RETAINモデルとは|研修ゲームの質を6項目・63点満点で評価

このモデルは6つの評価項目を0から3点で採点し、独自の重み付けを行うことで最高得点63点満点として教育効果を数値化します。
明確なルーブリックに沿って評価でき、点数が高いゲームほど利用者のやる気や参加性を高める効果があることが研究で実証されています。
目次
1. RETAINモデルとは
2. RETAINモデルの6つの評価項目
3. 採点方法|ルーブリックと重み付けで63点満点
4. RETAINモデルを使った研究で分かっていること
5. 研修ゲームを選ぶときにRETAINモデルをどう活かすか
6. 参考書籍
7. まとめ
弊社が提供しているような教育・研修用のゲームはビジネスゲームまたはシリアスゲームと呼ばれています。教育ゲーム、研修ゲームと呼ばれることもあります。
ここ数年で企業研修用のゲームを開発・提供している企業・団体が増えてきました。量が増えてきたら次は質ということになりますが、ではどのように質を評価するのかという問題が発生します。そこで紹介したいのが、シリアスゲームの評価指標であるRETAINモデルです。
RETAINモデルとは
RETAINモデルとは、教育用ゲーム(シリアスゲーム)が学習内容をどれだけ効果的にゲームの中へ組み込めているかを、6つの観点から採点する評価枠組みです。2008年にGlenda A. Gunter、Robert F. Kenny、Erik H. Vickの3名が論文「Taking Educational Games Seriously」で提唱しました。名称は6つの評価項目、Relevance(関連性)・Embedding(埋め込み)・Transfer(転移)・Adaptation(適応)・Immersion(没入)・Naturalization(自然化)の頭文字をつなげたものです。
RETAINモデルの特徴は、「面白いかどうか」ではなく「学習内容がゲームの文脈にどれだけ深く溶け込んでいるか」を評価する点にあります。ゲームの合間にクイズが挟まるだけの教材は、遊びと学びが分離しているため低い評価になります。逆に、ゲームを進めること自体が学習内容の理解や応用になっている教材ほど、高い評価になります。

RETAINモデルの6つの評価項目
6つの評価項目の意味を、弊社の言葉でかみ砕いてまとめると次のとおりです。研修ゲームを検討する際は、右列の「評価の問い」をそのままチェックリストとして使えます。
| 評価項目 | 意味(弊社要約) | 評価の問い |
|---|---|---|
| Relevance(関連性) | 学習内容や提示の仕方が、学習者の年齢・知識レベル・目的に合っているか | 学習者にとって自分ごとになる題材か |
| Embedding(埋め込み) | 学習内容がゲームのストーリーや世界観に内在化しているか。後付けのクイズになっていないか | 学びとゲームが一体化しているか |
| Transfer(転移) | ゲームで学んだことを、別の場面や現実の仕事に応用できるか | ゲームの外でも使えるか |
| Adaptation(適応) | ゲームを通じて学習者の考え方や行動が変化するか。既有知識を組み替える機会があるか | プレイ前後で学習者が変わるか |
| Immersion(没入) | 学習者が知的・感情的にゲームに入り込み、主体的に関わっているか | 時間を忘れて取り組めるか |
| Naturalization(自然化) | 学んだ知識やスキルが定着し、意識せずに使えたり他者に説明できるレベルになるか | 身についた状態まで到達するか |
採点方法|ルーブリックと重み付けで63点満点
RETAINモデルでは、6項目それぞれを0〜3点の4段階(Level 0〜3)で採点し、項目ごとに決められた重み付けの係数を掛けて合計します。係数は論文のTable 5に示されており、最高得点は63点です。
| 評価項目 | 重み(係数) | Level 3 の得点 |
|---|---|---|
| Relevance | 1 | 3 |
| Embedding | 3 | 9 |
| Transfer | 5 | 15 |
| Adaptation | 4 | 12 |
| Immersion | 2 | 6 |
| Naturalization | 6 | 18 |
| 合計 | 21 | 63点 |
重みを見ると、Naturalization(自然化)とTransfer(転移)の配点が大きいことが分かります。つまりRETAINモデルは、「その場で楽しく学べたか」よりも「学んだことが定着し、現実で使えるようになったか」を重視する評価軸だと言えます。

