SDGsの「自分ごと化」とは?社員を動かす5ステップと実践フェーズ

「SDGs研修を実施しても、社員の反応が薄い」「SDGsが他人事になっていて行動が変わらない」——そんな悩みを抱える研修担当者の方に向けて、このページではSDGsの「自分ごと化」を進めるための考え方と、具体的な5つのステップを解説します。
結論から言えば、SDGsの自分ごと化とは、社員一人ひとりが自社の事業活動をSDGsの各目標と結びつけて考え、日々の行動を変えていける状態を指します。この状態を作るためには、SDGs公式ガイドラインである「SDGsコンパス」の5ステップと、石井雅章氏(2020)が提唱する「自分ごと化の8フェーズ」を組み合わせた段階的なアプローチが有効です。
SDGsの「自分ごと化」とは?
SDGsの「自分ごと化」とは、SDGsを「国や国連が取り組むべき遠い目標」ではなく「自分の仕事や生活に直結する課題」として捉え直し、自ら行動を起こせる状態にすることです。
企業研修の文脈では、社員が「自社のビジネスがどのSDGs目標に関係しているのか」「自分の担当業務がどんな貢献・負の影響を持つのか」を具体的にイメージでき、自発的に改善提案ができる状態を目指します。
単に「SDGs 17目標のアイコンを覚える」レベルでは自分ごと化とは言えません。重要なのは、抽象的な目標を自社の業務レベルまで具体化し、社員が自分の役割を見出せるようにすることです。
なぜSDGsは社員にとって自分ごと化しにくいのか
SDGsの自分ごと化が難しいのには、主に3つの理由があります。
1つ目はスケールの大きさです。「貧困をなくそう」「気候変動に具体的な対策を」といった目標は地球規模で、個人の日常業務との距離が大きすぎて実感を持ちにくくなります。
2つ目は自社ビジネスとの接点が見えにくいことです。17目標すべてが自社に等しく関係するわけではないため、どれを重点テーマにすべきか判断がつかず、結果として「どれも自分の仕事とは関係ない」という感覚になりがちです。
3つ目は講義形式の研修の限界です。座学で「SDGsは重要です」と説明されても、実感を伴わなければ行動変容にはつながりません。体験を通じて自分の意思決定が環境や社会にどう影響するかを実感する機会が必要です。
SDGsコンパスの5つのステップ

画像参照:SDG Compass 日本語版PDF
SDGsコンパスは、GRI(Global Reporting Initiative)、国連グローバルコンパクト、WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)が共同で開発・公開した企業向けのSDGs導入ガイドラインです。企業がSDGsを経営戦略に組み込むための実践手順として、以下の5ステップが示されています。
2. 優先課題を決定する
3. 目標を設定する
4. 経営へ統合する
5. 報告とコミュニケーションをする
このうち特に重要なのが2つ目の「優先課題を決定する」です。公式ドキュメントでは以下のように記されています。
SDGsに対して戦略的なアプローチを取るのであれば、まずやるべきことは、バリューチェーン全般を通じて企業の事業活動がSDGsに及ぼしている、あるいは及ぼす可能性のある正および負の影響を把握することである。
つまり、自社のビジネスが17のSDGs目標のどれに正・負の影響を与えているかを把握することが、自分ごと化の出発点になります。
自分ごと化を進める8つのフェーズ(石井雅章 2020)
SDGsコンパスが「企業戦略レベル」の枠組みだとすれば、より個人・現場レベルで自分ごと化を段階的に進めるための視点を提供しているのが、石井雅章氏の論文です。
論文では自分ごと化を8つのフェーズに整理しています。

研修設計で特に重要なのはフェーズ3「当てはめる」とフェーズ4「貢献する」です。自社の事業や自分の業務をSDGsの17目標に具体的に当てはめ、そこから貢献できる行動を考える段階で、SDGsコンパスの「1. 理解する」「2. 優先課題を決定する」がより深いレベルで機能します。
ただし著者は、安易な紐付けに対して次のように警鐘を鳴らしています。
SDGsの自分ごと化が単なる「当てはめ」にとどまらないようにするためには、「ステイクホルダー」段階及び「システム段階」への移行が求められる。
自社とSDGsを紐付けるだけでなく、取り巻くステークホルダーや社会システム全体にも目を向けることが、本当の自分ごと化につながるということです。
「自分ごと化」を体験するワークショップ:共有地の悲劇ゲーム
理論だけでは社員の行動は変わりません。HEART QUAKEでは、SDGsを体験を通じて自分ごと化できる研修教材として「SDGs共有地の悲劇ゲーム」を提供しています。

このゲームはSDGs目標14「海の豊かさを守ろう」をテーマにしたチーム対話型のボードゲームです。参加者は海から魚を獲って暮らしている漁師という設定で、3〜4人1チームに分かれてプレイします。
ルールはシンプルで、6ラウンドの間に海の魚が0匹になってしまったらゲームオーバー。しかし漁師として生計を立てるためには魚を獲らなければならず、「経済活動(漁獲)」と「環境保全(資源の持続可能性)」のジレンマを肌で感じる構造になっています。
ゲームのなかで参加者は自然に「どれだけ獲るか」「ゴミ回収のコストを誰が負担するか」といった合意形成を迫られ、システム思考(個人の選択が全体にどう跳ね返るか)とSDGsのジレンマ構造の両方を体験的に理解できます。座学では届かなかった層にも、自分の意思決定と環境問題のつながりが実感として残ります。
ゲームの具体的な内容・効果・実施方法の詳細は下記の記事でご紹介しています。
SDGs研修で使える環境問題ボードゲーム|共有地の悲劇ゲームの内容と効果
まとめ:段階的アプローチで社員を動かす
SDGsの「自分ごと化」は、座学だけでは達成できません。以下の3つを組み合わせた段階的アプローチが効果的です。
SDGsコンパスの5ステップで企業戦略を整える──理解→優先課題決定→目標設定→経営統合→報告。まずは自社のバリューチェーンがどのSDGs目標に正・負の影響を与えているかを把握することから始めます。
自分ごと化の8フェーズで社員の理解を深める──石井論文のフェーズ3「当てはめる」・フェーズ4「貢献する」を研修の中心に据え、さらにステイクホルダー段階・システム段階へと視点を広げていきます。
体験型ワークショップで行動に結びつける──理論を学んだあとに、共有地の悲劇ゲームのような体験型研修を組み合わせることで、ジレンマを自分の問題として引き受けられるようになります。
この3つを組み合わせることで、「SDGsは大事だけれど自分には関係ない」という状態から、「自分の仕事でこういう貢献ができる」という具体的な行動につながる状態へと、社員の意識を段階的に動かすことができます。
