リーダーが長時間働くと職場のワークライフバランスが損なわれる
ワークライフバランスやメンタルヘルスに関連する面白い論文を見つけたのでシェアしたいと思います。紹介する論文はこちらになります。
──病院に勤務する看護職における検討──
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsha/54/2/54_65/_pdf
渡辺 真弓, 山内 慶太
なお、私(千葉)の理解力が足りず、誤った解釈をしている可能性もあります。
あらかじめご了承下さい。
結論:リーダーの長時間労働は職場によって悪影響
最初に結論を書いてしまうと、論文では以下のように記述されています。(読み取れます)
下記が、論文内で紹介されているパス図となります。
この論文が面白いと思った理由は結論の文中にある「内発的モチベーション」という部分です。
内発的モチベーション=内発的動機づけについてはダニエル・ピンクの著書「モチベーション3.0」などでご存じの方も多いと思います。
内発的モチベーションについて、外部サイトによる説明を引用しますと、以下のように記述されています。
リクルートマネジメントソリューションズより
http://www.recruit-ms.co.jp/glossary/dtl/0000000030/
つまり、やる気にあふれているリーダーが「楽しくて長時間労働」していると、職場全体のワーク・ライフ・バランス満足度に悪影響を及ぼすということなのです。
働き方改革に関する働きマンの主張
世間では「働き方改革」が話題になっており、残業時間の削減、リモートワーク、雇用形態の変化などが取り沙汰されています。
特に残業時間の削減については賛否あり、「私は仕事が好きでやってるんだから、いいじゃないか」という意見もあると思います。
しかし、この意見について、この論文が意味するところは「そんなあなたこそが職場全体のワーク・ライフ・バランス満足度を下げている大きな要因なんだ!」ということだと思います。
なお、本論文は病院に勤務する看護職における調査ですので一般企業に同様にあてはまるとはいえないと思います。
外発的モチベーションによる長時間労働の場合
また、こちらも面白いのが、外発的モチベーションによって自発的長時間労働の場合は職場全体のワークライフバランス満足度に対して悪影響があるとは言い切れないということです。
(図の下側をご覧ください。)
つまり、報酬や昇進のために頑張って働いているんだなぁーと部下がわかっている場合の方がむしろ職場全体にとっては良いということです。
非自発的長時間労働はやっぱり悪影響
今度は図の中央の「非自発的長時間労働」に注目すると、
非自発的長時間労働=やりたくないけど、長時間労働は職場全体のワークライフバランス満足度に明確に悪影響があることがわかります。
また、非自発的長時間労働はパンデミックのように他のメンバーに同調圧力による非自発的長時間労働に影響を与えます。
職場全体ではなく、個人ベースでみてみると・・・
上のパス図は職場全体ではなく、個人レベルでのパス図となります。
個人レベルでみると、非自発的長時間労働が個人のワークライフバランス満足度に悪影響があることがわかります。
逆に言えば、自発的であれば、個人のワークライフバランス満足度に正の相関がありそうです。
まとめ
個人、職場の両方をみると以下の様なことが言えると思います。
・個人の場合、自発的長時間労働はワークライフバランス満足度に良い影響がありそう
・しかし、職場においてはリーダーが内発的モチベーションで自発的長時間労働をしていると、職場全体のワークライフバランス満足度に悪影響を与える
ワークライフバランス研修やメンタルヘルス研修などで「私は仕事が好きでやってるんだから、いいじゃないか」というリーダーに対して(調査対象が一般企業と異なりますが)このような意見もあることを伝えることは重要かもしれません。
論文はこちらから。
──病院に勤務する看護職における検討──
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsha/54/2/54_65/_pdf
渡辺 真弓, 山内 慶太