法人営業におけるチームワーク型営業の3つの成功要因
「個人営業の時代から、チーム営業(アカウント営業)の時代へ」と言われて久しいですが、法人営業におけるチームワーク型営業のパフォーマンス向上要因を、定量的に分析した研究は意外と多くありません。
本記事では、山崎・高野(2021)の「チームワーク型営業のパフォーマンス向上要因の研究」(人間工学 Vol.57, No.1)を手掛かりに、チームワーク型営業の3つの特徴的成功要因と、個人営業との違い、そして実務でどのように活かせばよいかをまとめます。
個人営業とチームワーク型営業の違い
同研究では、営業活動を個人で完結する個人営業と、複数メンバーで顧客を担当するチームワーク型営業の2つに分類し、商談の進め方やパフォーマンスの因子を比較しています。

画像引用:山崎・高野(2021)「チームワーク型営業のパフォーマンス向上要因の研究」図1 営業形態の例と商談の傾向
個人営業が「1人の営業担当者が主導で顧客とやり取りし、社内への共有が限定的」であるのに対し、チームワーク型営業は「複数メンバーで情報を共有し、案件を引き継いだり役割分担しながら顧客を担当する」形態です。B2Bの大型案件や長期的なアカウント営業で採用されることが多い形態です。
チームワーク型営業の3つの成功要因
同研究では、営業担当者へのアンケート調査を因子分析し、以下のパス図を提示しています。

画像引用:山崎・高野(2021) 図4 パフォーマンスモデル(パス図)
パス図の上段がチームワーク型営業、下段が個人営業の相関係数で、次のような構造が示されています。
また、「仕事への満足感と会社への信頼」が「明朗闊達な情報共有」に影響し、「明朗闊達な情報共有」が「商品の売りやすさ」に影響を与える、という構造である。
個人営業と比較して差異の大きい3つの因子が、チームワーク型営業の特徴的な成功要因として同定されています。
| 成功要因 | 内容 |
|---|---|
| 明朗闊達な情報共有 | 案件情報、顧客状況、失注理由などをメンバー間で隠さず共有している状態 |
| 真摯で前向きな営業活動と業務姿勢 | 顧客に対して誠実で、前向きに商談と社内業務に取り組む姿勢 |
| ローテーション(担当変更) | 一定期間での担当交代によって属人化を避け、顧客接点を多重化する仕組み |
参考画像:抽出された因子一覧(山崎・高野, 2021 表2)

個人営業との決定的な違い
同研究の興味深い発見は、「真摯で前向きな営業活動と業務姿勢」の効き方の違いです。
チームワーク型営業の場合は、「真摯で前向きな営業活動と業務姿勢」が他のパフォーマンス要因に大きな影響を与える。
個人営業では、担当者個人の真面目さ・前向きさがそのまま成績につながります。一方、チームワーク型営業では、同じ真摯さが情報共有の質を高め、その結果チーム全体のパフォーマンスに間接的に波及するという違いが示されました。
もう一つの興味深い点は、「商品の売りやすさ」の相関係数はパフォーマンスに対して高いものの、個人営業との差異が小さいため、チームワーク型営業の特徴的要因とは言えないとされている点です。商品力はどちらの営業形態でも効きますが、「型の違い」を作るのは商品ではなく、情報共有・ローテーション・姿勢であることが示唆されます。
実務への応用: 営業マネジメントで何をすべきか
同研究の示唆を実務に落とすと、以下のようなマネジメント行動が有効です。
・情報共有の質を上げる:SFA/CRMの案件登録だけでなく、「失注理由」「顧客の本音」「パイプラインの確度」を言語化してチームで共有する文化を作る
・担当ローテーションを設計する:属人化を防ぐため、大口顧客には主担当+副担当を置き、一定期間で交代・同行する仕組みを導入する
・姿勢を評価する:短期的な売上だけでなく、「チーム貢献」「情報共有の質」「後輩育成」を評価項目に組み込む
・心理的安全性を確保する:「失注した」「お客様から厳しい反応があった」を隠さず共有できる場をつくる
・経営層・上長からの信頼を可視化する:「仕事への満足感と会社への信頼」が情報共有に波及するため、営業組織のビジョン共有と対話の機会を定期化する
まとめ
法人営業のチームワーク型営業では、明朗闊達な情報共有・真摯で前向きな営業活動と業務姿勢・ローテーション(担当変更)の3つが特徴的成功要因です。個人営業と同じマネジメントではチーム営業のパフォーマンスは引き出せず、情報共有の質や担当ローテーションの仕組みといった「チームで勝つための仕掛け」を意識的に設計することが重要と言えます。
チームワーク型営業の学習におすすめの書籍
チームで勝つB2B営業の基本を学ぶには、以下の書籍が参考になります。
