コイン渡しゲーム」は、チームで仕事を進める際に個別最適よりも全体最適を意識した方が成果が出ることを、わずか15〜20分で体験できるワークショップです。

IT企業ではアジャイル開発カンバン方式の有用性を伝えるために広く活用されており、製造業やサービス業の研修でも「なぜ小ロット生産が有利なのか」を直感的に理解させる教材として注目されています。

この記事では、コイン渡しゲームのやり方・ルールから、結果の読み解き方振り返り(デブリーフィング)の進め方まで、研修担当者がそのまま使える形で解説します。

コイン渡しゲームとは

コイン渡しゲームは、複数の作業者がコインを順番に処理(裏返し)して顧客に届けるという流れを、渡す枚数(バッチサイズ)を変えながら3回繰り返すゲームです。

「20枚まとめて渡す」「5枚ずつ渡す」「1枚ずつ渡す」の3パターンを試すと、1枚ずつの方が全体の完了時間が短くなるという、一見すると不思議な結果が得られます。

この体験を通じて、以下のことを学べます。

・個別の作業効率を上げても、全体の成果が上がるとは限らないこと
バッチサイズ(一度にまとめて処理する量)を小さくすることで待ち時間が減り、全体のスループットが向上すること
・トヨタ生産方式の「7つのムダ」のうち「手待ちのムダ」がいかに大きいか

所要時間は15〜20分程度(説明・実施・振り返り含む)と短いため、研修のアイスブレイクや、本題に入る前のウォーミングアップとしても使いやすいワークです。

コイン渡しゲームのやり方・ルール

準備するもの

・20枚のコイン(10円玉や100円玉など。おはじきやポーカーチップでも代用可)
・ストップウォッチ 2つ(スマートフォンのタイマーでOK)
・記録用のホワイトボードまたは模造紙

役割分担(5人1グループ)

顧客役:コインを最初に渡し、最後に受け取る人
作業者A・B・C:コインを裏返して次の人に渡す人
進行役(タイムキーパー):時間を計測し、結果を記録する人

4人でテーブルを囲むように座り、進行役は横から観察します。

コイン渡しゲーム 配置図

ゲームの流れ

コインの流れ:顧客 → 作業者A → 作業者B → 作業者C → 顧客

各作業者は、受け取ったコインを1枚ずつ裏返して、指定の枚数に達したら次の人に渡します。

進行役が計測する項目:
 a. 各作業者がコインを裏返すのに掛かった時間
 b. 最初の1枚が顧客に戻ってくるまでの時間
 c. 最後の1枚(20枚目)が顧客に戻ってくるまでの時間

ゲームは3ラウンド行い、ラウンドごとにコインを渡す単位(バッチサイズ)を変えます。

第1ラウンド:20枚まとめて渡す
作業者Aは20枚すべてを裏返してから、まとめて作業者Bに渡します。B→C→顧客も同様です。

第2ラウンド:5枚ずつ渡す
5枚裏返したら次の人に渡します。これを4回繰り返して合計20枚を処理します。

第3ラウンド:1枚ずつ渡す
1枚裏返すごとに次の人に渡します。20回繰り返します。

コイン渡しゲーム バッチサイズの違い

結果の見方と気づき

3ラウンドの結果を記録すると、次のような傾向が現れます。

コイン渡しゲーム 結果表

各作業者の処理時間は「長くなる」

1枚ずつ渡す場合、作業者は「裏返す→渡す→受け取る→裏返す→渡す…」を20回繰り返すため、受け渡しの回数が増えた分だけ個人の作業時間は長くなります。

全体の完了時間は「短くなる」

一方で、最初のコインが顧客に届くまでの時間と、すべてのコインが届くまでの時間はバッチサイズが小さいほど短くなります。

実際の計測では、20枚まとめて渡した場合と比べて1枚ずつ渡した場合、最初の1枚が届くまでの時間は約1/12全20枚が届くまでの時間は約1/3にまで短縮されるケースが多く見られます。

なぜこうなるのか?「手待ちのムダ」

20枚まとめて渡す場合、作業者Bは作業者Aが20枚すべてを裏返し終わるまで何もせず待っていることになります。作業者Cも同様です。この「手待ちの時間」こそが、全体の所要時間を長くしている原因です。

