心理学を用いたチームワークの診断
「自分のチームはうまく機能しているのだろうか?」「チームワークを高めたいが、何から測ればいいかわからない」と悩んでいる管理職や人事担当者の方は少なくありません。チームワークは目に見えにくく、売上や生産量のように単純な数字で測れるものではないため、客観的に診断することが難しいテーマです。
本記事では、心理学のチームワーク研究をもとにチームワークを診断するための考え方と3つの観点、そしてジェスチャーゲームなどの体験型ゲームを使って実際にチームワークを可視化する方法を解説します。
・心理学研究にもとづく「優れたチームの5要素」がわかる
・ジェスチャーゲームで実践できる診断手法がわかる
・診断から育成につなげる研修ゲームの選び方がわかる
チームワーク診断とは?なぜ測ることが難しいのか
チームワーク診断とは、チームがどの程度連携して目標達成に向かえているかを可視化する取り組みのことです。
個人の能力は資格試験や業績評価である程度数値化できますが、チームワークは「複数の人が相互作用する中で初めて生まれる性質」であるため、個々のメンバーを見ただけでは判断できません。さらに、職場の文脈(扱う業務、階層構造、締切、対面/リモートなど)によって「良いチームワーク」の形も変わります。
チームワーク診断が必要な3つの場面
チームワーク診断が特に必要になるのは、次のような場面です。
・パフォーマンスが停滞した時:成果が出ない原因が個人の能力なのかチーム連携なのかを切り分けたい
・組織再編・リモート化の後:働き方が変わった中で、以前のチーム連携が維持できているかを確認したい
人事評価では「個人の成果」だけが注目されがちですが、実際には成果の多くはチームワークの質に左右されます。だからこそ、定期的にチームワーク自体を診断することに大きな意味があります。
心理学が明らかにした「優れたチームワーク」の5要素
チームワーク研究の分野では、2005年にSalas, Sims, Burkeの3氏が発表した論文「Is there a ‘Big Five’ in teamwork?」が広く知られています。彼らは過去のチーム研究を体系化し、優れたチームに共通する5つの要素(Big Five of Teamwork)を提示しました。
2. 相互モニタリング:メンバーがお互いの状況を観察し合う
3. バックアップ行動:困っているメンバーを助ける
4. 適応性:状況の変化に応じて柔軟に動きを変えられる
5. チーム志向:個人ではなくチーム全体の成功を優先する
さらに、これら5要素を支える前提条件として「共有メンタルモデル(お互いが同じ状況認識を持っていること)」「クローズドループ・コミュニケーション(伝えた内容を復唱で確認し合うこと)」「相互信頼」という3つの補助要因があるとされています。
Big Fiveから見たチームワーク診断のコツ
チームワークを診断する時は、5要素のうちどこが弱いかを切り分ける視点が役立ちます。例えば、タスクは分担できているがメンバーが孤立している場合は「相互モニタリング」が弱いと診断できますし、問題が起きた時に誰もフォローしない場合は「バックアップ行動」が育っていないと判断できます。
単に「チームワークが悪い」とまとめるのではなく、5要素のどこに課題があるのかを切り分けることで、次の改善アクションが明確になります。
チームワークを実践で見抜く3つの観点
学術的なフレームワークだけでなく、実際のワークショップや研修の現場で観察しやすい3つの観点があります。この観点は、もともとテレビ番組で紹介された心理学的なチーム診断の考え方に由来しており、短時間のグループワークでも応用しやすいのが特徴です。
観点1. 役割分担ができているか
チームワークの最初のポイントは「メンバーがそれぞれの強みを活かして役割を分担できているか」です。
例えば「結婚式をジェスチャーで表現する」というタスクがあった時、1人が全てを演じようとすれば混乱しますが、新郎役・新婦役・神父役などに分かれて同時に演じれば、観察者は一目でシーンを理解できます。これは現実の仕事でも同じで、要素を分解して分担する力がチームの基礎体力になります。
観点2. 同期性(アイコンタクト・呼吸合わせ)があるか
2つ目の観点は「メンバー同士が目を合わせ、動きを合わせているか」です。
スポーツの世界では、言葉を交わさずにアイコンタクトだけで意思疎通するプレーがよく見られます。職場でも、優れたチームは会議中に視線を合わせて確認し合ったり、同じタイミングで動いたりします。逆に、お互いに目を合わせないチームは連携が弱いと診断できます。
前述のBig Fiveで言えば、これは「相互モニタリング」と「共有メンタルモデル」に対応します。お互いを観察し、同じ認識を持っているからこそアイコンタクトが成立するのです。
観点3. 気分コントロール(モチベーションの同期)ができているか
3つ目は「メンバー全員が最後まで同じ方向にモチベーションを保てているか」です。
ポイントの一つは「年配者や上位者が率先して恥をかいているか」。先輩・上司が積極的に挑戦する姿を見せると、後輩も遠慮なくチャレンジできるようになります。逆に上位者が冷めた態度でいるチームは、若手のモチベーションも続きません。
これはBig Fiveの「チームリーダーシップ」と「チーム志向」に直結する観点で、チームワークの「空気」を生む要素でもあります。
ジェスチャーゲームで実践する「動きのあるチームワーク診断」
上で紹介した3つの観点は、実際にジェスチャーゲームを実施しながら観察することで、短時間でもはっきりと見えてきます。ジェスチャーゲームは言葉を使わずに連携するため、普段の会議では見えにくいチームの動きの質が浮き彫りになります。
実施ルール(所要時間 15〜20分)
・各チームから1名を回答者に設定
・回答者以外の3〜4名は、与えられたお題をジェスチャーのみで表現
・回答者は制限時間内に正解数を競う
・お題例:「フラフープ」「へび」「結婚式」「スタンディングオベーション」「オーケストラ」「満員電車」「野球のダブルプレー」など
観察のコツ
ファシリテーターは、ゲーム中に次のポイントを観察します。
・動きを合わせるためにアイコンタクトが生まれているか(同期性の観点)
・リーダー格の人が率先して恥ずかしいジェスチャーに挑戦しているか(気分コントロールの観点)
ゲーム後に上記の観察結果をチームにフィードバックすることで、参加者自身が「自分たちのチームのどこが強く、どこに改善余地があるか」を体感的に理解できます。
ジェスチャーゲーム以外のチームワーク診断方法
チームワーク診断の手段は、ジェスチャーゲームだけではありません。目的や場面に応じて使い分けると効果が高まります。
1. 360度フィードバック
メンバー同士がお互いの行動や姿勢を評価し合う方法です。Big Fiveの「相互モニタリング」「バックアップ行動」を可視化するのに向いています。質問項目を具体的な行動ベースにすることがコツです。
2. ワークショップ中の行動観察
議論型のワークショップを実施し、ファシリテーターが発言量・発言順序・合意形成の過程を観察する方法です。誰が司会役を担い、誰が意思決定に影響を与えているかが見えてきます。
3. チーム診断アンケート
自社で設計したアンケートや既存の診断ツール(例:Gallup Q12、Team Effectiveness Assessment等)を使う方法です。定量的にトラッキングできるため、定期的に取得することで改善の推移を確認できます。
4. ビジネスゲームでのチーム行動観察
後述するビジネスゲームを使う方法は、非日常のルールの中でチームの素の動きが出やすいのが特徴です。普段の業務では見えない連携の弱点が、ゲーム中に一気に浮かび上がります。
ビジネスゲームでチームワークを診断するメリット
チームワーク診断にビジネスゲームを使うメリットは、主に次の3点です。
2. ルールによって役割分担・合意形成・情報共有のプロセスが明確に可視化される
3. ゲーム終了後の振り返りで、参加者自身が気づきを言語化しやすい
研修担当者からすると、アンケートだけでは「当たり障りのない回答しか出ない」という課題がありますが、ビジネスゲームなら参加者の本音や自然な行動が見えてきます。その場で観察した事実にもとづいてフィードバックできるため、納得感のあるチーム改善につなげやすいのです。
チームワーク診断に使えるHEART QUAKEのビジネスゲーム
株式会社HEART QUAKEでは、チームワーク診断を兼ねたビジネスゲーム型研修を多数提供しています。ここでは代表的な3つをご紹介します。
ベストチーム|心理的安全性をもとにチーム作りを学ぶ

