燃え尽き症候群を測る3つの因子|情緒的消耗・脱人格化・個人的達成感の低下

【結論】燃え尽き症候群(バーンアウト)とは、長期の職務ストレスにより情緒的消耗・脱人格化・個人的達成感の低下の3因子が同時進行する状態を指します。MBI(マスラック・バーンアウト・インベントリー)または日本語版バーンアウト尺度(17項目)で測定し、特に情緒的消耗のスコアが高い場合は早期対処が必要です。WHOは2019年にICD-11で「職場で管理されていない慢性的なストレスから生じる症候群」と公式に定義しています。

目次

1. バーンアウト(燃え尽き症候群)とは
2. MBIによる3つの因子
3. MBI-GS(一般職向けバーンアウト尺度)
4. MBI・MBI-GS・日本語版尺度の比較
5. 日本語版バーンアウト尺度
6. バーンアウトを引き起こす要因
7. バーンアウトへの対処
8. 組織としてのバーンアウト対策
9. 関連研修のご紹介|メンタルヘルス研修で使えるゲーム
10. まとめ

「仕事に情熱を持っていたはずなのに、ある日から何も感じなくなった」「休んでも回復しない疲れが続いている」——こうした状態を放置すると、復職困難な深刻な状態に至ることがあります。日本でもヒューマンサービス職を中心に注目が高まり、労務管理・メンタルヘルス研修の重要テーマとなっています。

本記事ではバーンアウトを測定するMBI(マスラック・バーンアウト・インベントリー)、一般職向けのMBI-GS、そして日本語版バーンアウト尺度の3つを比較しながら、セルフ診断の手順と組織予防策を解説します。

バーンアウト(燃え尽き症候群)とは

バーンアウト(燃え尽き症候群)とは、長期にわたる職務ストレスにより心身のエネルギーが枯渇し、仕事への意欲や効力感を失う状態のことです。研究は1970年代中盤から本格化し、アメリカの心理学者クリスティーナ・マスラック(Christina Maslach)が開発したMBI(Maslach Burnout Inventory)が標準尺度として世界中で用いられています。

MBIによる3つの因子

MBIは、バーンアウトを以下の3つの因子で捉えます。

1. 情緒的消耗(Emotional Exhaustion)
仕事を通じて情緒的に力を出し尽くし、消耗してしまった状態

2. 脱人格化(Depersonalization)
サービスの受け手に対する無情で、非人間的な対応が増える

3. 個人的達成感の低下(Reduced Personal Accomplishment)
職務に関わる有能感・達成感が低下する

特に1つ目の情緒的消耗こそがバーンアウトの主症状であるという主張が多く、脱人格化個人的達成感の低下は情緒的消耗の結果として現れるのではないか、という説もあります。

情緒的消耗は「仕事を通じて情緒的に力を出し尽くし、消耗してしまった状態」を指すため、情緒的資源を多く使うヒューマンサービス職、特に看護師・教師・介護職を中心にした研究が多く行われてきました。MBIはヒューマンサービス職向けの尺度と言えます。

MBI-GS(一般職向けバーンアウト尺度)

MBI-GS(General Survey)とは、ヒューマンサービス職以外にも適用できるよう拡張された一般職向けのバーンアウト尺度のことです。オフィスワーカー・IT・製造・サービス業など、業種を問わず使えるのが特徴です。

MBI-GSではMBIの3因子が以下のように拡張されています。

1. 消耗感(Exhaustion)
「情緒的」が取れて、いわゆる疲労の要素が強くなっている

2. 冷笑的態度(シニシズム、Cynicism)
サービスの受け手ではなく、仕事そのものへの冷めた態度

3. 職務効力感(Professional Efficacy)
サービス提供の職務ではなく、職務一般に拡張された効力感

近年の企業メンタルヘルス研究では、MBI-GSを基準にしたバーンアウト調査が主流になっています。

MBI・MBI-GS・日本語版尺度の比較

ここまで3つの尺度を紹介してきました。それぞれの対象職種・項目数・推奨用途を下表で整理します。

尺度 対象職種 項目数 推奨用途
MBI ヒューマンサービス職(看護師・教師・介護職など) 22項目 対人援助職のバーンアウト研究
MBI-GS 職種不問(一般オフィスワーカー含む) 16項目 企業の従業員サーベイ
日本語版バーンアウト尺度 日本国内のヒューマンサービス職中心(汎用化も可) 17項目 日本企業のセルフチェック・国内研究

セルフチェックや日本国内の研修・組織分析では、文化的適合性とアクセスのしやすさから日本語版バーンアウト尺度が選ばれることが多くなっています。

日本語版バーンアウト尺度

日本語版バーンアウト尺度とは、MBIを参考に久保真人氏らが日本のヒューマンサービス現場に適合させて開発した17項目の測定尺度のことです。学術研究だけでなく、個人のセルフチェックとしても活用されています。

日本語版バーンアウト尺度 17項目

画像参照:バーンアウト (燃え尽き症候群) ヒューマンサービス職のストレス(久保真人 2007, 日本労働研究雑誌 No.558)

17項目の構成

日本語版尺度は、MBIの3因子に対応する以下の3つのサブスケール、合計17項目で構成されます。

E:情緒的消耗感(6項目)— 仕事を通じて情緒的に消耗した状態を測る
D:脱人格化(5項目)— 顧客や同僚への無情・非人間的態度を測る
PA:個人的達成感(6項目、逆転項目)— 職務上の有能感・達成感を測る

質問例として、E(情緒的消耗感)には疲労困憊感に関する項目、D(脱人格化)には同僚や顧客への忌避感に関する項目、PA(個人的達成感)には仕事への喜びに関する項目(逆転)といったものが含まれます。全17項目の文面は上記出典PDFの表1で確認できます。

採点手順

日本語版バーンアウト尺度のセルフチェック手順は次の4ステップです。

1. 各項目について、最近6ヶ月の経験頻度を「いつもある」「しばしばある」「時々ある」「まれにある」「ない」の5段階で回答する
2. PA(個人的達成感)の6項目は逆転項目のため、スコアを反転させて集計する
3. E・D・PAそれぞれのサブスケールごとに合計点を算出する
4. 特にE(情緒的消耗感)のスコアが高い場合はバーンアウトの主症状にあたるため、早期対処を検討する

カットオフ値(バーンアウト確定の閾値)は公式には定められていませんが、サブスケールごとのスコア比較と経時変化のモニタリングが重要です。詳細な因子分析と臨床的解釈は下記書籍に解説されています。

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