今回はウェルビーイングに関する論文を紹介します。ウェルビーイングの研究は数多くありますが、今回紹介するのはカードゲームで社員のウェルビーイングを高める方法についての論文です。人的資本開示で従業員ウェルビーイング指標が注目される2026年、低コストで始められ効果が検証されている介入として、朝礼を使った簡易なゲームはあらためて見直されています。

褒め合うゲームによる幸福感への効果
ゲームであっても、ゲームだからこその心理的効果
杉野 珠理
日本教育心理学会 第63回総会発表論文集(2021年)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/pamjaep/63/0/63_266/_article/-char/ja/

論文のタイトルは幸福感への効果と記載されていますが、本文ではポジティブ感情を測定指標に用いています。

ポジティブ感情とPERMAモデルの関係

ポジティブ感情は、ウェルビーイングの代表的モデルとして知られるセリグマンのPERMAモデルの1要素です。

PERMAモデル

要素 意味
P: Positive Emotion ポジティブ感情
E: Engagement エンゲージメント/フロー状態
R: Relationship 関係性
M: Meaning and Purpose 人生の目的・仕事の意義
A: Achievement 何かを成し遂げること

P(ポジティブ感情)はPERMAの入口となる要素で、ここが上がると他の4要素(R・E・M・A)にも波及しやすいと考えられています。

ポジティブ心理学のPERMAと組織開発

論文で使われた「褒め合うカードゲーム」

論文では、調査対象となる企業の職員に対して、毎日の朝礼で以下のカードゲームを行ったと記載されています。

恥ずかしいけど口に出したら幸せになるカード
一般社団法人 結婚社会学アカデミー

使い方の1例は、カードに記載されているキーワードを伝えて、相手を褒めるというものです。カードの使い方はYouTubeでも紹介されています。

研究結果:ポジティブ感情の上昇

ゲームを行う前・1週間後・3週間後の3回のアンケートでPATSとPANASという尺度を用いて測定したところ、次のような結果になりました。

結果 意味
ポジティブ感情が上昇 短期の介入でも継続的に効果が見られた
もともとポジティブ感情が低い人ほど上昇幅が大きい 介入が必要な層に強く効いた
朝礼という定例化された場で実施 続ける仕組み化が効果の下支えに

論文の副題には「ゲームであっても、ゲームだからこその心理的効果」とあります。お互いを面と向かって褒め合うのは恥ずかしいものですが、ゲームという体裁があることで、むしろやりやすくなる——これは研修現場でも実感としてよくあります。

現場での応用アイデア

この研究知見を、実際の職場や研修に持ち込むときのアイデアを整理します。

場面 応用のコツ
朝礼・週次MTG冒頭 3分だけカードで褒め合う
1on1の終わり カードを1枚引いて相互に伝える
新人研修のアイスブレイク お互いの良いところを言葉にする練習に
エンゲージメントサーベイの打ち手 スコアが低い部署で2〜3週間試行

重要なのは継続性です。単発のイベントではなく、朝礼・1on1など既存の定例の場に組み込むことが、研究と同じような効果を得るためのポイントです。

まとめ

杉野(2021)の論文では、朝礼での褒め合いカードゲームポジティブ感情を上昇させ、とくにもともと低かった人ほど上昇幅が大きいことが示されました。カードというゲーム的体裁があることで、普段は照れくさい褒め合いが自然に実施でき、ウェルビーイング施策としての導入ハードルが大きく下がります。2026年以降の人的資本時代において、低コスト・高頻度・継続可能な介入として、活用価値の高いアプローチです。

褒め合うゲームによる幸福感への効果
ゲームであっても、ゲームだからこその心理的効果
杉野 珠理
日本教育心理学会 第63回総会発表論文集(2021年)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/pamjaep/63/0/63_266/_article/-char/ja/

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