フィードラーのLPCモデル|状況×スタイル適合の8パターンと高LPC・低LPCの使い分け

リーダーシップ理論の中でも、現場マネジメントで「自分のスタイルは今の状況に合っているのか」と悩んだときに参考になるのが、心理学者フレッド・フィードラー(Fred Fiedler)が1967年に提唱した状況即応理論(コンティンジェンシー理論) / LPCモデルです。

結論を先にお伝えすると、フィードラーのLPCモデルは「リーダーシップの型(人間関係重視型 or 課題達成重視型)は、置かれた状況との適合度によって成果に差が出る」という考え方です。リーダー自身のスタイルを変えるのは容易ではないため、スタイルに合った状況を選ぶ、あるいは状況に合ったリーダーを配置するという発想が特徴です。

フィードラーのLPCモデル 状況を決める3つの要因と8パターン

本記事では、LPCという指標の意味から、状況を決める3つの要因、具体的な8パターンの組み合わせ、SL理論やPM理論との違い、現場での実務への落とし込み方までを整理します。

フィードラーの状況即応理論(コンティンジェンシー理論)とは

フレッド・フィードラー(1922-2017)はアメリカの組織心理学者で、リーダーシップ研究のコンティンジェンシーアプローチ(状況適応アプローチ)を体系化した人物です。1967年の著書『A Theory of Leadership Effectiveness』でLPCモデルを提示しました。

それまでのリーダーシップ研究は「優れたリーダーに共通する特性や行動は何か」を探す方向性(特性理論・行動理論)でしたが、フィードラーはどれだけ優れたリーダーでも、状況との相性によって成果が変わるという発想の転換を持ち込みました。これは後の状況適応型リーダーシップ理論(SL理論、パス・ゴール理論など)の先駆けとなる考え方です。

フィードラー理論の特徴は、リーダーシップのスタイル自体は簡単には変えられないと仮定している点です。そのため「リーダーを育成してスタイルを柔軟にする」という方向ではなく、「スタイルに適した状況を選ぶか、状況を変えるか、リーダーを入れ替える」という方向に解決策を求めます。

LPC(Least Preferred Coworker)とは

フィードラーはリーダーのスタイルを測るためにLPC(Least Preferred Coworker) = 最も一緒に働きたくない仕事仲間という独特の指標を考案しました。

回答者は「これまでに一緒に仕事をした中で、最も協力しにくかった人物」を1人思い浮かべ、その人物に対して約16〜20個の形容詞の対(「親しみやすい⇔よそよそしい」「協力的⇔非協力的」など)で8段階評価を行います。各項目の点数を合計したものがLPCスコアになります。

LPC測定の項目例

実際のLPC質問票では、次のような対義語ペアで回答者に評価してもらいます(数値は8段階スケール)。

・親しみやすい ⇔ よそよそしい
・協力的 ⇔ 非協力的
・サポート的 ⇔ 敵対的
・楽しい ⇔ 退屈
・オープン ⇔ 閉鎖的
・(以下、全16〜20項目の対義語ペア)

(実際の質問票は全16〜20項目。詳細は吉田道雄・白樫三四郎(1973)『成功一失敗条件およびリーダーのLPC得点が集団過程におよぼす効果』などの論文で参照可能です)

高LPC(人間関係重視型)と低LPC(課題達成重視型)

LPCスコアが高い人(高LPC)は、「最も苦手な相手に対してでも相対的に好意的に評価する人」で、人間関係を大事にする傾向があります。一方、LPCスコアが低い人(低LPC)は、「苦手な相手には厳しく評価する人」で、課題達成を優先する傾向があります。

フィードラーはこの2つのスタイルを、組織文化ではなく「リーダーの内面的な傾向」として捉え、簡単には変わらないものと位置付けました。

リーダーの統制可能性を決める3つの要因

フィードラーは、リーダーがどれだけ状況をコントロールできるか(統制可能性)を3つの要因で評価します。3つすべてが良好ならリーダーにとって最も有利な「高統制」の状況、逆に3つすべてが悪ければ「低統制」の不利な状況となります。

要因1: リーダーとメンバーの関係性(Leader-Member Relations)

メンバーがリーダーを信頼し、支持しているかどうかです。良好な関係にあるとリーダーの指示が通りやすく、リーダーは状況をコントロールしやすくなります。逆に不信感がある場合、リーダーは一つひとつの判断に説明や調整が必要になり、統制が効きにくくなります。

要因2: 課題構造(Task Structure)

チームの仕事の目標・手順・評価基準がどれだけ明確か、という要因です。定型業務で手順が確立している課題(課題構造が高い)はリーダーが管理しやすい状況です。一方、新規事業の開発や研究開発のように「何が正解か見えない」課題(課題構造が低い)は、統制が効きにくくなります。

要因3: リーダーの地位勢力(Position Power)

