内定承諾後、e-learning・資格取得推奨・プロジェクト型ワークなどの形で内定者フォローを実施する企業は増えていますが、地方在住や海外留学中の内定者が参加しにくい・コストが嵩むといった課題を抱える担当者も多いはずです。本記事では新しい内定者フォローの選択肢として、「奨学本」制度を提案します。

結論:本を貸与・贈与するだけの低コスト内定者フォロー

奨学本(しょうがくぼん)とは、内定者にビジネス書や技術書を会社負担で購入・貸与する仕組み
・地方・海外の内定者を含め全員が同時に参加できる非同期型の施策
・年間予算10万円程度でも運用可能なため、懇親会や合宿よりも低コスト・高継続性
・IT企業での技術書提供は特に喜ばれやすい

既存の内定者フォローの限界

既存の内定者フォロー施策には、以下のような構造的な制約があります。

懇親会/オフィス見学:地方・海外内定者の参加ハードルが高い/1日限定の単発体験
e-learning:受講の強制感が出やすく、内発的学習動機を引き出しにくい
内定者インターン:拘束時間が長く、学業やアルバイトとの両立が難しい

これらの施策は狙いが明確な反面、「同時に・全員を」カバーすることが難しいケースが多いです。そこでリスク/コスト/効果のバランスが良い新しい選択肢として、奨学本制度を検討してみる価値があります。

奨学本とは

奨学本で購入した書籍の例

奨学本とは、奨学金の発想になぞらえた「本をあげる/貸す制度」です。内定者が希望するビジネス書や技術書の購入費を会社が全額(または一部)負担します。

なぜ「奨学本」なのか:学生にとっての本の価格ハードル

大学生のアルバイト代で1冊1,500円程度のビジネス書3,000円近くする技術書を継続的に購入するのは現実的にハードルがあります。結果として入社直前の学びの蓄積量が、家計状況に左右されてしまいます。

奨学本は、この「読みたいけど手が出ない」状態を企業側が取り除き、内定者の主体的な学びを後押しする施策です。

IT企業・エンジニア採用との相性

特にIT企業での技術書提供は、新卒エンジニアにとって実務直結の学びになるため非常に喜ばれます。技術書は単価が高く、自費購入の量が仕事力に直結する業界性があるため、奨学本が「入社後の戦力化」に効く代表的な領域です。

地方・海外内定者も同時参加可能

郵送またはレシート精算ベースで運用できるため、内定者の物理的な居場所を問わず全員が同時に制度の恩恵を受けられます。グローバル採用や地方採用を強化している企業ほど、奨学本の効果が相対的に大きくなります。

奨学本の運営規約(例)

実運用ではいくつかの規約を決めておくと、公平性と予算管理が両立できます。弊社が実際に運用した規約例を以下に示します。

・対象はビジネス書もしくは技術書とする
2人以上の内定者が希望したものを購入する(単なる個人買いを防ぐ)
・購入希望の際にはその本を希望する理由を明記する
・全体の予算は年間10万円以内
・本は会社側で購入し、内定者宅へ郵送する
・(海外大卒の場合)現地購入後のレシートをメールで送付してもらい精算
・読了後は同期となる内定者に感想を共有する
・読み終わった本は他に希望する内定者に郵送する(リレー形式)

このスキームであれば、内定者間の情報流通が自然発生するため、懇親会で意識的に作る「同期との絆」を日常的に形成できます。

奨学本がもたらす副次効果

学びの動機付け:内発的な選書により学習意欲が高まる
同期のネットワーク構築:本の感想共有・リレー貸与で自然な対話が生まれる
指向性の観察:どの内定者がどんな本を選ぶかで、指向性を採用担当者が把握できる
採用ブランディング:学びへの投資姿勢を示せる(SNS等での口コミにもつながりやすい)

特に3つめの「指向性の観察」は、内定辞退と選考段階の指向性見極めに関する記事でも述べた選考の盲点をカバーする副作用として機能します。

奨学本を始める際の3ステップ

・ステップ1:年間予算の設定(年10万円〜が目安)
・ステップ2:運営規約を採用サイト内定者向けページに掲載
・ステップ3:内定通知時に奨学本の案内を同封

大規模な社内承認が必要な施策ではないため、人事部門の小さな裁量でも試行しやすいのが奨学本の利点です。

採用設計を深く学びたい方への推薦書

内定者フォロー・採用ブランディングを体系的に学びたい方には以下の書籍がおすすめです。

よくある質問

Q. どの程度の年間予算から始められますか

10万円程度でも十分開始可能です。内定者10名規模であれば1人あたり1〜2冊相当が確保でき、共有リレー方式を併用すれば実質的な冊数はさらに増えます。

Q. 本の選定は誰が行いますか

基本は内定者自身が選書します。採用担当が候補リストを提示する運用も可能ですが、主体的な学びを引き出す狙いから内定者選書を推奨します。

Q. 読まれない・回らないリスクはありますか

読書進捗の簡単な報告(感想200字程度)をルール化することで自然と読了率が上がります。強制にせず、同期内での気づき共有を楽しむ仕組みに位置づけるのがコツです。

まとめ

奨学本は、低コスト・地方海外対応・継続性を兼ね備えた新しい内定者フォロー施策です。特にIT企業や、学習意欲の高い層をターゲットにした採用を行う企業では、費用対効果の高いフォロー手段になります。

内定者懇親会や合宿とは異なる「日常の中で続く学びのフォロー」として、奨学本制度をぜひ検討してみてください。


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