Safety-Ⅰ→Safety-Ⅱ 管理職が持つべき新しい安全観 4観点対比

【結論】管理職に求められるレジリエンス・エンジニアリングは、従来の「事故ゼロ」を目指すSafety-Ⅰに対し、「事故は起こりうる」前提で組織の回復力を高めるSafety-Ⅱという新しい安全観です。
VUCA時代において、ヒューマンエラーを完全に防ぐことは困難であり、起きた事態に現場が柔軟に対応し、迅速に復旧できる仕組みを設計することが重要となります。
この考え方は、現場の小さな違和感や判断を素直に共有できる「心理的安全性」と密接に関わり、組織全体の学習と成長を促します。
本記事で紹介する危機管理コンセンサスゲーム「船長の決断」のような研修を通じて、管理職は想定外の事態への対応力を養うことができます。

目次

1. レジリエンスとは|まず"個人レジリエンス"を復習
2. レジリエンス・エンジニアリングとは|Safety-Ⅱという新しい安全観
3. なぜ管理職にレジリエンス・エンジニアリングが必要なのか
4. レジリエンス・エンジニアリングと"心理的安全性"の関係
5. まとめ
6. 関連研修のご紹介|危機管理コンセンサスゲーム「船長の決断」

個人のレジリエンスという言葉はかなり浸透しましたが、組織や業務の安全設計の文脈で用いられるレジリエンス・エンジニアリングという概念があります。2025年現在、医療安全・航空安全・プラント運転に加えて、マネジメント・組織運営の議論にも取り入れられています。

この記事では、管理職が知っておきたい安全の捉え方”Safety-Ⅱ”として、レジリエンス・エンジニアリングの考え方を整理します。

レジリエンスとは|まず”個人レジリエンス”を復習

レジリエンスは、心理学用語として「精神的回復力」「抵抗力」「復元力」「耐久力」などと訳されます。ビジネスシーンでは「折れない心」「打たれても戻ってくるしなやかさ」と語られることが多いでしょう。

ストレス過多のこの時代に、ストレスそのものをゼロにするのは非現実的です。だからこそ、受けたストレスからサンドバッグのように戻ってこられるしなやかさが注目されています。

レジリエンス サンドバッグ

個人レジリエンスの高め方については、過去記事も合わせてどうぞ。

レジリエンスを築く10の方法

レジリエンスを鍛える具体的なトレーニング

二次元レジリエンス要因尺度によるレジリエンス診断

レジリエンス・エンジニアリングとは|Safety-Ⅱという新しい安全観

レジリエンス・エンジニアリングは、もともと安全学の分野で提唱された考え方です。従来の安全観(Safety-Ⅰ)と、レジリエンス・エンジニアリングが提唱する安全観(Safety-Ⅱ)の違いを押さえておきましょう。

観点 Safety-Ⅰ(従来型) Safety-Ⅱ(レジリエンス・エンジニアリング)
“安全”の定義 事故やエラーが起こらない状態 成功が継続する状態
目指すゴール ゼロリスク エラー発生時もすぐ復旧できる状態
分析の焦点 失敗・事故の原因分析 普段うまくいっていることの理解
人間観 人はエラーを起こす存在 人は現場で柔軟に対処する資源
対策 マニュアル強化・自動化 対応力・復旧力・学習力を組織に育てる

safety-Ⅰとsafety-Ⅱの比較

画像引用:野上悦子(2019)『医療安全SafetyⅡにおける医療事故分析にFunctional Resonance Analysis Modelは有効か?Root Cause Analysisとの比較検討』
https://irdb.nii.ac.jp/00844/0004075103

Safety-Ⅰ/Safety-Ⅱのイメージ|津波対策の例え

分かりやすい例として、津波対策をSafety-Ⅰ/Safety-Ⅱの2通りで整理してみます。

考え方 アプローチの例 強み/弱み
Safety-Ⅰ 20mの防波堤を建てる/津波を到達させない 想定内は強い/想定を超えた瞬間に崩壊
Safety-Ⅱ 防波堤+高台への避難経路確保・訓練・警報体制 想定外にも粘れる/想定内の守りは相対的に弱い

Safety-Ⅱは「事故は起こりうる」前提で、起きても復旧できる仕組みを設計する考え方です。そこには”現場の人間が柔軟に対応できること”を前提にした安全観があります。

なぜ管理職にレジリエンス・エンジニアリングが必要なのか

管理職の仕事は、もはや“事故・ミスをゼロにする”だけでは回らない時代になっています。

現場の現実 Safety-Ⅱで打てる手
ヒューマンエラーを完全にゼロにはできない 起きたときの復旧手順・権限を設計しておく
想定外の事態がむしろ増えている(VUCA) “臨機応変に対応できるチーム”を育てる
現場担当者のノウハウが属人化している “普段うまくいっている理由”を言語化する
事故後の原因究明だけでは学習が浅い 普段の成功事例も同じ熱量で振り返る