リーダーが正式な権限として持っている、評価・昇進・報酬・懲戒などの影響力の大きさです。部下の人事評価をつけられる権限を持っているリーダーは地位勢力が強く、プロジェクト責任者のような人事権のない役割は地位勢力が弱くなります。

8パターンで見る LPCモデルの組み合わせ

上記3つの要因をそれぞれ「良/悪」の2段階で評価すると、2×2×2=8通りのリーダー状況が生まれます。フィードラーは各パターンに対して、高LPCと低LPCのどちらが成果を上げやすいかを実証研究から明らかにしました。

パターン メンバー関係 課題構造 地位勢力 統制可能性 有効なリーダー
1 良い 明確 強い 最も有利 低LPC(課題達成型)
2 良い 明確 弱い 有利 低LPC
3 良い 不明確 強い やや有利 低LPC
4 良い 不明確 弱い 中間 高LPC(人間関係型)
5 悪い 明確 強い 中間 高LPC
6 悪い 明確 弱い やや不利 高LPC
7 悪い 不明確 強い 不利 高LPC
8 悪い 不明確 弱い 最も不利 低LPC

このモデルの興味深いポイントは、最も有利な状況(パターン1)と最も不利な状況(パターン8)のどちらでも、低LPCの課題達成型リーダーが成果を上げやすいことです。逆に中間的な状況(パターン4〜7)では、高LPCの人間関係型リーダーの方が成果につながりやすい傾向があります。

現場の実感に置き換えると、条件がはっきりしている(すべて良い or すべて悪い)局面では「やることを淡々と進める課題達成型」が強く、条件がまちまち(一部良くて一部悪い)局面では「人間関係を整えて引き出す関係重視型」が強い、ということになります。

SL理論・PM理論とLPCモデルの違い

状況適応型のリーダーシップ理論には複数の系譜があり、実務で混同されがちです。代表的な3つ(LPC / SL理論 / PM理論)の位置づけを整理しておきます。

理論 提唱者 中心となる軸 スタイルは変えられる?
フィードラーLPCモデル F. フィードラー メンバー関係・課題構造・地位勢力の3条件 変えにくい(だから状況を選ぶ)
SL理論(Situational Leadership) ハーシー&ブランチャード メンバーの成熟度(発達段階) 変えられる(状況に合わせる)
PM理論 三隅二不二 P(Performance課題達成)とM(Maintenance関係維持)の2軸 PM両方を高めるのが望ましい

最大の違いは「リーダーのスタイルは変えられるか?」に対する立場です。LPCモデルは変えにくいと仮定し、SL理論は変えられることを前提にしています。PM理論は「どちらか選ぶ」のではなく「両方高めるのが理想」とする点で独特です。

実務的には、短期の配置判断には「スタイルが変わりにくい」LPCモデルの発想が役立ち、中長期の育成計画にはSL理論やPM理論の発想が役立つ、と使い分けると扱いやすくなります。

リーダーシップ研修・マネジメント実務への落とし込み

フィードラーLPCモデルを現場で活かす場合、次の3つの視点で検討するのが実用的です。

視点1: リーダーの配置判断に使う

新規プロジェクトや組織改編のタイミングで、どのリーダーをどの部署に配置するかを決めるとき、LPCの発想は役立ちます。「このプロジェクトは条件がすべて揃っていて高統制だから、課題達成型の○○さんに任せよう」「このチームはメンバーとの関係が不安定で中間的な状況だから、関係重視型の△△さんの方が向いている」といった判断です。

視点2: 状況の方を変えて適合させる

リーダー自体を変えずに、状況の方を動かすアプローチもあります。課題構造が不明確で困っている低LPCリーダーには、上位の経営層が方針を明文化して課題構造を明確にしてあげる、といった支援です。「リーダーを責める前に状況を整える」という発想は、組織開発の実務で有効です。

視点3: メンバー自身がリーダー視点を体験する

フィードラーの枠組みを頭で理解するだけでは、現場での判断に活かしにくいのが正直なところです。そこで有効なのが、普段リーダーではないメンバーにあえてリーダー役を疑似体験させる研修設計です。役割を変えてみると、情報が足りない立場・指示が通らない立場・成果責任を負う立場のリアリティが一気に立ち上がり、LPCモデルが机上の理論ではなく実感として理解できるようになります。

よくある質問(FAQ)

Q1. LPCスコアはどうやって測定すればよいですか?

A. 公式のLPC質問票(約16〜20項目の対義語スケール)を使い、各回答者に「これまでで最も一緒に働きにくかった人」を1人思い浮かべて評価してもらいます。合計点が高いほど高LPC(人間関係重視型)、低いほど低LPC(課題達成重視型)です。日本語での利用は吉田道雄・白樫三四郎(1973)の論文などが参考になります。

Q2. フィードラー理論は古い理論ですが今も有効ですか?

