弊社ではゲームを使った楽しい・面白い研修を提供しています。
しかし、問題は楽しいだけで学べないのではないか?ということだと思います。
そこで、今回は「楽しい研修」は学べるのか?というテーマで、論文を紹介し、データで楽しさと気づきの関連性について書いてみたいと思います。

「楽しい研修」は学べるのか?を調べた論文

この記事は下記の論文を参考に書いております。

社会人のアクティブラーニングにおける「気づき」の要因とその効果
共分散構造分析と機械学習による実証研究(2018)

松本 涼平, 柴 直樹, 河合 亜矢子, 大江 秋津

論文の中ではエレファントゲームというSCMのビジネスゲームを実施して、学習者のゲーム中の行動や感じたことを記録し、点数化しています。

例えば、ゲーム中に気づきがあった回数を記録し、1:0回、2:1・2回、3:時々、4:ほとんど、5:常にのように点数化を行います。

同様に、ゲーム中に楽しいと感じたか?も記録し、ざっくり書けば、「楽しさ」と「気づき」には相関があるのか?、また、「楽しさ」や「気づき」は何によって生まれるのか?を調査した論文となります。

楽しいは学べる! という分析結果

これらの調査結果に対して共分散構造分析を行った結果が下記のパズ図です。

楽しい研修

初めてパズ図を見る方はやや分かりづらいと思いますので簡単に解説していきます。まずは下図の赤枠を見てください。

楽しさレベルから気づきレベルに対して矢印が見られます。これは楽しさのレベルが高いと気づきレベルが高くなる相関が認められることを示しています。つまり、楽しい≒学べることがデータとして証明されたわけです。

しかし、気づきは楽しさからだけで説明できるわけではありません
実は他の2つの要因も関連しています。

その2つの要因が赤枠で示した「実務適合レベル」と「戦略改善提案レベル」です。それぞれを簡単に紹介しておきます。

実務適合レベル:ゲームが現実で役に立つと感じた頻度

戦略改善提案レベル:戦略の改善を提案した頻度

つまり、楽しくて、現実で役に立ち、改善ができる(提案する)頻度が高ければ高いほど気づきが得られやすいということになります。ただ楽しいだけでは不十分なようです。

では、楽しさは何によって生まれるのか?下の図を見ていただきたいと思います。

論文によれば楽しさは意見の取りまとめレベルに影響を受けるということです。

意見の取りまとめレベル:意見の取りまとめを行う頻度

論文によれば人は他の人と意見をまとめる頻度が高いほど楽しいと感じることを示しています。したがって、1人で行うゲームよりも、複数人で行うゲームのほうがより楽しいと感じ、結果として気づきも生まれるということになります。

また、この「意見の取りまとめレベル」は「楽しさレベル」だけでなく、「実務適合レベル」や「戦略改善提案レベル」にも影響を与えています。

最後に、気づきは何を生み出すか?ということについて触れておきます。

データによれば、「気づき」は「意見変更」と「共有価値レベル」に影響を与えています。

意見変更:ゲーム開始前とゲーム後のアンケートで意見が変わったかどうか

共有価値レベル:ゲーム終了後にのアンケートで、「知識を共有することの重要性」の点数

したがって、「気づき」があるとその前後で「意見が変更される」可能性が高く、また、「知識共有の重要度」が増すという結果になっています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。この記事で楽しい研修は楽しいだけで学べないという疑念は払拭できたのではないか?と思います。

ただし、気づきを促すには3つの条件があります。

1.実務で使えそうだと思えること

2.戦略の改善が可能なこと

3.複数人で意見の取りまとめが必要なこと

最後に参考文献をもう一度紹介しておきます。

社会人のアクティブラーニングにおける「気づき」の要因とその効果
共分散構造分析と機械学習による実証研究(2018)

松本 涼平, 柴 直樹, 河合 亜矢子, 大江 秋津


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