Using the RETAIN Model to Design Endogenous Fantasy into Standalone Educational Games
Table 5 RETAIN weighting chartより
Glenda A. Gunter, Robert F. Kenny, Erik H. Vick
https://www.learntechlib.org/p/166544/
なお、0〜3点の振り分けは、0:全く感じない〜3:とても感じる、のような主観的な尺度ではなく、以下の図のようにルーブリックが公開(評価軸が明示)されています。

例えばRelevance(関連性)では、Level 0は「ストーリーが学習の刺激にならず、学習者が学ぶべき内容を把握できない」、Level 1は「年齢や内容に見合っているが、教育的な焦点が限られる」、Level 2は「学習目標が明確に定義され、学ぶ意欲を自然に引き出す」、Level 3は「さらに学習者の生活や周囲の世界と関連し、発達段階に見合った認知的な挑戦を含む」というように、段階ごとの条件が文章で定義されています(論文Table 4より弊社要約)。評価者の好みに左右されにくく、複数のゲームを同じ物差しで比較できるのがRETAINモデルの実用上の強みです。
RETAINモデルを使った研究で分かっていること
日本の研究では、普段からゲームを行う人のほうがRETAINモデルの点数が高いという発表があり、また、RETAINモデルの点数が高い人ほどやる気、リラックス、参加性などが高かったと報告されています。
-RETAINモデルによる評価-
稲垣達朗, 唐瀬英子(2011)
企業研修の文脈に置き換えると、この結果は研修ゲームの設計品質が受講者の姿勢に直結することを示唆しています。研修効果の測定というテーマではカークパトリックの4段階評価が広く知られていますが、RETAINモデルはその手前、つまり「教材そのものの質」を測る物差しとして位置づけると整理しやすくなります。
研修ゲームを選ぶときにRETAINモデルをどう活かすか
RETAINモデルは本来、デジタル教材の設計・評価のために作られた枠組みですが、6つの問いは企業研修で使うカードゲームやボードゲームを選ぶときにもそのまま使えます。弊社では、研修ゲームを検討する際に特に次の3点を見ることをおすすめしています。
・Embedding(埋め込み):研修で伝えたいテーマ(例:全体最適、傾聴、コンプライアンス)が、ゲームのルールや勝ち筋そのものに組み込まれているか。座学の後にゲームで遊ぶだけになっていないか
・Transfer(転移):ゲーム後の振り返りで「職場のどの場面に当てはまるか」を言語化する時間が設計されているか
・Naturalization(自然化):研修後に参加者が学んだ内容を自分の言葉で説明できるか、行動として続くか
この観点は、学習意欲の設計理論であるARCSモデルや、シリアスゲーム理論から見たビジネスゲーム研修のメリットと合わせて読むと、研修ゲームの選定基準がより明確になります。弊社の研修ゲームについても、RETAINモデルの6つの問いは設計を見直す際の有用なチェックリストになると考えています。
弊社が研修で提供しているビジネスゲームについては、目的別の選び方と比較表を下記の記事にまとめています。RETAINモデルの観点で自社の研修ゲームを選ぶ際の参考にしてください。
研修でよく使われるビジネスゲームの定番7選|目的別の選び方と比較表つき

参考書籍
シリアスゲームそのものについて、定義や研究の広がりを体系的に学びたい方には、藤本徹氏らによる『シリアスゲーム』(コロナ社、2024年)をおすすめします。RETAINモデルのような評価の話を、シリアスゲーム研究全体の中で位置づけて理解する助けになります。
まとめ
RETAINモデルは、教育・研修用ゲームの質を「学習内容がゲームにどれだけ深く組み込まれているか」という観点から、6項目・63点満点で数値化する評価枠組みです。重み付けはTransfer(転移)とNaturalization(自然化)が大きく、学びの定着と現実への応用を重視しています。研修ゲームを選ぶときは、面白さだけでなく、テーマの埋め込み・転移・定着の3点を確かめてみてください。


