「論理的思考力」という言葉はビジネスの場で日常的に使われますが、「論理的思考力とは何か」を論理的に説明できる人は意外と多くありません。

本記事では、国立教育政策研究所が整理した「論理的な思考」の6つの要素を紹介し、それぞれがビジネス実務でどう役立つのかを解説します。ロジカルシンキング研修の設計や、自身の思考力を鍛える手がかりとして活用してください。

論理的思考の6要素 分類表

出典: 国立教育政策研究所 教育課程研究センター (2013)『特定の課題に関する調査(論理的な思考)調査結果 〜21世紀グローバル社会における論理的に思考する力の育成を目指して〜』P.15 表Ⅰ-1 論理的な思考の活動
https://www.nier.go.jp/kaihatsu/tokutei_ronri/pdf/10_tyousakekka.pdf

この調査は、平成24年に全国の高等学校160校・第2学年の生徒5,575人を対象に、論理的に思考する力の育成状況を測る目的で初めて実施されたものです。対象は高校生ですが、整理された6要素はビジネスパーソンにもそのまま有用です。

論理的な思考を構成する6つの要素

国立教育政策研究所は、論理的な思考の活動を次の6つに分類しています。

1. 理解・適用
2. 抽出・分析
3. 把握・評価
4. 関係・洞察
5. 仮説・検証
6. 構造・判断

以下、それぞれの要素を詳しく見ていきます。

1. 理解・適用 — 情報を正しく読み取って使う

与えられた条件や前提を正確に理解し、既に知っているルールや知識を適切に当てはめる力です。

ビジネスでは、契約書や社内規定を読んで、目の前のケースに当てはめて判断する場面で使います。「この条項は今回のケースに適用されるか」「このガイドラインはこの業務に当てはまるか」を冷静に判断する力です。

理解・適用が弱いと、条件を曲解したり、関係のないルールを持ち出して議論が噛み合わなくなります。

2. 抽出・分析 — 必要な情報を取り出して整理する

多くの情報の中から重要なポイントを抜き出し、整理して比較可能な形にする力です。

資料やデータから要点を抽出したり、事実と意見を分けて整理する作業がこれに当たります。「雲雨傘(事実・解釈・行動を分ける)」のフレームワークは、まさにこの抽出・分析の基礎訓練になります。

3. 把握・評価 — 全体像を捉えて良し悪しを判断する

集めた情報の全体像を把握し、それぞれの重み付けや妥当性を評価する力です。

3つの選択肢があったとき、評価軸 (コスト・時間・効果など) を設定して、それぞれを相対比較するのが把握・評価の典型です。会議での意思決定や提案書レビューで不可欠な力になります。

4. 関係・洞察 — 要素同士の関係を見抜く

複数の事象や情報の間にある関係性を見出し、表面的には見えない構造を洞察する力です。

因果関係 (Aが起きたからBが起きた) と相関関係 (AとBが同時に動く) の違いを見分ける力もここに含まれます。「抽象化」の思考は、複数の具体例から共通項を見抜く洞察の訓練として有効です。

5. 仮説・検証 — 仮の答えを立てて確かめる

手元の情報から仮の答え (仮説) を立て、その仮説が正しいかどうかを検証する力です。

「売上が下がった原因は新商品Aにある」という仮説を立て、データで検証する、といった進め方です。仮説・検証は、答えが自明でない問題に挑む際の強力なエンジンになります。川渡りパズルのような論理パズルは、仮説を立てて試し、検証する思考サイクルのトレーニングになります。

6. 構造・判断 — 情報を構造化して結論を出す

集めた情報を構造化し、結論に導く力です。論理的思考の最終ステップに位置づけられます。

ピラミッドストラクチャーのように、主張→根拠→具体例という階層で情報を組み立てるのが構造化の代表例です。桃太郎を題材にしたピラミッドストラクチャー演習では、身近な物語を使って構造化を体験できます。

ビジネス実務への応用

この6要素を知っておくと、ロジカルシンキング研修を設計するときや、自分の思考の癖に気づくときに便利です。

研修設計での活用

「ロジカルシンキング」と一括りにせず、参加者がどの要素に弱いかで研修内容を変えられます。情報整理が苦手なチームには抽出・分析、結論が曖昧な提案が多いチームには構造・判断を重点的に鍛える、といった具合です。

自己診断への活用

自分が会議で「話が噛み合わない」と感じる場面があったら、相手と自分がどの要素でズレているかを考えてみてください。相手は「関係・洞察」で繋がりを見ている一方、自分は「抽出・分析」で情報を集め直している、といった状態の可能性があります。

問題例 (参考)

実際の調査で使われた問題例を見ると、6要素がどう測定されていたかを具体的にイメージできます。問1 (理解・適用) の正解率は78%、問2 (やや難度の高い問題) の正解率は45.2%と、要素ごとに難易度が大きく異なります。

論理的思考調査 問題例

出典: 国立教育政策研究所『特定の課題に関する調査(論理的な思考)調査票』調査ⅠB Ⅰ-B-4
https://www.nier.go.jp/kaihatsu/tokutei_ronri/pdf/2_tyousa.pdf

調査の全問題は下記で公開されています。研修教材として活用する場合はぜひご覧ください。

特定の課題に関する調査(論理的な思考)| 国立教育政策研究所

まとめ

論理的思考力は一枚岩の能力ではなく、理解・適用/抽出・分析/把握・評価/関係・洞察/仮説・検証/構造・判断の6要素から構成されます。この分類を押さえておくと、研修設計や自己成長の方向性が具体的になります。

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