「かりてきたねこ」とは?パワハラにならない叱り方の7つのポイント

目次
・「かりてきたねこ」とは?考案者と意味
・か:感情的にならない
・り:理由を話す
・て:手短に
・き:キャラクター(性格・人格)に触れない
・た:他人と比較しない
・ね:根に持たない
・こ:個別に叱る
・パワハラ防止法とハラスメント研修の現在地
・「かりてきたねこ」を企業研修で実践する
・よくある質問(FAQ)
・まとめ
部下を叱るときの言動が「パワハラだ」と受け取られないか、不安に感じる管理職の方は少なくありません。本記事では、ハラスメント研修で広く活用されているキーワード「かりてきたねこ」を解説します。考案者である(株)ライフバランスマネジメント研究所代表・渡部卓氏が提唱する7つの原則を、企業研修の現場目線で1つずつ整理しました。
「かりてきたねこ」とは?考案者と意味
「かりてきたねこ」(借りてきた猫)は、部下を叱るときに気をつけるべき7つのポイントの頭文字を取った語呂合わせです。「報告・連絡・相談」を「ホウレンソウ」と呼ぶのと同じ発想で、覚えやすさを狙って作られています。
考案者は、(株)ライフバランスマネジメント研究所 代表の渡部卓氏。著書『折れやすい部下の叱り方』(日本経済新聞出版社、2012年11月発売)の中で紹介され、以後ハラスメント研修や管理職研修で広く引用されてきました。
7つの内訳は以下の通りです。
・か=感情的にならない
・り=理由を話す
・て=手短に
・き=キャラクター(性格・人格)に触れない
・た=他人と比較しない
・ね=根に持たない
・こ=個別に叱る
それでは、1つずつ詳しく見ていきます。
か:感情的にならない
最初の「か」は感情的にならないです。叱る場面で感情に流されると、本来言うべきでないことを口にしたり、最悪の場合は手が出てしまうこともあります。
怒りの感情と上手く付き合うスキルとして、近年はアンガーマネジメントが注目されています。「怒りのピークは6秒」と言われる通り、その6秒をやり過ごすだけでも、後悔する発言を大きく減らせます。
り:理由を話す
2つめの「り」は理由を話すです。これは「感情的にならない」とも深く関係します。
部下を叱る際は、就業規則違反、マニュアルからの逸脱、ビジネスマナーの欠如、できれば数値で見える成果の低下など、相手が納得できる客観的な理由を示すことが必須です。理由を伴わない叱責は、受け取る側に「個人攻撃」として映りやすく、ハラスメントと認知されるリスクが高まります。
て:手短に
3つめの「て」は手短にです。ネチネチと1時間説教を続けるような行為は、典型的なパワハラ言動として認識されます。
厚生労働省の指針でも、「業務の適正な範囲を超えた精神的な攻撃」はパワーハラスメントの6類型に含まれます。叱る場面では「事実→理由→期待する行動」の3点を端的に伝え、5〜10分以内で切り上げるのが目安です。
き:キャラクター(性格・人格)に触れない
4つめの「き」はキャラクターに触れないです。叱るべきは「行動」であって「人格」ではありません。
「だからお前はダメなんだ」「親の顔が見てみたい」といった発言は、もはや時代錯誤と言わざるをえず、明確な人格否定としてハラスメントに直結します。指摘の対象は常に具体的な事実と行動に絞ることを徹底しましょう。
た:他人と比較しない
5つめの「た」は他人と比較しないです。「Aさんはできているのに、なぜ君はできないんだ」という叱り方は、本人の劣等感を刺激するだけで行動改善には繋がりません。
比較相手を出すのではなく、「今回のこのケースで、何が問題だったか」を本人と一緒に整理し、次の行動を合意するアプローチが望まれます。
ね:根に持たない
6つめの「ね」は根に持たないです。具体的には、目の前のミスを叱る場面で過去のミスを蒸し返す行為が該当します。
これは「感情的になっている」「説教時間が長い」状態でとくに発生しやすく、1つめ「感情的にならない」、3つめ「手短に」と密接に関連します。叱る対象は1つだけに絞るのが鉄則です。
こ:個別に叱る
最後7つめの「こ」は個別に叱るです。「他のメンバーへの注意喚起にもなるから」と全員の前で叱責する管理職もいますが、本人にとっては公衆の面前での辱めと受け止められる可能性が極めて高くなります。
これは厚生労働省のパワハラ6類型のうち「精神的な攻撃」に該当しうる行為です。叱る場面は必ず1対1の個室、もしくは静かな場所で行いましょう。
パワハラ防止法とハラスメント研修の現在地
「かりてきたねこ」が改めて注目されている背景には、パワーハラスメント防止法(改正労働施策総合推進法)の存在があります。2020年6月から大企業に、2022年4月からは中小企業にも、職場におけるパワハラ防止措置が義務化されました。
厚生労働省「個別労働紛争解決制度の施行状況」では、「いじめ・嫌がらせ」が長年にわたり民事上の個別労働紛争相談件数のトップカテゴリを占めています。管理職に対する叱り方・指導方法の研修ニーズは、法施行以降さらに高まっている状況です。
「かりてきたねこ」は7文字の語呂合わせで覚えやすく、研修現場でも行動指針として浸透しやすいのが大きな強みです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 「かりてきたねこ」とは具体的に何を指しますか?