1枚ずつ渡す場合は、作業者Aが1枚目を渡した直後に作業者Bが作業を開始でき、全員がほぼ同時に稼働している状態になります。個人の作業時間は増えても、チーム全体としてはムダな待ち時間が激減するのです。

この「手待ちのムダ」は、トヨタ生産方式の「7つのムダ」の1つとしても知られています。

トヨタ 7つのムダ

振り返り(デブリーフィング)の進め方

コイン渡しゲームの効果を最大化するには、実施後の振り返りが重要です。以下の流れで進めると、学びが深まります。

ステップ1:結果を共有する

ホワイトボードに3ラウンドの計測結果を書き出し、全員で確認します。「各作業者の時間は長くなったのに、全体の時間は短くなった」という事実をまず全員で共有しましょう。

ステップ2:問いかける

以下のような質問をファシリテーターから投げかけます。

・「なぜ個人の作業時間は増えたのに、全体の完了時間は減ったのでしょうか?」
・「20枚まとめて渡しているとき、作業者BやCは何をしていましたか?」
・「皆さんの普段の業務で、同じような”手待ち”は発生していませんか?」

ステップ3:業務に置き換える

ゲームの体験を実際の業務に結びつけます。

IT開発の場合:大きな機能をまとめてリリースするより、小さな単位で開発・テスト・リリースを繰り返す方が早く価値を届けられる(アジャイル開発の考え方)
製造業の場合:大ロット生産より小ロット生産の方が在庫を減らし、顧客への納品が早くなる(カンバン方式の考え方)
事務作業の場合:書類を100件まとめて処理してから次の担当者に回すより、10件ずつ回した方が全体の処理完了が早くなる

活用シーン・こんな研修におすすめ

コイン渡しゲームは、以下のような研修で特に効果を発揮します。

・アジャイル開発研修(IT企業)
スクラムやカンバンを導入する前に、「なぜ小さな単位で開発を進めるのか」を体験的に理解してもらうことができます。

・生産管理・トヨタ生産方式研修(製造業)
バッチサイズの削減やジャストインタイムの考え方を、座学だけでなく体験で腹落ちさせたい場合に有効です。

・新入社員研修のチームワーク教育
「自分だけが速くても、チーム全体の成果にはつながらない」という気づきは、新入社員に全体最適の視点を持たせるきっかけになります。

・管理職研修の業務改善ワーク
部門間の連携や業務フローの改善をテーマにした研修の導入ワークとして、課題意識を持たせるのに効果的です。

まとめ

コイン渡しゲームは、準備が簡単(コインとストップウォッチがあればOK)で、短時間(15〜20分)で実施でき、それでいて「全体最適」「バッチサイズ」「手待ちのムダ」といった重要な概念を体験的に学べる優れたワークです。

「個別最適ではなく、全体最適を意識して行動した方がチームとしての成果が出る」——この気づきを、ぜひ研修の中で活かしてみてください。

なお、弊社では全体最適を意識させるためのビジネスゲーム型研修として「ビールゲーム」を用いた研修を提供しております。

ビールゲームは所要時間2〜4時間5〜40名で実施可能な、より本格的なシミュレーションゲームです。サプライチェーン全体の最適化をテーマに、システム思考を体験的に学ぶことができます。

ビールゲーム 研修風景

詳しくはこちらをご覧ください。

全体最適を意識させるためのビジネスゲーム型研修

また、「自分の作業だけに集中すると全体が停滞する」という気づきを、より実践的に体験できるゲームとして「チームクリップ」もご用意しています。

チームクリップは、映像制作会社の社員になりきり、個人タスクとチームプロジェクトの両方を制限時間内に達成するビジネスゲームです。砂時計を使ったタイムアタック形式で、チーム全体の動きを意識して自律的に動く力を体験的に学べます。

コイン渡しゲームで「全体最適」の概念を掴んだ後、チームクリップでより深く実践するという流れもおすすめです。所要時間2〜4時間3名以上で実施可能です。

チームクリップ ゲーム実施の様子

自律型人材を育成するゲーム型研修「チームクリップ」


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