産業医の面談を早期に受けてもらうために伝えるべきメンタルヘルスリテラシー
今回はメンタルヘルスの4つのケアの1つである事業場内産業保健スタッフ等によるケアに関連する産業医の面談について書いていきたいと思います。
4つのケアについてはご存知の通り、セルフケア、ラインケア、事業場内産業保健スタッフ等によるケア、事業場外資源によるケアとなります。(下図)
産業医による面談は事業場内産業保健スタッフ等によるケアに含まれます。ただ、ストレスを抱えながら産業医の面談を含む、適切な受療行動を取る人の割合が少ないことが課題となっています。
実際に厚生労働省による平成29年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況によれば、ストレスを相談できる人の有無、相談できる相手別労働者割合を調査したところ下表のようになっています。
画像参考:平成29年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況
上表から分かる通り、ストレスを抱える人が産業医に相談する割合は全体で2.7%、女性だけで見れば1.1%となっています。
不調を感じてから6ヶ月以内に受療を!
平井ら(2019)によれば、不調が発生してから専門機関を受診・受療するまでの期間(DUI)が6ヶ月以内が早期受療のタイミングとして重要なことを指摘している。
受療促進コンテンツ開発の試み
平井 啓、谷向 仁、中村 菜々子、山村 麻予、
佐々木 淳、 足立 浩祥(2019)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpsy/advpub/0/advpub_90.17239/_article/-char/ja
重症化を防ぐことはもちろん、企業としても不調の状態で業務にあたることによる生産性の低下はアブセンティーイズムとよばれ、見えざる健康コストである。
※アブセンティーイズムについて過去記事を御覧ください。
健康経営の促進で1人当たりコストが30万円削減できる?
また、平井ら(2019)は遅延受療者の特徴として以下を挙げている。
・主観的規範が弱い(周囲からの受診勧奨がない)
・受療行動にバリアを感じている
・治療による効果を認知していない(原因帰属の誤り等)
・メンタルヘルスケアへの否定的または偏ったイメージを持っている
・抑うつ関連症状がある:疲労感が強く,行動力が低下している
または,抑うつ関連症状についての認知が低い
その上で、上記の各項目について伝えるべきメッセージとコンテンツをピックアップしています。
⇒早期受療のための行動変容の必要性
「早く受診しましょう!」
・主観的規範が弱い(周囲からの受診勧奨がない)
⇒メンタルヘルスケアを受療した人の特徴
・受療行動にバリアを感じている
⇒わかりやすい利用の手順
⇒專門家へ援助希求する必要性
⇒メンタルヘルスケア専門機関の名称・種類・サービス・治療法の内容
⇒受療に伴う負担の提示
⇒重症と軽症の受領行動の違い
・治療による効果を認知していない(原因帰属の誤り等)
⇒受療により症状・状態が改善する
⇒早期受療により重症化が防げること、
治療期間が短くなる
⇒性格や自分自身のこころのあり方の問題ではなく,
脳の疲労状態のようなものである
・メンタルヘルスケアへの否定的または偏ったイメージを持っている
⇒実際に多くの人が利用し,改善したと感じている
⇒メンタルヘルスケア専門機関は,普通の人でも利用可能である
⇒利用によりイメージが変わる
⇒ネガティブな規範に対する保証:否定的な印象を持つのは仕方ない
・抑うつ関連症状がある:疲労感が強く,行動力が低下している
または,抑うつ関連症状についての認知が低い
⇒受診をしないと生活への影響が大きくなること
⇒抑うつの症状についての知識
⇒他者へ援助希求の必要性
ーー
メンタルヘルスケアに関する行動特徴とそれに対応する
受療促進コンテンツ開発の試み
平井 啓、谷向 仁、中村 菜々子、山村 麻予、
佐々木 淳、 足立 浩祥(2019)
Table4 より
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpsy/advpub/0/advpub_90.17239/_article/-char/ja
まとめ
いかがでしょうか。日本人の国民性なのか産業医などの専門機関への相談をしない現状が自体を悪化させている可能性があります。
早期受療に向けて、遅延受療者の特徴を知り、研修の中で早期受療を促すメッセージを伝えていくことが求められます。
参考論文
受療促進コンテンツ開発の試み
平井 啓、谷向 仁、中村 菜々子、山村 麻予、
佐々木 淳、 足立 浩祥(2019)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpsy/advpub/0/advpub_90.17239/_article/-char/ja