リスクマネジメントの考え方そのものを押さえたい方は以下の記事もセットでどうぞ。

リスクマネジメントの4象限とは|回避・移転・低減・受容で考える対策フレームワーク

リスクマネジメント研修で伝えたいビジネスにおける6種類のリスク

ヒヤリハットとは?ハインリッヒの法則と心理的安全性の関係をわかりやすく解説

管理職研修向けのビジネスゲームをまとめて比較したい方は、管理職研修で使えるビジネスゲーム10選|目的別の選び方と比較表つきもあわせてご覧ください。

レジリエンス・エンジニアリングと”心理的安全性”の関係

Safety-Ⅱは、現場の人がヒヤリハット・違和感・判断を素直に共有できることを前提にしています。これはまさに心理的安全性が支える領域です。

Safety-Ⅱに必要な行動 支える心理的安全性
小さな違和感の報告 “些細なこと”でも発言できる空気
復旧時の独自判断 上司の顔色で止まらない権限
事後の率直な振り返り 犯人探しでなく学習を目的にする姿勢

心理的安全性と学習する組織の関連

よくある質問

Q. レジリエンス・エンジニアリングとは何ですか?

レジリエンス・エンジニアリングは、もともと安全学の分野で提唱された考え方で、事故やエラーが起こらない状態を目指す従来のSafety-Ⅰに対し、「成功が継続する状態」を安全と定義するSafety-Ⅱという新しい安全観です。事故は起こりうる前提で、起きたときに組織が迅速に復旧できる仕組みを設計し、現場の柔軟な対応力を重視します。
詳しくは「レジリエンス・エンジニアリングとは|Safety-Ⅱという新しい安全観」のセクションをご覧ください。

Q. Safety-ⅠとSafety-Ⅱの違いは何ですか?

Safety-Ⅰは事故やエラーが起こらない状態を安全と定義し、ゼロリスクを目指して失敗の原因分析やマニュアル強化を行います。一方、レジリエンス・エンジニアリングが提唱するSafety-Ⅱは、成功が継続する状態を安全とし、エラー発生時もすぐ復旧できる状態を目指します。普段うまくいっていることの理解や、対応力・復旧力・学習力を組織に育てることに焦点を当てます。
詳細は記事内の「レジリエンス・エンジニアリングとは|Safety-Ⅱという新しい安全観」の比較表をご確認ください。

Q. なぜ管理職にレジリエンス・エンジニアリングが必要なのですか?

管理職の仕事は、もはや事故・ミスをゼロにするだけでは回らない時代になっています。ヒューマンエラーを完全にゼロにできない現実や、VUCA時代に想定外の事態が増えている状況に対応するため、レジリエンス・エンジニアリングの考え方が不可欠です。起きたときの復旧手順や権限を設計し、「臨機応変に対応できるチーム」を育てることで、組織の実力を高めます。
詳しくは「なぜ管理職にレジリエンス・エンジニアリングが必要なのか」をご覧ください。

Q. レジリエンス・エンジニアリングと心理的安全性にはどのような関係がありますか?

Safety-Ⅱの考え方では、現場の人がヒヤリハットや違和感、判断を素直に共有できることが前提となります。これはまさに心理的安全性が支える領域です。小さな違和感の報告、復旧時の独自判断、事後の率直な振り返りといった行動は、心理的安全性が確保された環境でこそ促進され、組織の学習と回復力を高めます。
関連する情報は「レジリエンス・エンジニアリングと”心理的安全性”の関係」で解説しています。

Q. レジリエンス・エンジニアリングを学ぶためのおすすめ研修はありますか?

想定外の事態に直面した際に、限られた情報でチームで判断し、対応策を合意する体験ができるゲーム型研修として、危機管理コンセンサスゲーム「船長の決断」があります。管理職向けのリスクマネジメント・危機管理研修の体験ワークとしてご活用いただけます。
詳細は「危機管理コンセンサスゲーム「船長の決断」」をご覧ください。

Q. 「船長の決断」研修はどのような内容ですか?

「船長の決断」は、想定外の危機的状況下で、チームで情報共有し、議論を通じて最適な意思決定を行うことを目的としたコンセンサスゲームです。参加者は限られた情報の中で、優先順位をつけ、合意形成を図るプロセスを体験することで、危機管理能力やチームでの問題解決能力を養います。
この研修は、管理職向けのリスクマネジメントや危機管理の体験ワークとして設計されています。

Q. 「船長の決断」研修はオンラインでも受講可能ですか?

はい、「船長の決断」研修にはオンライン版とカード版の両方があります。オンライン版は、3名から100名までの幅広い人数に対応し、1〜2時間で実施可能です。遠隔地のチームや多拠点での実施にも適しています。
オンライン版の詳細は「船長の決断 (オンライン版)」を、カード版の詳細は「船長の決断 (カード版)」をご覧ください。

関連研修のご紹介|危機管理コンセンサスゲーム「船長の決断」

想定外の事態に直面したとき、限られた情報でチームで判断し、対応策を合意する体験ができるゲーム型研修として、弊社では「船長の決断」をご用意しています。管理職向けのリスクマネジメント・危機管理研修の体験ワークとして活用いただけます。

リスクマネジメント研修で使えるビジネスゲーム「船長の決断」

船長の決断

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