「かりてきたねこ」は、部下を叱る際にパワハラにならないための7つの行動指針の頭文字を取った語呂合わせです。「か=感情的にならない」「り=理由を話す」「て=手短に」「き=キャラクターに触れない」「た=他人と比較しない」「ね=根に持たない」「こ=個別に叱る」の7原則を指します。
Q2. 「かりてきたねこ」の考案者は誰ですか?
このキーワードは、(株)ライフバランスマネジメント研究所代表の渡部卓氏が考案しました。氏の著書「折れやすい部下の叱り方」(日本経済新聞出版社、2012年)で紹介され、ハラスメント防止のための効果的な指導法として広まりました。
Q3. 「かりてきたねこ」はパワハラ防止にどう役立ちますか?
相手の人格を尊重し、具体的な事象に基づいて冷静に指導する原則を提示することで、感情的な叱責や不適切な言動を防ぎます。これにより、部下が精神的な苦痛を感じることなく、健全な成長を促し、パワハラのリスクを大幅に低減します。
Q4. 「ホウレンソウ」のような他のビジネス語呂合わせと何が違いますか?
「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」が業務遂行における情報共有の重要性を説くのに対し、「かりてきたねこ」は上司が部下を指導する際の具体的な行動規範を示します。特にハラスメント防止に特化し、叱り方の質を高める点に違いがあります。
Q5. 企業研修で「かりてきたねこ」をどのように活用できますか?
企業研修では、具体的な事例を交えながら7つの原則を解説し、ロールプレイングを通じて実践的な叱り方を学ぶことができます。参加者が自身の指導方法を振り返り、ハラスメントのリスクを認識し、より効果的で健全なコミュニケーションスキルを習得するのに役立ちます。
「かりてきたねこ」を企業研修で実践する

弊社HEART QUAKEでは、ハラスメントへの認識のズレを「見える化」して対話するカードゲーム「ハラスメントフラグ」を提供しています。「これってハラスメント?」というグレーゾーンの事例を題材に、参加者同士で価値観の差を話し合う体験型研修です。
「かりてきたねこ」のような行動指針を講義形式で伝えるだけでは、実際の現場での判断力にはなかなか結びつきません。具体的な事例で議論する場を組み合わせることで、知識が腹落ちし、行動が変わります。
「今後も研修等で利用していきたい」といった前向きな声が挙がりました。
また、“ハラスメント”という少し難しいテーマで学んでいるはずなのに、
「楽しく学べた」という反応がありました。
DiSC理論など個人タイプの理解と組み合わせることで、より個別性に配慮した叱り方・指導方法が身につきます。あわせてDiSC理論による自己分析と新人への接し方もご参照ください。
まとめ
本記事では、ハラスメント研修で広く伝えられているキーワード「かりてきたねこ」の7つの原則と、その背景にあるパワハラ防止法・研修ニーズについてご紹介しました。
「か:感情的にならない/り:理由を話す/て:手短に/き:キャラクターに触れない/た:他人と比較しない/ね:根に持たない/こ:個別に叱る」——この7つは、管理職が日々の指導場面で立ち戻れる、シンプルで強力な行動指針です。
考案者である渡部卓氏の著書『折れやすい部下の叱り方』には、より深い背景や具体例が記されています。管理職研修・ハラスメント研修を企画される方は、ぜひ手に取ってみてください。
