお、本記事は下記の論文を参考に記述しています。

情報通信産業における高信頼性組織の研究
─安全性・信頼性を確保できる組織力とは─
代表研究者 中西 晶 明治大学経営学部教授
共同研究者 髙木 俊雄 沖縄大学法経学部専任講師

高信頼性組織概念の可能性とその実証的研究
高木俊雄


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