RASA傾聴4ステップ(Receive/Appreciate/Summarize/Ask)インフォグラフィック

RASAフレームワークとは、傾聴力を高めるための4つのステップをまとめた実践手法です。Receive(受け入れる)→ Appreciate(認める)→ Summarize(要約する)→ Ask(質問する)の順で会話を進めることで、相手に「しっかり話を聞いてもらえた」という実感を与える傾聴スキルを身につけることができます。

このフレームワークは、Wall Street Journalのライター Elizabeth Bernstein氏が2014年の記事”Tuning In: How to Listen Better”で紹介した考え方がベースになっており、英語圏のコミュニケーション指導で広く参照されています。この記事では、RASAの各ステップの意味と、すぐ現場で使える具体的な実践方法、そして関連する心理学的な裏付けまでを解説します。

なぜ今、傾聴力が重要視されているのか

経済産業省が提唱する社会人基礎力の「チームで働く力」の1つに「相手の話を丁寧に聞く」傾聴力が含まれています。職場の多様化・リモートワーク化が進むなかで、相手の意図を正確にくみ取る力はますます重要になっています。

社会人基礎力「チームで働く力」

画像引用:経済産業省「社会人基礎力」資料(現在はリンク切れ)

また、ビジネスパーソンを対象にしたとある調査では、「この人は仕事ができそう」と感じるポイントについて、約7割の人が「話を聞くのがうまい人」と回答しています。「話す力」よりも「聞く力」のほうが、仕事のできる印象を左右するという結果です。

仕事ができる人の印象調査

画像引用:PR TIMES 調査結果

とはいえ、「相手の話を丁寧に聞くことが重要」とわかっていても、実際に意識して実践できている人は多くありません。日々の会議や1on1で、相手の話を途中で遮ったり、すぐに自分の意見を言ってしまったりした経験は誰にでもあるはずです。そこで役に立つのが、傾聴の具体的な型を示してくれるRASAフレームワークです。

RASAフレームワークの4つのステップ

RASA傾聴4ステップ(Receive/Appreciate/Summarize/Ask)

RASAは傾聴に必要な行動を4つの英単語の頭文字でまとめたもので、実際の会話の中では以下の上から順番に実践していくステップ形式で使います。

1. Receive(相手の話を受け入れる)

まず最初はReceive、相手の話をいったんそのまま受け入れるステップです。たとえ内容に反論したくても、最初から否定しないことがポイントです。

同じ考え方にイエス・バット法があります。これは、最終的には相手の意見を否定する場合でも、最初は「そうですね(Yes)」と受け入れる入口から入るやり方で、頭ごなしに「それは違う」と言ってしまうと相手の話す気持ちが一気にしぼんでしまうためです。

Receiveで意識すべきは、「聞きながら次に自分が何を言うか考える」ことをやめ、相手の発言が終わるまで判断を保留する姿勢です。これだけでも、相手の話の情報量が倍以上になることがあります。

2. Appreciate(相づちで受け止めていることを示す)

次はAppreciate、「認める」という意味ですが、RASAでは具体的な行動として「相づち」を打つことが推奨されています。参考にしたWSJの原文を引用します。

appreciate, by making little noises such as “hmmm” or “oh”;

Wall Street Journal – Tuning In: How to Listen Better

「ふむふむ」「へぇ」といった小さな音を立てることで、相手に「聞いているよ」というシグナルを送ります。対面であれば、相づちに加えてうなずきも同じ効果を持ちます。オンライン会議ではマイクのノイズになるため、うなずきとチャットの簡単なリアクションで代用するとよいでしょう。

一見すると小さな行動ですが、相づちやうなずきがあるかないかで、話し手の心理的安全性は大きく変わります。

3. Summarize(相手の話を要約して確認する)

3つ目はSummarize、相手の話を要約するステップです。「要約」というと重く感じますが、相手の話のポイントを短く繰り返し、自分の理解が合っているか確認すると考えるほうがイメージに近いです。