A. 理論そのものは1960年代提唱ですが、「リーダーのスタイルと状況の相性」という視点は現在のマネジメント実務にも応用できます。一方、LPCスコア自体の測定方法や科学的妥当性については批判もあり、現代ではLPC単体の評価より、より柔軟なSL理論やサーバントリーダーシップと組み合わせて理解されることが多いです。

Q3. 高LPCと低LPC、どちらが優れているのですか?

A. どちらが優れているという話ではありません。パターン1〜3や8のように条件がはっきりしている状況では低LPCが、パターン4〜7のように条件がまちまちの状況では高LPCが成果を上げやすい、というのがフィードラーの主張です。自分のスタイルを知った上で、適した状況に身を置くことが重要です。

Q4. 自分のスタイルを変えることはできないのですか?

A. フィードラー自身は「変えにくい」と仮定していますが、後続の研究者は「意識と訓練である程度は変えられる」とする立場をとっています。実務では、スタイルを無理に変えようとするより、状況を整えるか、スタイルに合った役割を選ぶ方が負担が少ないケースが多いです。

Q5. LPCモデルを使った研修設計は可能ですか?

A. 可能です。ただしLPC測定そのものよりも、参加者が「自分と異なるリーダースタイルの人が同じ状況でどう判断するか」を体験から学べる設計の方が実務的です。ロールプレイやビジネスゲーム形式で、普段とは異なる役割を割り当てることで、状況とスタイルの相性を体感的に理解できます。

HEART QUAKEのリーダーシップ体験研修「部課長ゲーム」

HEART QUAKEでは、フィードラーLPCモデルのような状況適応型リーダーシップを座学ではなく体験から学べるビジネスゲーム研修を提供しています。代表的なのが「部課長ゲーム」です。

部課長ゲーム

部課長ゲームは、参加者が部長・課長・係長・一般社員といった組織の階層ごとの役割に分かれ、情報の非対称性がある中でチームの目標達成に取り組むビジネスゲームです。普段は一般社員の立場にいる人が部長役を担当することで、「指示を出す側の情報不足・責任の重さ・統制可能性の難しさ」を疑似体験できます。

部課長ゲームの詳細は 部課長ゲームの紹介ページ をご覧ください。

導入事例: 普段リーダーではない人が部長役を疑似体験

実際に部課長ゲームをご導入いただいた事例として、ブルーベル・ジャパン株式会社様のケースをご紹介します。普段リーダー役を担わない販売員の方々に部長役を体験していただき、組織階層ごとの視点の違いに気付けたという事例です。

報・連・相の大切さの再確認と、自分がわかっていることは相手もわかっているはずということは無いこと、上司は目的を下の人に伝えるのと同時に部下も積極的に目的を知ろうと努力することが大事なことを、参加者は学んだと思います。

ゲームが終わってから驚いたという声が多かったです。普段リーダー的ポジションでは無い人が部長役をやってみて面白かったという声がありました。

この事例が示しているのは、頭で理解した理論を実感として腑に落とすために、役割を疑似体験させる研修設計が有効という点です。フィードラーLPCモデルで言えば、「自分のスタイルが今の状況に合っているか」を抽象的に考えるより、「普段と違う立場に身を置いたときにどう感じ、どう判断するか」を体験する方が、現場に戻ったときの行動変容につながりやすくなります。

リーダーシップ研修をご検討の方へ

部課長ゲームをはじめとするHEART QUAKEのリーダーシップ体験研修にご興味をお持ちの研修担当者様は、お問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。対象階層・人数・実施時期などに合わせて、最適なコンテンツをご提案いたします。

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まとめ

本記事のポイントを整理します。

・フィードラーLPCモデルは1967年提唱の状況適応型リーダーシップ理論で、リーダーのスタイルと状況の相性に着目する
・LPCはLeast Preferred Coworker(最も苦手な仕事仲間)への評価から、高LPC(人間関係重視型)と低LPC(課題達成重視型)に分類する
・統制可能性はメンバー関係・課題構造・地位勢力の3要因で決まり、2×2×2の8パターンに整理できる
・条件がはっきりしている局面(最も有利 or 最も不利)では低LPCが、中間的な局面では高LPCが成果を上げやすい
・SL理論は「スタイルは変えられる」前提、LPCモデルは「変えにくい」前提、PM理論は「両方高めるのが理想」、と使い分けが可能
・実務では、スタイルを無理に変えるより「状況を整える」「役割を入れ替える」「疑似体験で理解する」ほうが応用しやすい
・普段リーダーではない人に部長役を疑似体験させるビジネスゲーム研修は、LPCモデルを実感として理解する有効な手段

リーダーシップ研修の設計では、理論の説明と体験学習の両方をセットにすることで、配属後の行動変容につながりやすくなります。


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