部下に仕事を任せる際の7つのステップ

マネージャーの仕事の中でも「部下に仕事を任せる」は、最も難しくて最も重要なタスクのひとつです。
「いきなり全部任せて放置」でも「最後まで自分で抱え込む」でもない、部下のレベルに合わせて管理の仕方をグラデーションで変えるというのが、任せ方の本質です。
今回は、オライリー刊の『エンジニアリングマネージャーのしごと』でも紹介されている権限委譲の7つのステップを整理し、OJTリーダー研修・管理職研修で活用するポイントまでをまとめます。

部下に仕事を任せる7つのステップ(権限委譲の7レベル)
この7段階は、もともとJurgen Appelo氏の『Management 3.0』で提唱された”Delegation Poker”の枠組みが元になっています。『エンジニアリングマネージャーのしごと』(James Stanier著)はそれを実務に落とし込んで紹介しています。
左に行くほどマネージャーの関与が強く、右に行くほど部下に任されています。
| ステップ | 関与の度合い | 具体的なふるまい |
|---|---|---|
| ①指示する(Tell) | 最も強く関与 | マネージャーが決めて、部下にそのまま実行させる |
| ②説得する(Sell) | 強く関与 | マネージャーが決めるが、理由を説明して納得を得る |
| ③相談する(Consult) | 中〜強 | 部下の意見を聞いてからマネージャーが決める |
| ④合意する(Agree) | 中 | マネージャーと部下で議論し、合意して決める |
| ⑤助言する(Advise) | 弱〜中 | マネージャーは助言のみ、最終決定は部下 |
| ⑥尋ねる(Inquire) | 弱 | 部下が決定、マネージャーは後で結果を聞く |
| ⑦委任する(Delegate) | 関与なし | 部下に完全に任せる。結果報告も任意 |
重要なのは、「1つの仕事=1つのステップ」ではないということです。同じ部下でも、タスクAは②Sell、タスクBは⑤Adviseのように、仕事の内容と難易度に応じてステップが変わります。
7ステップを使いこなすための3つのポイント
ポイント①部下のレベルに応じてステップを動かす
新人には①〜②、中堅には③〜⑤、ベテランには⑥〜⑦、というように部下のレベルに応じて委譲の段階をずらすのが基本です。新人にいきなり⑦委任を使えば放置になり、ベテランに①指示を続ければマイクロマネジメントで意欲を削ぎます。
4タイプ別の部下の見立て方については、以下の記事も参考になります。
新入社員(部下)の4つのタイプに合わせた指導方法
ポイント②徐々に右側に移行する
新人が独り立ちしていく過程で、同じ種類の仕事について段階を徐々に右にずらすのが王道です。
| 期間 | 目安のステップ |
|---|---|
| 配属直後 | ①Tell/②Sell(やり方を示す) |
| 3〜6ヶ月後 | ③Consult/④Agree(意見を聞く) |
| 1年後 | ⑤Advise(助言のみ) |
| ベテラン化 | ⑥Inquire/⑦Delegate(任せ切る) |
このステップ移行を上司・部下の双方で見える化しておくと、部下は「自分は今どの段階で、次はどの段階を目指すのか」を理解でき、成長実感につながります。
ポイント③OJTリーダー間でコンセンサスを取る
OJTリーダーによって「どの段階から任せるか」がバラバラだと、配属先によって新人の育ち方に大きな差が出てしまいます。
OJTリーダー研修では、7ステップを紙に出して「うちの部署では、この仕事なら何ヶ月目でどのステップに移行する」を揃えておくのが有効です。Appelo氏の”Delegation Poker”はまさにこの合意形成を目的に作られたカードゲームです。
OJT関連の定番記事もあわせてどうぞ。
OJTトレーナー研修で取り入れたい7つの内容
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OJTトレーナーのためのコーチングスキル〜GROWモデル〜
失敗パターンと回避策
| やりがちなパターン | 起きること | 回避策 |
|---|---|---|
| 相手にかかわらず①Tellで指示し続ける | 部下の自走力が育たない | 3ヶ月ごとに1段階ずつ右にずらす |
| 人が良いマネージャーが急に⑦Delegateにする | 放置プレイになり事故化 | ④Agreeや⑤Adviseを挟んでから委任 |
| 部下側は⑦のつもり、上司は③のつもり | 認識齟齬で意思決定が止まる | タスクごとにステップを明言する |
部下が思うように動かない背景にも、多くの場合この“どのステップを使っているかの不一致”が隠れています。
部下が思うように動いてくれない時の3つのチェックポイント
部下の育成方法の具体例14パターン
まとめ
部下に仕事を任せる7つのステップは、マネージャーの関与の強さをTell→Sell→Consult→Agree→Advise→Inquire→Delegateの順に整理したものです。

実務では「この部下のこの仕事は、今どのステップが適切か?」をタスクごとに選ぶという使い方が最もしっくりきます。上司と部下で同じステップを見ている状態を作ることが、委譲の成功条件です。
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