ベストチームは、心理的安全性をテーマにしたビジネスゲームです。チームビルディングの基礎である「自分の意見を安心して言える雰囲気」がいかに成果に影響するかを体験できます。診断観点としては「気分コントロール」「チーム志向」に特に強みを発揮します。
詳細はこちら: ベストチームの詳細ページ
NASAゲーム|合意形成プロセスでチームの意思決定力を測る

NASAゲームは、月面で遭難した設定で15のアイテムに優先順位をつけるグループワークです。個人の意見が強すぎるチームやリーダーシップが不在のチームはスコアが伸びず、逆にメンバー全員の知識を統合できるチームは高得点を獲得します。Big Fiveの「相互モニタリング」「適応性」が顕著に現れるため、チームの意思決定力を診断するのに最適です。
詳細はこちら: NASAゲームの詳細ページ
部課長ゲーム|階層コミュニケーションと情報共有を診断する

部課長ゲームは、部長・課長・係員の階層に分かれて情報共有とタスク遂行を行うゲームです。上下のコミュニケーションが断絶している組織ではミスが頻発するため、「バックアップ行動」「チームリーダーシップ」の弱点を診断するのに向いています。管理職研修として導入する企業も多いゲームです。
詳細はこちら: 部課長ゲームの詳細ページ
よくある質問(FAQ)
Q1. チームワーク診断は何人規模から実施できますか?
A. 1チーム4〜6名が診断しやすい最小規模です。複数チームを同時に動かす場合は、全体で12〜30名程度が扱いやすいサイズです。100名を超える大規模な場合は、複数のファシリテーターで分割して実施します。
Q2. 所要時間はどれくらい必要ですか?
A. ジェスチャーゲーム単体なら15〜20分で実施できますが、診断結果のフィードバックまで含めると60〜90分を見込んでください。ビジネスゲームを使った本格的な診断の場合は、ゲーム1種類あたり1.5〜2時間を目安にしてください。
Q3. リモートチームでも診断できますか?
A. はい、Zoom等のオンライン会議ツールを使えば可能です。HEART QUAKEのビジネスゲームはオンライン版も提供しており、ブレイクアウトルームでのグループワークを通じて同様の診断ができます。
Q4. 診断結果はどのように活かせばいいですか?
A. 診断した弱点に合わせて、具体的な行動改善目標を立てることが重要です。例えば「相互モニタリングが弱い」と判明した場合は、週次のチームミーティングで「他のメンバーの業務状況をひと言ずつ共有する時間」を設けるといった具体策が有効です。
Q5. 個人の評価と区別してフィードバックできますか?
A. はい、ビジネスゲームやワークショップベースの診断は、チーム全体の動きとして観察結果を伝えるため、個人攻撃にならずに済みます。むしろ「自分たちのチーム課題」として受け取られやすいのが長所です。
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