例:「つまり、先日のミーティングで発表した企画が、予算の都合で今期は見送りになった、ということですね?」

心理学ではミラーリング効果として知られており、相手の発言を繰り返すことで「あなたの話を理解していますよ」というメッセージを伝えることができます。要約が合っていれば相手は「そう、その通り」と次の話に進めますし、ズレていれば相手は「いや、そこは違って…」と補足してくれるため、誤解を早い段階で解消できます。

4. Ask(質問して相手にもっと話してもらう)

最後はAsk、相手に質問を投げかけて、さらに話をしてもらうステップです。ここでRASAの特徴が出ます。普通の会話だと、要約したあとはつい「自分はこう思う」と意見を言いたくなるところですが、RASAでは自分の意見を言わず、質問で相手にターンを返すのがポイントです。

先ほどのイエス・バット法であれば、ここで「But(しかし)…」と自分の意見を伝えるターンになりますが、傾聴スキルを高めるRASAでは、代わりに「もう少し詳しく教えてもらえますか?」「そのとき、どんな気持ちでしたか?」といった質問を投げかけます。相手にもっと話をしてもらうことで、相手は「自分のことを本当に理解しようとしてくれている」と感じ、信頼関係が深まります。

傾聴の基本ステップとRASAの対応関係

RASAの4ステップは、一般的に傾聴の基本ステップとして語られる流れ(受け止め→共感→確認→問いかけ)にもきれいに対応しています。

RASA 傾聴の基本ステップ 具体的な行動例
Receive 受け止め 否定せず最後まで聞く
Appreciate 共感 相づち・うなずき
Summarize 確認 要約して認識合わせ
Ask 問いかけ 質問で相手に話を返す

RASAを覚えておくことで、会議や1on1で「いま自分はどのステップにいるのか」を意識できるようになり、無意識に自分の話ばかりしてしまう状況を防ぐことができます。

RASAを研修で身につける:傾聴チャレンジゲーム

RASAフレームワークは概念としてはシンプルですが、実際に日々の会話で自然に実践できるようになるには、意識的なトレーニングが欠かせません。HEART QUAKEでは、傾聴スキルをゲーム形式で体験的に学べる研修教材「傾聴チャレンジ」を提供しています。

傾聴チャレンジゲーム

参加者同士で「聞き手」と「話し手」に分かれ、カードに指定された傾聴スキルを意識しながら会話を行う形式のゲームで、RASAで学んだ「受け入れる」「相づち」「要約」「質問」を、実際に体を動かして練習できます。

ゲームの内容や進め方の詳細は下記をご覧ください。

傾聴研修ゲーム「傾聴チャレンジ」のやり方

参考書籍:LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる

傾聴についてさらに深く学びたい方には、ケイト・マーフィ著『LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる』(篠田真貴子監訳、日経BP、2021年)もおすすめです。「話を聞く」ことをテーマに、認知科学・心理学・ジャーナリズムの観点から、なぜ人は聞けないのか・どうすれば聞けるようになるのかが丁寧に解説されています。

まとめ

RASAフレームワークは、Receive(受け入れる)→ Appreciate(相づち)→ Summarize(要約)→ Ask(質問)の4ステップで傾聴力を段階的に高めていく実践手法です。特に重要なのは最後のAskで、自分の意見を言わずに相手に質問を返すことで、相手の話をより深く引き出し、信頼関係を築くことができます。

今日の会議や1on1から、まずは「Receive(最初に否定しない)」と「Appreciate(相づち)」の2つから試してみてください。この2つだけでも、相手の話す情報量が明確に変わってくるはずです。

さらに体系的にRASAを含む傾聴スキルを身につけたい方は、ゲーム形式で楽しく学べる「傾聴チャレンジ」の導入もご検討ください。

▶ 傾聴研修ゲーム「傾聴チャレンジ」のやり方


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